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辻良樹「日本の鉄道150年史」

辻良樹「日本の鉄道150年史」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓

https://www.amazon.co.jp/dp/B0B8RNMF2K/

2022年は記念すべき「鉄道開業150年」。この本が出るのが待ち遠しくてしかたがなかった。実は春からずっと延期に次ぐ発売延期だったので『いったいいつ出るのか?』とハラハラドキドキしていた。息子が鉄道職員だからということもあるが、自分は少年時代から私鉄好き。住んでいた関西地区は私鉄の宝庫だった。鉄道開業から戦前の国威発揚的な急速な発展、そして戦争による軍用化と損壊、更に高度成長下の急激な復興と発展。そんなダイナミックな歴史が、この本には国鉄も私鉄もページを割いて描かれている。写真や図表もたっぷり載っているし、読んでビックリなエピソードも満載である。一気に読める鉄道史、内容も面白さも超特急である。

1️⃣第1章「汽笛一声!鉄道開業」

・明治時代の鉄道勃興のエネルギーに感嘆。当初は軍備増強を目論む軍部に睨まれて、新橋〜品川開業も海岸に堤を造って線路を走らせたという歴史もあった。関西を中心とした民間による全国への路線整備や食堂車などサービス向上で官民競争。民間の意欲が官制鉄道を変えて行った。技術者の奮闘で蒸気機関車から(路面)電車への変遷。日清・日露戦争などを経て、アジアに拡張する日本の国策も鉄道振興を後押しした。

2️⃣第2章「鉄道が飛躍・興隆した大正・昭和初期」

首都の玄関として東京駅が開業し、超特急「燕」が東海道を疾駆したイケイケの時代。一方で東京では東急、関西では阪急が創業して私鉄ブランドが芽生え、地下鉄も誕生。難工事だった丹那トンネルの開通による東海道線の輸送力増強や、ネジ式連結器から自動連結器への交換という地道な努力もあった。

3️⃣第3章「戦時体制〜戦時復興」

第二次世界大戦中の鉄道は軍用優先であった。そのため旅客輸送は少ない車両で大量の移動を強いられた。また空襲や軍需徴用で、国内の鉄道資産は大いに損壊・散逸に至った。しかし終戦後は進駐軍主導による戦後復興で、劇的な回復を遂げる。その一方で国鉄誕生で労使のスト闘争も激化。

4️⃣第4章「躍進の高度経済成長期」

現代のわれわれも馴染んでいる特急の時代。国鉄が「はと」「つばめ」から「こだま」へ。私鉄では小田急「ロマンスカー」、近鉄「ビスターカー」、名鉄「パノラマカー」などが輩出。鉄道は輸送だけでなく、旅という娯楽となった。一方でトラック業界との競争で、貨物輸送はコンテナに。日本経済が豊かになるに連れて、日本の鉄道もサービス業に転換。

5️⃣第5章「夢の超特急が登場!」

東海道新幹線の開通が日本を変えた、いや世界を変えた。東京〜大阪が僅か3時間10分の驚異。そして美しくも哀しい寝台特急、ブルートレインの興亡。自由席のエル特急もありました。国鉄私鉄の冷房化競争の中で、シルバーシートができたのもこの頃から。一方で飛行機と国鉄の競争が激化。国鉄赤字ローカル線の第三セクター化も進んだ。

6️⃣第6章「新時代の鉄道復権」

37兆円の赤字を抱えた国鉄がJRグループに生まれ変わったことは大事件であった。それ以降、青函トンネルや本四架橋の開通など日本全国が直結する大工事が完成。「のぞみ」の登場による新幹線の飛行機への宣戦布告。鉄道事業もSUICAやPASMOのキャッシュレス化、駅ナカの商業地化など激しく変動している。しかし最も問題なのは裕福な都会と経営難に喘ぐローカル線のギャップ。コロナ禍も相まって、鉄道の本来的意義が見直されている。


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