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殺人ロボット(8)

8
三人で向かった所は、社内食堂である。
以前、僕はこの食堂にはお世話になっていた。
値段が安くて美味しい。
60席ぐらいはあるが、いつも満員で順番待ちを余儀無くされた懐かしい食堂。
だが、今日は空いている。
不思議に思って尋ねた。
「今日は空いていますね。何故でしょうか?」
と、聞く僕に、
愛子は、驚きの表情を見せた。
「加山さんは、この食堂を知っているのですか?
不思議に思ったのですが、こちらが誘導していないのに、
解っている様に食堂を行く。何故ですか?」

…しまった。軽はずみな事をしてしまた。……
私達は、言葉を発する前に一度心の中で言い、
その言葉の意味を確認してから話す訓練を受けていた。
私は普段からその事を実践しているのだが、
大塚愛子を見て嬉しさから、気が緩んだのか
軽率な言葉を発し続けている。

「以前、石田さんに此処に連れらて来たのです」
と、慎重に言葉を選んで答えた。

「此処って、社員以外は入室したら駄目ですよね?」
と、厚化粧女が大塚愛子に聞いている。

「そうなんだ。じゃ、私は此処には入れないな」
と、無愛想に言った。

「でも、加山さんが社員かどうか判らないと思うわ。
石田さんの伝言もお聞きしたいので、
入りましょうよ。」
と、先頭に立ち愛子は、空いている席に腰を下ろす。

本来は食券を買い、それを渡して注文した品物をもらうのだが、
今回は直接テーブルについた。
時刻は12:10を周ったところであるが
空席が目立っている。
私がいた頃とは全く違う様相になっている。

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