長岡弘樹「巨鳥の影」
長岡弘樹「巨鳥の影」(徳間書店)。「傍聞き」で日本推理作家協会賞を、「教場」で週刊文春ミステリーベスト10第1位を受賞している本格ミステリー作家の送る推理短編集。いずれも人生の機微や裏表を暗示する小品集。電子書籍版はこちら↓
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1️⃣巨鳥の影
現金300万円の盗難事件に関わる2人のスペイン人の容疑者。ハビエルはGSで、エルナンドは缶詰工場で働いている。同郷の二人は明らかに捜査情報を共有して、エルナンドが罪を被っていた。新米刑事の田所には、携帯も持たない二人がいかに情報交換したかわからない。
2️⃣死んでもいい人なんて
「死んでもいい人なんていない」そんな信念が正しいのか試される捜査現場。自宅に盗みに入った小学校三年生の教え子の父親をゴルフクラブで撲殺した女性教師。当然不起訴となったが、何か引っかかるところが捜査にあった。それは女教師が救急車を呼ばなかったこと。
3️⃣水無月の蟻
有末は蟻をペットにしていた。頻繁に起こる地震をきっかけに、好意を寄せていた隣室の希理子に接近。そんな彼女に、蟻を貸して欲しいと頼まれる。数日後に、有末は隣人の死を目撃。取材する記者に、有末は取引を持ちかける。
4️⃣巻き添え
高校教師の徳本の学校に通う娘いずみが、デパートの屋上から飛び降り自殺した。しかし飛び降りた先には、同級生である綾部玲児の母親・千佳子がいた。娘は昏睡し、千佳子は死んだ。宝くじが当たる確率は五百万分の一だと言うが、それ以上にない偶然だった。
5️⃣鏡面の魚
総合病院で二股をかけていた医師・魚住。別れた氷室初枝は看護師、今の彼女・市原千瑛は患者。喘息発作の千瑛にステロイド剤を打つのに、当直は初枝だけ。手鏡に処方を指示して渡して帰宅した魚住に凶報がもたらされる。
6️⃣白いコウモリ
小学2年生の中村加也斗は「再生不良性貧血」で入院を繰り返していた。学童保育所で弱ったコウモリを触ろうとした日に失神して、また入院。その病院には交通事故に遭った母親も入院しており、加也斗の医師が話しを盗み聞きして怖しい秘密を知る。
7️⃣見えない牙
再婚相手の小学5年生の娘・四葉は、新しい父親に馴染まない。それどころかスマホから浮気の証拠を見つけて、母親に離婚を勧めている。スマホを持ち出して野犬の徘徊する空き地で遭難した四葉を救い出そうとするが。
8️⃣再生の日
医学生の反田宗彦は過激派アジトに運ぶ革製のアタッシュケースを、立ち寄ったフィットネスクラブで盗まれた。しかし盗まれた物が物だけに、宗彦は警察に届けていた。やがて犯人が逮捕された時に、刑事は宗彦になぜ届けを出したかを問うた。
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