浦島太郎もびっくり(23)



「レイの顔ですか?どの様に言えば良いのかな?
見た目は、日本人離れしていますね」

「当たり前でしょ!日本人じゃないんだから!
馬鹿なの!」
と、今度は私を馬鹿にしてきた。

「そうですね。美人です。目元は綺麗な二重だし、鼻筋は通っていて、肌も綺麗だし。誰に似てるかな?」
と、考えている時に、ふと見ると壁に貼ってあった写真が目に入った。
見ると日本人ではあるが日本人離れした人が写っている。
でもレイとは似てはいなかった。

「そうなの、鼻筋が通って、目元が二重。
私に似てる人ね」
と、みどりは何故か自信を持って呟いている。

そんな言葉は、無視するに限ると思い私は、言葉を続けた。

「レイの事は、どうでもいいですよ。それから私、決闘の用意をして、ガンリュ島に向かって行ったのです」

「待ってました。宮本武蔵!」
と、今度はおだてる様に言ってきた。

みどりと言う女は、情緒が安定していないみたいだ!と

気を付けなければいけないと、その時に強く感じるべきであったのだが、・・・・・・。



「ガンリュ島は船で行くのですが、時間は20分ぐらい掛かると云うので、私は約束の時刻に遅れる事無く、早めに準備をしガンリュ島にで向いたのです。約束の時刻は午後の1時です。
私は、その30分前に来て準備運動をし、気合を徐々に上げていきました。レイも勿論付いてきました。
国王と皇后、並びに側近達。
そして多くの観衆。その中には子供も居ました。
まるで、演劇を観るかの様に集まって来たのです。」

「うん、面白くなってきたわね。演劇と云うよりも格闘技を観るつもりね。私もいたら観に行くわ。」

と、みどりは何故か私にウインクをして見せた。
もしかして、みどりは私に恋しているのだろうか?
だが、私はみどりの気持ちを無視して、話を続けた。

「だが、相手のペスタが時刻通りに来ないのです。
ガンリュ島は、それほど大きく無い島で舟付き場も一つしか無いと言ってました。だからこの場所しか無いのですが、待つ事1時間。
ペスタが船に揺られてやって来たのです。
お供は三人。その中には最初に私がやっつけた男もいました。

私は初めてペスタと相手対したのです。」

「どんな男なの?ペスタって男は!」
と、みどりは何故か顔を顰めながら聞いて来た。


「ペスタの顔ですか?簡単に言えばゴリラに似てました。
と言うか、ゴリラでしたね。
この星の人達は美男美女の多い所だったのですが、
ペスタだけは、違っていました。
突然変異かも知れませんね。」

「さっき、近親相姦で出来た子供って言っていたね。
だからかな!」

「解らないのですが、この星の人達とは違う人種に見えました。
見るからに怖そうです。臆病者だったら睨まれただけで、
逃げていくでしょうね。
でも、私はレイを護ら無ければならない。
恐れる訳にはいかない。
私はペスタの目を睨んでやりました。
そしてペスタに言ってやったのです
佐々木小次郎が武蔵に言った様に、
『遅いぞ!ペスタ。私を恐れたか?約束の時刻を違えるとは、卑怯者のする事だ!」
と、叫んで言ったのです。」

「言ってやって!そんな奴には言ってやって」
と、合いの手を入れるみたいに、みどりは言った。
みどりの顔を眺めて見ると、結構酔っているみたいだ。
そんな事はさて置き、私は話しを続けた。



「ペスタが僕に向かって言ってきたのです。
『お前か!私の部下のアンドレの目に怪我させた男は!
お前は何者だ!聞く所によれば、地球人と言うことだが、
それは誠か?それならこの星に用は無いだろう!
早く帰れ!』
と、どなってきたんだ。」

「時刻に送れて、謝りもしないなんて、最低ね。」

「そうなんだけど、僕は言い返したんだ。
『お前こそ、動物園に帰れ!』って言ってやったんだ。
そうしたら、ペスタの奴、激怒したんだ。
その言葉は、禁句だったみたいで、ペスタの逆鱗に触れたんだ。

『おのれ、殺してやる!』と言って長い槍みたいな棍棒を取って
僕に向かって来たんだ。
僕は、木刀を持っているんだけど、相手の方が長いので
不利に感じたんだ。」

「そうなの。槍の方が有利なのね?それからどうなったの?」

「それから、お互い間合いを測って睨み合ったんだ。
ペスタの目を観ていて殺気を含んでいると思ったんだ。
この星では見た事が無い眼光。
久しぶりに見た想いがして、私は本気の戦いが出来る事を、
何故か嬉しく思えたんだ」

