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殺人ロボット(9)

9
座ったテーブルは四人掛けで、愛子と厚化粧の女は並んで座った。
僕は愛子さんの前に座る。
テーブルには氷の入った水のポットが置いてある。
お客は数名程度、閑散とした空間となっている。
「この食堂は、いつもこの様に空いているのですか?」
と、以前とは違う光景に疑問を持って聞いてみた。
「以前は活気があって、食堂も満員だったけど、社長が先代の息子に変わってから、食堂の経費を削減したの。品質が落ちて美味しく無くて、だから、社員は来なくなったのよ」
と、厚化粧の女が云う。

「そうですか。だから空いているのですね。」

愛子さんは、僕が渡した手紙を真剣に読んでいる。

その、瞳から涙が溢れてる


僕が書いた手紙は、愛子さんに対する想いを
率直に書いたラブレター。
照れる事なく本心を書いたラブレター。
その手紙を読んで、愛子さんは泣いている。

「どうしたの?愛子。嫌な事でも書いてあるの?」
と、聞く厚化粧女。

「嫌な事など書いてないわ。嬉しいだけよ。」
と、静かに云う愛子。そして愛子さんは
僕の顔を見て
「この手紙は、石田さんはいつ貴方に預けたのですか?」
と、尋ねてきた。

…ここで迂闊な事は言えない。じっくり考えるんだ…
そして、この様に言った。

「明確な記憶は無いのですが、2年以上前のだと思います。」

「2年前だと、石田さんがいなくなった頃ね。
何故、石田さん何処かに行ってしまったのでしょうか?」
と、伏せ目がちに切なそうに呟く。

悲しげな愛子の顔は、
(石田に対して想いを寄せていた)と、私は強く感じた。

「愛子は、石田さんの事、好きなの?」
と、訝しがる厚化粧女。

「あんな人の何処が良いのよ?!」
と、疑問を持ちながら云う言葉がきつい。
「あんな目立たない、仕事も出来ない人の何処が好きなの?」
と、石田を軽蔑しているかの様に云う厚化粧女。

…この女、いつか殺してやる。…
と、俺の悪魔の心が動きだす。

「ミエコは、石田さんの事をちゃんと知らなから・・・。
あの人は、優しい人なのよ。自分よりも他人の事を想う人なのよ。
ミエコは、知らないから、そんな事い言うのよ・・。」

愛子は溢した涙を拭う事も無く、静かな声ではあったが
言った。

その大塚愛子さんの姿を、僕は感動の想いで観ていた。

…愛子さんが、僕の事を想っていてくれた!
今まで、片想いだと想っていたが、そんな事はなかったんだ!…

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