八木沢里志「純喫茶トルンカ」
八木沢里志「純喫茶トルンカ」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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谷中の路地裏にある喫茶店「トルンカ」は、美味しい珈琲を立てるマスター・立花勲と元気印の娘・雫ちゃんが営むお店。そこでやや人生を斜めに見る大学生・奥村修一がバイトしている。
3つの短編小説で構成される、心温まるストーリー。そして『こんな素敵な場所があればいいな』と思えるユートピア。どの登場人物も優しくて魅力的。でもそんな愛すべき一人一人にも、どこか心に寂しさや傷を抱えている。「喫茶トルンカ」で、マスターが馥郁たる香りで淹れてくれるコーヒーこそ、どんな痛みも包み込んでくれる。
1️⃣日曜日のバレリーナ
・初めてやって来て「ようやく会えた」と感激する雪村千夏。うら若き乙女は、前世でフランス革命🇫🇷を共に戦った恋人どうしだったと、修一の手を握りしめる。戸惑う修一だったが、日曜日ごとにやってくる千夏と育まれる淡い恋心。しかしある日突然に千夏はトルンカに別れを告げる。
2️⃣再会の街
・50代の人生にくたびれた男・沼田がトルンカに通うようになった。彼のお目当ては、お店の常連・本庄絢子。生花店でアルバイトしている26歳のイラストレーター。明るく闊達な娘で、沼田をヒロさんと呼んで話し相手になってくれる。そんな沼田には絢子に隠していた秘密があった。
3️⃣恋の雫
・雫には菫という6つ歳上の姉がいた。物静かで知的な雫とは対照的な姉だった。しかし病気でこの世を去ってしまった。七回忌の頃、雫は偶然に姉の恋人だった荻野さんとバッタリ再会する。その時からなぜか雫の心は千々に乱れる。「純喫茶トルンカ」の命名の由来や、家族の歴史が明らかになる。