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鈴木英治「にわか雨」

山田英治「にわか雨」を。電子復刻第58弾。『駿府に吹く風』で第1回角川春樹小説大賞受賞でデビューした時代小説作家。奥さまも、歴史小説作家の秋山香乃。
 沼津や三島あたりの静岡県東部の駿東郡三本松村。戦国時代は今川義元の配下であった。農家の息子である17歳の平太は、武士を志す。北条、武田と盟約を結んだ今川勢は、織田信長の尾張を併合するために、西に進軍する。平太も叔父の茂兵衛に付き従って従軍する。攻撃目標である星崎城を前にして、突然の雷雨。絶対優勢と思われた今川軍だったが、織田軍の勝利に運命は転がる。にわかに降った雨が、歴史を変えてしまった。
 この小説は敗れた者たちの物語である。そして平太の成長の物語である。戦争で人を殺すという体験。お館さまである植松儀右衛門の娘・お藤への思慕。同じ年頃の倉蔵へのライバル意識。そして命からがら駿河に逃げる体験。鳴海城で出会った味方の武将・岡部五郎兵衛の気量。野伏せとの戦いで得た胆力。平太は武士による功名よりも、農業で土と親しむことの尊さを実感する。
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