見出し画像

(新々)三つ子の魂百までも 34


馬鹿げた事を考えている裕美さんを
僕は心配していた。
でも、一度言い出したら誰の意見も聞かない
裕美さんだ。
その日僕達は、あの殺人鬼の棲むビルに行った。

時刻は午前2:30
いわゆる、草木も眠る丑三つ時。
林田はいつも戦場カメラマン風の姿。
修と僕は裕美さんの後ろ姿を追いなが、
階段を登る。
4階の廊下の片隅の壁に書かれた名前を見つめ、裕美さんは瞑想する。

そして三分後、裕美さんは勝ち誇るかの様に
声を上げる。
「こやつは、もう悪さをしないわ。
やっけてやったわ。私の勝ちよ」
その言葉を聞き、
嬉しいそうに写真を撮りまくる林田。

僕は不安と心配と少しの安堵を胸に秘め
帰宅の途に着く。

そして次の日の朝。
訃報の電話が、

「裕美は死んだよ」
と、伊東さんの不気味な声。

思わず、絶叫する僕。
僕の目に涙が溢れる。
夢なら覚めてくれ。

……裕美さん、裕美さん、裕美さん!…


叫びながら、僕は目覚めた。
涙で布団が濡れていた。

夢だったみたいだ!


僕は安堵すると同時に絶対に裕美さんを
「あの場所に行かせてはいけない」と決意した。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?