「嬉しく思えたって、何でよ。負けた死ぬのよ!」

「戦いとは、負ければ死を覚悟しないといけない。
これこそ、武士の戦いだ!と、初めての経験だった。
だから、嬉しく感じたんだ!」

「武士って、不思議な人がなるのね。しんちゃんも武士なのね」

と、感心しているのか、僕の顔を見つめてくる。



「ジリジリとした、睨み合いの後、仕掛けてきたのは、ペスタだった。僕に向かって突きを入れてきたんだ
だけど、その突きの甘い事。ペスタは剣術の稽古はして無いみたいで、まるっきり素人だった。
僕はその突きをかわして、ペスタの懐に入って
思い切り、抜き胴を打ち込んだんだ。
ペスタの腹にまともに入ったんだけど、真剣で無い為、切る事は出来なかったんだ。
ペスタは痛がって泣いているんだ。
『痛い、痛い』と言って泣いているんだ!
情け無い男だ、こいつも臆病者だ!
多くの観衆から歓声が響いてきたんだ。
ペスタが負けた事に皆んな喜んこんでいるんだ!

国王も皇后も、レイも皆んな喜こんでいるんだ。
驚いた事に、敵側のアンドレも喜こんでいるんだ!

ペスタは捕縛され牢屋に入れらて、この事件は解決したんだ」

「しんちゃん、強い!勝ったのね。祝杯よ。
もっと飲んで。」
と、お猪口に注いでくるが、みどりはコップを店員に持って来てもらった。
「お猪口では、何回も注ぐのめんどうだから、コップで飲んでんね。」
と、親切である。
「それからどうなったの?
レイさんと、結婚できたの?」
と、みどりの目が色っぽく潤んでいる。

「結婚できたら、此処に居ないですよ!
これからは、悲恋の物語ですよ。」

「そう、悲恋なのね〜。」と、感慨深い様な言い方だが、本心では無いように聞こえる。



「国王は、レイと僕の結婚を望んでいたのです。
国民も、レイと僕が結婚すると想っていたのです。
レイは、僕にこの星の至る所を案内してくれました。

遺跡や由緒ある建物や文化施設などを観光しました。
海で一緒に泳いだりしました。山にも登ったりしました。
まるで地球と同じ環境で季節も暑くも無く寒くも無い。
海の水は、ぬるま湯みたいで暖かいのです。魚も美味しかったです。地球の魚とは違う種類ですが、味は良かった。

それから二人で結婚式の用意も整え、式場も決めました。その式場はキリスト教会に似たチャペルです。
そう、二人で写真も撮りました。色の付いた写真です。」

「だったら、写真を見せて、レイさんが写っているのでしょう?」

「写真ですか〜?  う〜ん、無くしてしまったみたいです。
確か持って帰ったと思っていたのですが?
さっき、ポケットの中を探したのだけど、見つからなかった」

と、僕は残念な想いを込めて、力無く言った。

「無くしちゃったの?そう残念ね。」
と、みどりは相槌を打つ様に囁き、そして聞いてきた。

「何故、レイさんと結ばれ無かったの?」

「それは、・・・・・。」
と、私は言葉に詰まってしまった。
それと同時に悲しみが込み上げてきた。



私は、不覚にも涙をみどりに見せてしまった。

「如何したの?  泣いているの?
そんなにレイさんの事好きだったの?」
と、優しい声で聞いてくる。

「好きでした。お互いに好きでした!
でも・・・・・・・・。結婚を許してもらえなかったのです。」

「何で!さっきは国王も国民も喜んでいると言っていたのに。」

「理由は、私が地球人だからです。この星の人間では無いからです」

「でも、同じ身体なんでしょ?地球人とその星の人達は!」

「そうなんです。見た目は同じです。
でも、私の検査の結果判ったのです。
私とその星の人達とは全く違う生物だと云う事が判明したのです。」

「なるほど。地球人とは、違うわね。
どこが違ったの?身体の構造は同じでしょう?
DNAが違うのかな?」
と、みどりは私の知らない事を言ってきた。

「解った事は、その星の人達には無いものを、私は持っているのです。私だけでは無いのです。地球人、全員が持っているのです」

「何、それは?私も持っているの!?」と、みどりは疑いの気持ちを持っているのか、真剣な表情で聞いてきた。

「そうです。地球人全員が持っていると、言われました。」

「何よ、それは!」

「それは、上手く説明出来ないのだけど、人を憎しんだり、騙したり、人を殺したり、もっと大きく言えば戦争を起こす、そう云う心です」

「ちょっと待ってよ、しんちゃん。その星の人達は、憎しみがないの?人を騙したりしないの?
戦争はした事が無いとは聞いていたけど、そんな悪い心の無い人達なの?  考えられないわ そんな事!」

と、みどりは強く言ってきた。

https://note.com/yagami12345/n/n43a2ff2f15a5




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