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ある天才科学者の幽霊(6)




早速、私はタクシーを手配し下界に降りて行った。

下界の季節は、秋だった。
この前来た時は、夏の暑い日であったのに、
霊界と下界では時間の流れは違うみたいで、こちらの一日は、
下界の二か月ぐらいに相当するみたいだ。

タクシーは、この前の女のアパートの入口で止まった。
時刻は丑三つ時。この時間帯が我々にとって一番人に認識してもらえる時刻だ。
と、言っても霊感の強い人で無ければ、我々を感じる事は出来ない。
強い恨みを持った霊は、その強い恨みの力で、霊感の弱い人にも感じされる事が出来るが、恨みを持たない霊は、普通の人は感じる事は出来ない。

この前の女は、霊感がすこぶる強いので、私を感じるのは簡単であろう。
むしろ、私の方が女に引き込まれ無い様に気をつけなければならない。

部屋に入いると、一人の女性が机に向かっている。
あのセクシー女優の壇蜜だ!と想って観察すると、
似てはいるが別人である。

彼女は何か紙に書いている。

以前の彼女との関係はどの様な関係だろう?
と、考えていた時、もう一人の女性が湯上がり姿で、ビールを手に持って出てきた。


以前の彼女である。
確か名前は、飯島裕美だったな。
私は裕美に気付かれ無い様に、テレビの裏に隠れて、二人の会話を聞いてみることにした。

「お姉ちゃんも、ビール飲む?」

「飲むよ。そこに置いといて。」

「今回の浮気の調査は、簡単だったけど、何で男って浮気するのかな!本当に腹が立つわ。
結婚した時は、一人の人って決めたはずでしょ。
なのに、他に女を作るなんて!
許せ無いわ。」

どうも、裕美と壇蜜は、姉妹みたいである。

「でも、最近女性だって浮気してるわよ。
特に、出会いのサイトで簡単に浮気相手が見つかるらしいよ。
男だけでは無いよ」

どうやらこの二人は、浮気調査の探偵みたいだ。

「報告書も書けたし、私もお風呂入って寝るかな。
裕美、ビール、後で飲むから、冷蔵庫に入れといて」

と、言いながら壇蜜に似た女性は、お風呂に行った。

この二人、何故こんな夜中まで起きているんだろう?
と、想っていたのだが、・・・まずい!裕美は私を見ている。
私を凝視している。
いや、睨んでいる。
気付かれたのか?鋭い視線が私を刺している。

「隠れても駄目よ!貴方がいる事は最初から判っていたのよ。
さっきはお姉さんがいたから言わなかったけど、
貴方は誰?私達は恨まれる事などしてないわよ!

もう一度聞くは、貴方は誰なの?」


見つけられた私は、恐る恐る、名前を告げた。
と、言っても言葉に出すのではなく、女に向かって念じたのだ。

「私は、新美公一だ。以前貴女に会いにきた事があるだろう?
覚えて無いのか?」

「新美公一さん!覚えているわ。前は私の夢に出てきたわね。
今回は直接見える時に出てきたのね。」

と、上から目線で私に向かって言うのは、変わってはいない。

「今回は、何の用事で来たの?こっちも聞きたいことがあるけど
聞いてもいい?」

「いいよ、何でも聞くが良い!」
と、私は少しヤケクソの気分で応えてしまった。

「この前、質問したのに応えてくれなかったね。
ロボットの製作費用は何処から出るの?
広田さんも、心配しているよ。
新美君は悪い組織と繋がっていたのでは無いかと。
そこのところは、どうなのよ?」

「私が悪の組織と繋がっている訳ないだろう!
誰がその様な噂を流すのだ?
もしかすると、佐伯か?!
奴なら、その様なデマを流すだろうな!」

と、私は久しぶりに冷静さを欠いた言い方をしてしまった。


「悪の組織とは繋がって無いのね!
じゃあ、どこから、ロボット製造資金は出ているの?」

「そんな事を聞いてどうする?お前に関係無いだろう!」

「初めて会った時の言葉覚えて無いの?
私の、好奇心は海より深いのよ!
教えなさい!」
と、女は鋭い眼光で私を睨んでくる。

コイツ、やばい女か?

ここで、不思議に思った人に解説します。
霊感の強い人は、霊を感じる事が普通にできます。
しかし、その事を普通の人に話すと、信じてもらえずに
異常者と思われてしまいますので、霊感のある人は
その事についての話しをあまりしません。

彼女は非常に強い霊感の持ち主で、私の存在を確認した上で、
話す事ができる人なのです。
この様な人は、稀な人です。

ここで話すと言ってはいますが、頭に言葉を思い浮かべているだけで、声に出して喋っているのではありません。

簡単に言うと、テレパシーみたいなものです。

この光景を霊感の無い人が見たら、裕美は壁をじーと観ている様に見えます。

「その資金の出どころは、ある大金持ちの女から出ているのだ」

と、私は女の熱い視線に負けてしまったのか、本音をはいてしまった。

「大金持ちの女? 誰なのその人?
貴方とどの様な関係があるの?」

流石に、好奇心の塊の女だ!
矢継ぎ早に聞いてくる。

「まあ、落ち着け。夜は長い。
俺の話を聞け!5分だけでも良い」

「じゃ、聞くわ。早くしないと、お姉ちゃんがお風呂から出てくるわ。早く言って!」


















いつも読んで頂ける皆様に御礼申し上げます。
私の小説にしては、ビューの数が多く付きます。
嬉しい限りです。
もし、感想がございましたら、コメントを頂ければ幸いです。

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