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北國浩二「ルドルフ・カイヨワの憂鬱」

徳間SFコレクション電子復刻第5弾。北國浩二「ルドルフ・カイヨワの憂鬱」(徳間書店)。2005年に第5回日本SF新人賞佳作入選作。この小説は遺伝子工学を利用した、国家によるバイオテロの物語。強大な国家権力に立ち向かったのは、ロサンゼルスの弁護士・ルドルフ・カイヨワ。元FBIの私立探偵オタと、弁護士事務所の女性事務員サンドラが、彼を助ける。ルドルフ・カイヨワは、天才科学者であるロバート・キンドレッドのクローンとして生まれ、ピーター・ベースメントと命名された。生命倫理委員会の調査員として、ウィンタース社が運営する無人病院の怪しい動きを察したルドルフ・カイヨワを、元FBIの私立探偵オタと弁護士事務所の女性事務員サンドラが助ける。無料病院は、女性の卵巣や卵子を自由に不法に採取するための機関だった。胎児を無脳化するゲノムウィルスを放置する政府。DNAスクリーニングによって、障害児を除去する親心を悪用した政策だった。そして体外受精義務化法案が政府から発表される。それは遺伝子操作による人造人間「スーパーヒューマン」を作り出し飼育して、火星を支配する。神をも怖れぬ計画だった。ルドルフ・カイヨワたちは、バベルの塔を阻止できるのか?
 バイオ産業という遺伝子工学を駆使した新しい産業が、モラル次第でいかに人類の危機を創出するか。著者は主人公ルドルフ・カイヨワに、生きるか死ぬかの連続の中で、本来ならば敵うはずもない強大な国家権力に、いかにいっぱい食わせられるかを痛快に描く。どんなに強大な敵を向こうに回しても、諦めては終わり。幾重にも張り巡らされた罠をかいくぐり、間一髪で脱出する。その一方で抜け目なく反撃を喰らわせる姿は、まさに痛快。実際に存在すると言われる人間のクローン。蔓延するコロナウィルスという、中国が世界に漏らした生物兵器。これらの脅威は、まさに現代への予言そのもの。読んでいて、空恐ろしくなるリアルな小説。
https://www.amazon.co.jp/dp/B08H1XXHHQ/

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