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正代の大関昇進伝達式

正代が大関昇進。日本相撲協会から推挙の使者を、時津風部屋として迎え入れた。口上は「不要不急の外出を控え精進します」と、他県にゴルフに行って謹慎中の時津風親方をパロった漫画もあった(協会の粋な計らいで親方も同席できそうだったが、急性膵炎で入院でかなわず、元蒼樹山の枝川親方が臨席)。実際は「至誠一貫の精神で相撲道に邁進して参ります」と孟子を引用した。
 正代という力士を表すキーワードは三つ。ひとつ目が「ネガティブ力士」。十両昇進時にテレビインタビューで「誰ともあたりたくない」と答えて、時津風親方に「バカじゃないの」と笑われた。しかし弟子が大関に昇進する場所に謹慎処分になった親方も相当である。そもそも時津風親方は、先代時津風親方が暴力致死事件を起こして、急遽の引退年寄襲名となった経緯がある。だから新大関も、親方も、部屋も、どこかズッコケている。二番目は苗字も四股名も「正代」であること。そもそも立派な苗字であるということで、そのまま四股名にして、将来も変えるつもりはないと言う。部屋ゆかりの豊山という四股名は、小柳亮太が既に継いでいる。これに加えて91歳になる祖母の名前が正代で、姓名は正代正代(しょうだいまさよ)。相撲ファンに大受けである。正代の曽祖父と曽祖母はふざけて命名したわけではないだろうが、語呂合わせくらいの気持ちはあっただろう。最後に「熊本県出身」であること。熊本県は地震に豪雨と天災に祟られ続けた。故郷の被災を目にして発奮したとのこと。熊本県在住時代は宇土市出身で熊本農業高校から、東京農大に進んだ。熊本県出身力士で初めての優勝、初の大関である。アニメ漫画オタクで、いまだ独身。とにかく話題がないように見えて、愉快な話題に事欠かない力士である。
 引退の影が散らついている両横綱に、勢いのある三大関。貴景勝、朝乃山の若手に、実力者の正代が加わった。最近の貴景勝は太り過ぎているのではないか。ケガが多いのも、そこに原因がないだろうか。倒れ込んで勝つ相撲が多く、立ったまま安定した姿勢での勝利が少ないのが気がかり。朝乃山はここのところ貴景勝を上回る安定感があって、四つ身の実力は抜群。得意の形でない時に凌ぎ切るしぶとさと、土俵際の詰めを万全にしたい。正代の9月場所を見ると、突進してくる力士の受けに回った時、的の小さい小兵には苦手意識があるようだ。もともと正代が幕内に上がって来る時は『すごい奴がきた』という衝撃があった。それは逸ノ城の幕内デビュー以来のゾクゾク感だった。9月場所で見せた立ち合いの圧力を磨けば、常勝横綱になれるだろう。 11月場所の三大関の切磋琢磨が楽しみだ。(絵はtwitterゾウモツから引用〕

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