大下英治「自民党総裁選 暗闇の歴史」
政治ノンフィクション電子復刻。大下英治「自民党総裁選 暗闘の歴史」(徳間文庫)。
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昨日の敵は今日の友、今日の友は昨日の敵。政治の世界は、まさにこれ。自民党総裁=首相であるからして、国会議員になった以上、誰もが首班指名を夢見る。しかし時の運あり、力尽きることもあり、予期せぬハプニングもある。
本書は長期政権を続けた佐藤栄作首相の後継問題から始まる。佐藤栄作の思い描いていた後継者は福田赳夫だった。しかしそれに敵愾心を燃やしていたのが、田中角栄だった。田中角栄の野生的魅力に入れ込んだ若手たち。田中角栄も大平正芳や三木武彦と合従連合を組んで、福田赳夫に対抗。清廉派の福田赳夫は、政治資金をばら撒く田中角栄に屈する。俗に言う三角大福の総裁選だった。実質的には角福戦争だった。この角福戦争が、小泉純一郎政権に至るまで長く尾を引く。数多の分裂や集散を経ながらも根本は変わらない。
しかし攻めに強いが、守りに弱い田中角栄。ロッキード事件で野に下る。しかしその後も闇将軍として政界を牛耳る。その反動で、田中角栄の後を受けたのが三木武夫。しかし選挙の大敗で始まった「三木おろし」。ここでようやく福田赳夫に陽の目が回ってきた。しかし任期切れの改選で、田中角栄の盟友である大平正芳が形成逆転。大平正芳首相就任後の大福戦争勃発で、内閣不信任案の可決に至る。ここで解散を決めた大平正芳が病に倒れ死去。若手の中で起こった世代交代論だったが、闇将軍は大平正芳亡き後の宏池会会長の鈴木善幸を押す。そして、その次には中曽根康弘を立てた。その後、金丸信による「創世会」旗揚げで、竹下登を立てて反田中角栄の動きが急となった。逆襲に転じた闇将軍だったが、田中角栄本人が脳梗塞で倒れてしまい、田中派の実験は創世会に移る。ポスト中曽根は、宮沢喜一、安倍晋太郎、竹下登によって争われたが、軍配は竹下登に上がった。
しかしここから自民党の迷走が始まる。竹下登政権後にリクルート事件が勃発。総裁を争った3人とも疑惑の渦中となり、宇野宗佑に白羽の矢が立った。その宇野新首相も女性問題で僅か40日で幕を閉じた。その後の選挙で、自民党は大敗。与野党は逆転した。消去法的に海部俊樹が宇野宗祐の後を引き継ぐ。非力だった海部政権は、小沢一郎裁定で、宮沢喜一内閣へと移行。続く選挙も自民党は敗れ、自民党も割れて多くの党が乱立。その中で、日本新党の細川護煕が首相の座につき、自民党は政権の主役ではなくなる。その後も佐川急便問題などが起こり、羽田孜、村山富市と首相が交代。
ようやく橋本龍太郎で首相の座を取り戻す自民党だったが、この時に小泉純一郎が浮上する。ここが後の小泉劇場の始まりとなる。後に郵政改革で激しく小泉純一郎と対立する荒井広幸が、この時期は小泉純一郎を担いでいるもも面白い。まだ時代は変わらない。次は小渕恵三vs梶山静六vs小泉純一郎の総裁選。ここで小泉純一郎が惨敗。小渕内閣時代が間に入る。更に小渕再戦の際に、加藤紘一と山崎拓がYKで挑む。小渕恵三は病に倒れ、その後を森喜朗が引き継ぐ。そこで起こった野党による内閣不信任案に同調しようとして倒閣を企てた加藤の乱。ここで加藤紘一という政界のプリンスが沈んだ。そしていよいよ小泉純一郎が、YKK揃い踏みの協力の下で、田中真紀子と組んで国民の絶大なる人気を背に、橋本龍太郎に雪辱を果たす。そして小泉劇場の後に控えるは、プリンス安倍晋三と、福田赳夫の息子である福田康夫の森派コンビ。