見出し画像

成田名璃子「月はまた昇る」

成田名璃子「月はまた昇る」(徳間書店)。
 ディベロッパーの北村彩芽は、出産後すぐに職場復帰の予定が、保育園が見つからない。SNSで呼びかけた「保育園落ちた人この指止まれ」に、多くのママ友が集まった。そこで知り合った3人。シングルマザーで経理ができる沢村敦子。保育士経験のある江上梨乃。彩芽は二人に提案する。「一緒に保育園つくりませんか?」。仕事に家庭に行き詰まった三人が、時には力を合わせて、時には反目し合って、「商店街の保育園」という夢を共有する。
 保育園に落ちたから発奮して、ママ友から有志を募って保育園を立ち上げる。『月並みな話だな』と思って読み進めたのに、感動と涙が止まらない。マミートラック、保活、派遣切り、夫への気兼ね、姑との葛藤。そう主婦たちは孤独なのだ。どんなに女性が社会進出したと言われても、やっぱり政治家や管理職の大半は男性。唯一の昼間の話し相手である我が子に相談できるわけでもない。就職面接で優れているのは、8割女子である。しかし妊娠、育児で、優れた能力が社会で存分に発揮されるとは限らない。この物語は、素人による保育園設立というテーマを通じて、自己実現することによる家庭の再生を描く。そして商店街という地域を巻き込んだ地域再生を横串にした点もユニーク。
https://www.tokuma.jp/book/b529003.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?