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寺川枝里子「ヤマブキ①」

「わんぱっくコミック・リバイバル」シリーズから、寺川枝里子「ヤマブキ」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B09CK1D41G/
イリオモテヤマネコのフブキと日本猫の間に生まれたヤマブキ。両親を古代犬に襲われて失うことになる。コウ少年に飼われることになって守られるが、古代犬たちはヤマブキをつけ狙う。コウが東京に引っ越してからも、追いかけてくる。ヤマブキはまだ子猫だが、イリオモテヤマネコの野生の闘争本能に長けている。そのおかげで東京でもなわばりを侵してしまった猫や犬のボスたちを打ち負かして従えてしまう。しかも義侠心の強いヤマブキに、みんな惹かれてゆく。そして遂に古代犬の集団とヤマブキたち連合軍の戦いが幕を切って下す。
 マル暴記事が満載の週刊誌「アサヒ芸能」を出している徳間書店的観点から読めば、ヤマブキたちと古代犬の闘争は、まさに怨念のショバ争い。動物どうしでおさまらず、飼い主である人間までも殺生沙汰に巻き込むほどの、血で血を洗うハードボイルド。全国にヒエラルキー組織を持つ古代犬たち。小さく幼いイリオモテヤマネコのヤマブキは、いつのまにか東京の野良猫たちや彼らといがみ合っていた飼い犬たちを味方につける。それも望んだことではなく、義を重んじることによって自然とつき従ってきた心で結ばれた軍団だ。殺された両親の怨みを晴らすだけでなく、野良猫たちや飼い犬たちを守るために雄々しく生きる姿。その凛々しさは、読んでいて思わず応援せずにはおられない。

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