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斉木久美子「かげきしょうじょ‼︎」

中山可穂「宝塚シリーズ」を読んで、榎本秋先生に薦められた斉木久美子「かげきしょうじょ‼︎」(白泉社・8巻まで刊行中)。宝塚歌劇団を想定した紅華歌劇団に入団した少女たちの物語。秘めたる才能と可能性を持ちながら、銀橋への道は容易ならざる峻険な道。ライバルでもあり、チームメイトでもある同期生の絆と喜怒哀楽を、愛らしく描く。読んで幾多びも涙腺が決壊する「あすなろ物語」。あまりに面白くて、既巻一気読み。
「かげきしょうじょ‼︎①」
歌劇団トップを目指すヒロイン登場。渡辺さらさの伸びやかさに衝撃。デッカくて天然な個性的。そしてその圧倒的な存在に感動。しかし安道先生の、さらさへの指摘に衝撃。その指摘がさらさの生い立ち故であったから。宝塚を想定した紅華歌劇団の、同期の切磋琢磨と同居するコミュニケーションと相互憧憬。愛らしい少女たちの絆も眩しい。
https://www.hakusensha.co.jp/comicslist/46806/
「かげきしょうじょ‼︎②」
歌舞伎に端を発していた、さらさの少女時代。あまりの才能に周囲を魅了し、振り回しながら、性別ゆえに夢を諦めざるを得なかったトラウマ。紅華歌劇に転進したさらさを再び見舞った安道先生の厳しい指摘も、そこに原因があった。歌舞伎の幼なじみであり恋人である、白川暁也は落ち込むさらさを包み込む。天然娘のさらさの原点と挫折を、人の和がさらさを包み、励まし、再び前を向かせてくれる光景。それは読む側も心癒される光景。
「かげきしょうじょ‼︎③」
10年毎の大運動会を機に、予科生たちにも専科メンバーや本科生との関わりが描かれる。歌劇団というヒエラルキー構造のクローズな空間で、果たしてさらさたち100期生はどう成長してゆくのか。サブストーリーに、双子の沢田姉妹に訪れた運命の分かれ道、最年長合格者である星野薫の甘くも苦い青春の思い出。どんなメンバーにも、険しい頂きを目指した故のドラマがある。
「かげきしょうじょ‼︎④」
大運動会のリレー選手に補欠出場で抜擢されたさらさ。常に目立つ彼女は先輩の本科生からも「出る杭は打たれる」洗礼を浴びる。言われたことに思い悩むさらさに、好意的な周囲は、彼女に「自らたれ」とアドバイスする。その解決は安道先生からの指摘の答えでもあり、さらさは懸命に考える。遂に訪れた出番にし生じたハプニング。さて、さらさはどう局面に立ち振る舞うべきなのか。
「かげきしょうじょ‼︎⑤」
運動会の後に訪れた文化祭。本来なら本科生の卒業研究発表の場であったはずが、予科生の寸劇がプラスされることに。キャスティングは、安道先生の提案で、予科生相互投票によるオーディション。同期の絆で結ばれていた予科生たちが、初めて剥き出しにするライバル意識。安道先生にダメ出しされた「ロメオとジュリエット」ティボット役にリベンジする。演技の個性とは何かを問う一巻。
「かげきしょうじょ‼︎⑥」
いよいよ文化祭のオーディションが始まる。誰にも生じる弱気と劣等感。ライバルでありながら、お互いを叱咤激励する予科生たち。それは自らを奮い立たせることでもあった。まだ知らぬ恋心や本当の憎しみ。幼い故に体験したことのない役割に、どう自分を添い遂げるか。短い人生から擬似体験を探し、仮想敵を練り上げる。校舎に貼り出された選考結果は、成否にかかわらず、乙女たちの心を千々にかき乱す。
「かげきしょうじょ‼︎⑦」
文化祭を終えて、遂に卒業の時期迎える本科生。卒業=紅華歌劇団の入団式である。何組に配属されるかと希望に胸を膨らませる大多数の中で、夢破れる人もいる。己が努力や才能が評価を決める習いなれど、人生に運不運はついてくる。本科生の卒業は予科生がお姉さまになる日。未熟であることだけが魅力であった雛たちが、巣立ちに向けて徐々に力を蓄えて成長してゆくビルディングロマンス。
「かげきしょうじょ‼︎⑧」
文化祭を祖父の急病で辞退したさらさ。幸いなことに、無事に回復した祖父。若くして、肉親を取るか、舞台を取るかの葛藤を経験した。自らの選択が正しかったのか悩むさらさ。さらさの代役を務めた奈良田愛の失敗。帰団したさらさと愛は、蘇りをお互いに誓い合う。そんな中、歌劇団への受験生たちが試験の春を迎える。本科生を前にしたさらさたち。そんな中で、安道先生から衝撃の提案が。

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