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独立店シェフの誇りを忘れるな

先日テレビで、名だたるイタリアンの「名店」シェフ達が、ドミノピザのメニューを評価して、「合格」とか「失格」とか判定するという番組があった。

まず、統一の冷凍生地を世界に配送して、それにバイトやパートさんがレシピ通りに具材を並べて自動オーブンで焼いただけのチェーン店のピザを、「コンクール世界一」と誇っている個人シェフが神妙に味わっているのがおかしい。

そして、「これなら合格」とお墨付きを与えて、ドミノピザの開発担当者と「もっとマルゲリータについて話し合いましょう」などと呼び掛けているのを見て、思わず笑ってしまった。

独立店のシェフなのであれば、人生をかけてピザの生地を練り、具をのせて、最高のチーズを選んでちりばめ、窯につきっきりで焼いている訳でしょう。

そのピザはもう、商品を超えて「作品」でなければならないわけです。お客さんの顔色や体調や、その日の天候や、全てを勘案して、この世に一枚だけのピザを焼くわけでしょう。「名店」と威張るなら、そうしなくてはならないですよ。

それが、一日に何万枚も世界中で統一で出される「工業製品(といっていい)」と一緒の土俵に上がり、「センセイ」と呼ばれて浮かれているとは、何事だと言いたい。

食のアーティストとしての誇りは無いのか。

こんなことをする暇があったら、もっと修業して、最高のピザ作りを目指せよ、と言いたい。

・・・と感じたのは、この晩僕だけだったのか。

この手の、特定の大手飲食チェーンの特集をテレビの電波で流すのを最近よく見かけますが、結局、素人が素人受けする番組を素人に流しているだけ、とも感じます。

商品の品質、食の事情、添加物の有無や職人の食の哲学のありなし、とか、そういう深いところまで切り込みを入れた番組を作るのは、もうテレビ局では無理なのでしょうか。

真面目に身を削って毎日お客様と正対している全国の名も無い職人店主の一人として、そう感じました。

以上です。

名も無いところに価値がある。

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