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(新々)三つ子の魂百までも 後日談1


後日談
東西出版社が取材した
[噂のビル、その都市伝を暴く]の記事は、
多くの人達の反響を得る事ができ、巷では大いなる関心事となった。
特に、霊を写すカメラマン林田智の死は、悲しみではあるが
不可解な現象として報じられた。

テレビのワイドショーでもこの事件は取り上げられた。
だが、都市伝説やオカルトに否定的な文化人も多くいた。
その一人、竹村健二は強く否定的な態度を示した。

ワイドショーは、竹村健二と東西出版社の桜町の対談を企画し
テレビ放送する事となる。
都市伝説の関心は図らずも強まっていくのであった。

僕と裕美さんは、興味を持ってテレビを観ていた。

放送開始から、竹村健二は凄く興奮している。
「こんなインチキな記事を読んで感心している読者の顔が見たい」
と、言っている。また、
「インチキ霊能者が、『事件を解明した』と言っているが、
誰も知らない事だから何とでも言える。
霊を写すカメラマンの写真も、ピンぼけで何が何だか判らない。
インチキもここまでくると、可哀想になる」
と息巻く。
冷静に聞いている、桜町さん。

僕は、ハラワタが煮えくりかえる想いだ。
命を懸けて写真を撮りに行った、林田さんに対しての冒涜だ。
裕美さんに対しても、失礼と思わないのか?
熱くなっている僕とは違い
裕美さんは冷静に聞いている。

今度は桜町さんの反論する番だ。
「林田さんの撮った写真は、霊感のない人には唯のピンぼけ写真に見えると思います。しかしその道の人達は、『間違い無く霊の写真』
と、断定するかの様に言っています。
また、林田さんは生前言っていました。
『霊の写真を撮る時、撮るこちら側も綺麗な心で無いと撮れないが、写される霊も写して欲しいと言う思いがないと明確には撮れない』と。
こんな地縛霊となった霊が写真に写りたいとは思わないでしょう。
林田さんだから、薄っすらですが撮る事が出来たのだと思います。
オカルトめいた話ですが、これは事実と想うのが自然です。
霊感の弱い人には、霊は見えません。

それと、『事件の解明も誰も見ていないのだから、事実かどうか判らない』
と、言われましたが、それも信じるか、信じないかの話しであって、信じ無い人には絶対に解りません。
でも、私は霊能者の言葉を信じます。」

と、堂々とした態度で竹村健二に反論する。

竹村健二は冷笑しながら聞いている
竹村健二は元は新聞記者であったが、退社してフリーの
ジャーナリストになり、戦場や危険地域の取材を積極的に行い
かなり有名な人物である。
でも僕は知らないおじさんだ。

歳の頃は50歳ぐらいか?小太りで身長は160cmも無いであろう。
パイプを咥え、ベレー帽をかぶっている。
それが、トレードマークらしい。

「何を信じても、貴女の自由だけど、いい加減な記事を書いて金儲けするのは、どうかと想うよ。
林田って云う男、霊の写真を撮るカメラマンだそうだけど、
以前撮った写真はハッキリと霊が写っていた。
今回のは、何故ピンぼけなんだ?
可笑しくないか!」
冷ややかに聞いてくる。

「私には何故ピンぼけになったのか先ほど言いました。これ以上貴方に言っても無駄です。どうせ信じてはもらえないから。」
と、桜町さんも突き放す様に言い、更に強い語調で言う。

「林田さんは、事件の解明に命を懸けて取材に行ったのです。
危険な場所と解った上で行ったのです。」

「私だって、危険な所には行きますよ。命懸けです。」

と、言い返し

「心臓麻痺で亡くなったと聞いたが、持病か何かあったのだろう。
亡くなった中学生は、子供頃から心臓が悪かったと聞いている。
心臓麻痺で二人亡くなったのは、偶然だよ。偶然が重なっただけだよ」
冷静に話す竹村健二。
「それに、あのビルに悪霊の地縛霊がいるって!?
そんなのは、迷信だよ!」

「だったら、貴方があのビルに行き壁に自分の名前を書いてみてはどうですか?あなたが死なかったら貴方の勝ち。
実験してみたら如何ですか?」

と、桜町さんは、冷静に挑発した。
竹村健二は一瞬怯んだ態度を見せたが、
「解りました。私がそのビルに行って確かめますよ。
貴女のインチキを暴いてみせます。」

驚いたのは、テレビ局の人たちだった。
この対決は番組は高視聴率が確実だ!
すごい事になったと、喜ぶテレビ関係者達。

巷でも大いに話題になる事、間違い無しだ。

僕は興奮していた。
だが、裕美さんは、冷やかな目で見ている。
「誰か、あの人を止めないと、大変な事になるわ」
と、つぶやく裕美さん。

だが、裕美さんの願いも虚しく、竹村健二は勇敢にもビルに一人で出かけるのであった。
その模様はテレビで生放送された。
丑三つ時の午前2時30分の夜中の番組にも関わらず、
高視聴率を記録した。

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