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谷口裕貴「アナベル・アノマリー」

谷口裕貴「アナベル・アノマリー」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BP1WHW6N/
著者は2001年「ドッグファイト」で、第2回日本SF新人賞を受賞。自分は「遺産の方舟」(徳間デュアル文庫)を電子書籍アーカイブで復刻した経験がある。本書は「SF JAPAN」連載2篇に書き下ろし2篇を加えた全4篇の構成。巻末の伴名練氏の解説は、ほぼ谷口裕貴の作家生活のクロニクルであり、同時に苛烈な運命を辿った日本SF文学界の歴史を振り返る意味で貴重かつ意義深い。
 世界を劇的に変容させる力を持つ少女アナベル。彼女を制御するために設立された念力者=サイコキネシス組織であるジェイコブス。撲殺→再生が通算11度も繰り返されるが、少女禍と狩猟は果てしなく連鎖する。血肉滴る凄惨にしてグロテスクな光景を、天使の顔をした悪魔が、涼しげな何食わぬ顔で氾濫させる。核や生物兵器、パンデミック、異常気象が制御できなくなった近未来。人類の破滅的未来を予言するかの如き阿鼻叫喚を、少女アナベルが一身をもって体現しているのだ。独創的なストーリー展開に加えて、跳梁跋扈する華麗なる文体に、度肝を抜かれる。
1️⃣ 獣のヴィーナス(ナイジェリア)
・ナイジェリアのスラムで暮らす少年レンの12歳の誕生日。彼の養父たち3人は、レンの出自の真実を伝える。そこから巻き起こる弾圧と闘争。
2️⃣魔女のピエタ(プラハ)
・アナベルは妊婦に取り入って、ジェイコブスのサイキッカーから逃れる。古都を茸の森と化したアナベルは観光列車で何食わぬ顔で脱出。
3️⃣姉妹のカノン(ブエノスアイレス)
・第三者の記憶にアクセスできて(跳べて)、かつ改変までできる能力を持つ范雨天。ジェイコブスに召喚され、アナベルの連行を求められる。
4️⃣左腕のピルグリム(ロンドン→山形→マダガスカル→サマルカンド)
・ジェイコブスの最後の砦イカルスとアナベルの闘いを以って、ジェイコブスは崩壊、アナベルは姿を消す。残された荒廃した世界からの新たなる出発。


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