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忘れ得ぬ「美々卯京橋店」最後の日

忘れ得ぬ思い出。「美々卯京橋店」最後の日。恩人である亡き職場の上司と最後の会食の場であり、藤子不二雄Ⓐ先生とご一緒したこともある(先生は肉魚ダメなので飛龍頭や野菜を召し上がる)。通い始めたのは、高橋幹夫「たべあるき東京接待の店」(昭文社・絶版)という名著を読んだことから。根岸「笹乃雪」(豆腐料理)と共に、最もリーズナブルな接待のお店だったから。格式があって豪華な雰囲気、しかも料理が美味しくて満腹になれる。それでいてお手頃価格。他の支店も含めて、50回くらいは利用させてもらったと思う。
 一人でも頼めるということで、思い切って「うどんすき」@3900をオーダー。ランチにしては、1ヶ月の小遣いの1割近いお値段。しかし今日で実質永遠のお別れともなれば、いたしかたがない。輝く銀の鍋。なみなみと鍋に注がれた金色のツユ。鶏肉に火が通った時から食べて大丈夫。フワリとトロけそうな焼き穴子。昆布がコリコリした角蒲鉾。歯応えのある京麩。たっぷりツユを含んだ熱々の飛龍頭。幾重にも層をなす湯葉。白菜は野菜の王様。肉厚の椎茸。ホクホクの里芋。湯通しされて透明な大根。橙色が眩しい人参。緑を添えるサヤエンドウと三つ葉。挟みで押さえつけておかないと、鍋から飛び出してしまう生きた海老。最後に投入する餅の楽しみ。そしてもちろんコシのある艶々うどん。調理は若く美しい仲居さんが全てやってくれる。ツユが煮詰まってきたら、大徳利でツユを足してくれる。全身に汗が湧き出る。ついでに食べながら、思い出し涙も出てくる。3日食べなくていいくらいの満腹。お勘定の際に「これまでお世話になりました」と、お互いに深々と頭を下げて店を辞した。2020年
https://tabelog.com/tokyo/A1302/A130202/13002507/

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