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個別株をやるなら知っておきたい株式会社の仕組み

「株式会社の仕組み」と銘打ちましたが、この記事の目的はEPS、つまり一株当たり純利益や配当性向の考え方を知ってもらうためのものです。
株主の権利まで書いていますが、EPSと配当性向だけでもご理解いただければと思います。


突然ですが、株式会社って誰のものでしょうか?

社長のもの?従業員のもの?いえいえ、正解は株主のものです。

株式会社とは、株主が資金を出し合って会社を作り、経営のプロである社長以下取締役などの経営陣に、会社を経営してお金を稼いでもらうという仕組みになっているのです。

そして株主はその出資比率、すなわち会社の設立に何株買って貢献したか、その株数に応じて会社が得たお金を貰えるのです。


例えば「かめはち商店株式会社」という会社を作ったとします。会社を作る際に株主に買ってもらった株の総数は10株で、1株100円で売り出しました(株式の発行)。
Aさんはこの株を5株買いました。Bさんは3株、Cさんは2株買いました。この売り出した株の総数10株のことを「発行済株式数」と言います。

1年後、かめはち商店は10,000円の純利益を上げました。かめはち商店社長はこの10,000円を全額株主に支払う(還元する)ことにしました。これが配当金です。

かめはち商店は全部で10株を売り出していたので、1株当たりの純利益は
10,000円 ÷ 10株 = 1,000円となります。
この1株当たりの純利益のことを「EPS」と呼びます(Earnings Per Share)。

上記の流れを数式にすると、

一株当たり純利益(EPS) = 当期純利益 ÷ 発行済株式数

となります。


さて、上で書いた様に、会社の利益はどれだけ株数を持っているかで貰える分が決まります。Aさんは5株持っていたので、1,000円 × 5株 = 5,000円の配当金を得ることができました。同様にBさんは3,000円、Cさんは2,000円の配当金を得ました。

今回は10,000円の純利益の全てを配当金として支払いました。つまり純利益の100%を配当金として支払ったことになります。純利益の何%を配当金として支払ったか、その割合のことを「配当性向」と言います。今回は配当性向100%です。

「ちょっと待て!利益を全て株主に支払っちまったら、従業員の給与はどうなるんだ!?」

ご心配には及びません。従業員の給与は利益からは支払われていないのです。会計分野の損益計算書(PL)の話になるので割愛しますが、従業員の給与は予め経費としてちゃんと勘定に入っています。


さて2年目、かめはち商店は20,000円の純利益を稼ぐことができました。
ここでかめはち商店社長は今後の事業を拡大するために、純利益の内5,000円を会社に取っておくこととしました。

このまま行った場合、2年目の配当金に充てられる額は20,000 - 5,000円 = 15,000円となります。配当性向は15,000円 ÷ 20,000円 = 75%です。

一株当たり純利益(EPS)は20,000円 ÷ 10株 = 2,000円です。一方一株当たりの配当金は15,000円 ÷ 10株 = 1,500円です。
(15,000円は純利益20,000円 × 配当性向75%です)

Aさんは1,500円 × 5株 = 7,500円の配当を得ることができます。そう、このまま行った場合は…。


かめはち商店の社長が純利益のうち5,000円を会社に取っておくと聞いて、Aさんは激怒しました。

「お前は株主様を何だと思ってるんだ!純利益の全額を配当に回せ!」

Aさんにとっては苦情の電話でも入れたいところでしょうが、最初に述べたように株式会社は株主のものです。実は社長は配当金の額を最終決定することはできません。あくまで配当金の案を作るだけなのです。それを株主の多数が承認することで、配当金の金額が正式に決定します。

株式会社の場合、Aさんのような意見を表明する場として「株主総会」というものがあります。株主総会では株主が集まり、配当金の額や経営陣のメンバーにYes、Noを投じることができます。これを「議決権の行使」と言います。また経営に関する提言も行うことができます。Aさんの怒りは電話ではなく、株主総会で議決権を行使して表せばよいのです。

※実際には会社法によって配当金の金額には制限が設けられているため、100%会社の意向を反映した案を作れるわけではありません。また定款などにより株主総会で配当金の決議を取らない場合もございます。


余談ですが、コロナ前は現地で株主総会に出席したらお土産が貰える企業が多くありました。今では株主総会に出席しても、ほとんどの会社がお土産をくれません。代わりに一部の企業は議決権を行使した株主に対して、全員か抽選かはともかく景品をくれます。

また日本株の場合、ほとんどの企業が株取引の単元を1単元100株としています。つまり、100株単位で取引することを基本としているのです。そして1単元100株を持つことによって、議決権を1つ得ることができます。

現在では一部の証券会社で1株単位での売買が可能になっていますが、100株未満しか株を持っていない場合は議決権を得られず、意見を表明することもできません。

米国の会社の場合は純利益のほぼ全額を株主に配当金として配るなどで株主還元を行っています。一方日本の会社は配当性向30~50%くらいに止めて配当金の額を調整し、会社内部に取っておく傾向があります。

株主にとっては米国株の方が魅力的に感じるかもしれませんが、もし純利益が赤字だった場合、配当金を出すことができません。対して日本企業の場合は企業にもよりますが、会社内部に資金を貯めているので赤字になったとしても配当金を出してくれる企業があります。

個人的には業績に関わらず安定して配当を出してくれる企業は配当金の計算が立ちやすいので、日本株への投資を重視しています。

私が新卒で入った会社で、入社前に配られた本の新版です。働くうえで知っておきたい知識が載っています。

上司に会社法について学ぶよう言われ、購入した本です。堅苦しい本が多い会社法のなかでは読みやすくて分かりやすい本だと思います。

全ての会社員に読んでほしい本です。資本論を読むのは大変なので、要約版で内容を学びます。これを知っているか否かで働き方への意識が激変します。

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