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西部軍司令部/九州大学医学部事案 米軍機搭乗員犠牲者慰霊法要

「西部軍司令部/九州大学医学部事案 米軍機搭乗員犠牲者慰霊法要」が開催された。事件関係者遺族として毎年参加せねばならないところだが、遠方故に毎年の参加は難しく、今年はオンラインでの参加とさせて頂いた。
 第二次世界大戦終戦時に起こった西部軍三大事件。事件と表現されてはいるものの、実際は捕虜の処刑であった。捕虜の虐待殺害は国際法上許されないことであった。その一つは油山事件で、B29搭乗員8名を福岡市福岡市にある標高597mの油山で斬首処刑した事件。この事件に亡父が関わっていて、日本で最後に捕まって裁かれたBC級戦犯となった。二つ目は遠藤周作「海と毒薬」に描かれた「九大医学部生体解剖事件」。8名が代用血液、肺の切除、心臓停止などの非人道的な臨床実験の犠牲者となった。いずれも6月19日の福岡大空襲の報復の色が濃い事件だった。三つ目に島尾敏雄が小説にした石垣島事件。石垣島を含む沖縄を空襲していたアメリカ海軍搭載機隊員が落下傘降下。この3名を捕獲して、海軍警備隊が処刑した事件。
 この法要は、戦争研究家の深尾裕之氏が手弁当で主宰している。今年で第5回目を数える。主たる目的は犠牲者となったB29搭乗員43名の慰霊鎮魂。開催場所は事件のあった油山の中腹にある油山観音「正覚寺」で行われている。主たる出席者は米国側が、捕虜の遺族であるマイク・バーグ氏、ヘザー・ブキャナン氏。日本の関係者は、自分と冬至克也氏(作家の冬至堅太郎氏のご子息)。米国遺族は、家族が戦禍に関わったことで、当時の経緯を調査したり、著書を刊行したりと、終戦史と向き合って生きている。冬至堅太郎氏は、巣鴨プリズン出所後に、自ら手にかけた4人の米兵に見立てて、自宅の庭に4つの地蔵を建てた。今は油山観音に移されて、安置されている。冬至堅太郎氏は作家だったので、獄中で『いつか自分の子供たちと自分が処刑した人の子供たちが会うことがあるだろうか』という想いから「わが子らとわが処刑せし米兵の子が相あはむこともあらむか」という歌を詠んだとのこと。慰霊法要では、まさに実際に冬至堅太郎氏が詠んだ通りの光景が実現している。これは自分たちの子どもの時代は平和であってほしいという、戦争を経験した人すべての願いに他ならない。

読経する正覚寺住職
列席者の集合写真
オンラインで来賓挨拶
海外遺族もオンライン参加


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