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中山可穂「宝塚シリーズ」

中山可穂「宝塚シリーズ」を読む。「男役」「娘役」(いずれも角川文庫)。宝塚への深い愛と知識に刻まれた、小説そのものがお芝居のように鮮やかな演目。ヒロインの女優を輝かせる、語り部としてのバイプレイヤーは、幽霊とヤクザというサプライズな配役。宝塚歌劇団という純粋培養な閉塞空間の魅力を、劇団員の絆という内側からも光らせている。
 「男役」で、ナッツこと永遠ひかるは、月組男役トップスターのパッパこと如月すみれの引退公演の新人公演主役に抜擢される。演題は「セビリアの赤い月」。ファンファンと呼ばれた扇乙矢は、この舞台でかつて事故死したのだ。そんな舞台を50年振りに蘇らせる試みだった。大役に挑むナッツのプレッシャーとの闘いは、その真摯さに思わず応援したくなる。男役という宝塚以外では務めようのない役割に全てを燃やし尽くしたパッパ。そんな二人を、劇場に棲みつく生霊として支え続けるファンファン。トップスターだけにわかる孤独と慄きを、勇気と努力で背負ってきた女たちの歴史である。
https://www.kadokawa.co.jp/product/321702000606/
 「娘役」で、ヅカファンの大鰐組組長・大鰐健太郎を、一亀会・片桐蛍一が観劇中に狙う。しかし襲うはずの大鰐の人柄に惚れ込んでしまい、自分もヅカファンになってしまうという奇想天外な幕開け。片桐の心を奪ったのは初舞台生の、のび太こと野火ほたる。同じ名前を持った二人は、それぞれに苦労を重ねる。片桐は移った大鰐組を組長として背負うことになる。のび太は娘役として、男役のラキこと薔薇木涼と雪組でコンビを組む。しかしダンスが苦手で、見せ場のリフトに失敗して、拒食症に陥る。舞台のアクシデントで偶然繋がった二人のホタルは、運命の気まぐれに、良くも悪くも弄ばれる。
https://www.kadokawa.co.jp/product/321702000607/

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