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「祝言ほど素敵な瞬間はない」

 人生において、友人の結婚式ほど幸せヂカラを得られるものは、おいそれとあるものではない。祝言ほど素敵な瞬間はない、この一言に尽きるであろう。
 まさに今日、久々に結婚式の招待状を受け取ったので、わくわくが止まらず、過去の色々な愉快な結婚披露宴のことが思い出されてきた。てなわけで、「結婚って自由でいいんだ」という記憶を書き綴ろうと思う。

ケース1 音楽一家

 新婦友人として参列した結婚式。通常BGMは会場付きの演奏家がオルガンを使うと思うのだが、ここでは違った。新婦のお姉さんが演奏していたのだ、クラリネットを。
 驚きは続く。披露宴の余興のことである。友人代表が歌や楽器を、というパターンかと思いきや、新婦による演奏が披露された。まさかのホルン、まさかのソロ。
 どうも聞いたところによると、お母さんも音楽をしていたというが、お父さんも昔々、小田和正のバックバンドをしていたことがあるという。まさに音楽一家である。うーむ、自分の結婚式での演奏、さもありなん。

ケース2 共同作業

 披露宴の共同作業といえば、ケーキカットであろう。「新郎新婦、初めての共同作業です」というアナウンスはあまりにも有名である。
 ところが、その式ではこのようなアナウンスが聞こえた、「ご両家、初めての共同作業です」と。我々の頭上に疑問符が大いに浮かんだことは言うまでもない。両家……、両家とは?
 出てきたのは巨大な塩釜焼きである。そこに新郎新婦のお父さんたちが現れた。かたや塩釜を割るためのノミを持ち、かたやそれを叩くためのカナヅチを持って、だ。
 なんだこれ、我々は何を見せられているんだろう。友人の父とはいえ、知らんおじさんと知らんおじさんが共同作業をしている。そして、その塩釜焼きが我々に配られる。謎すぎる。
 酔っ払ったおじさんが酔っ払ったおじさんの手元にカナヅチを振り下ろすさまは、非常に心臓に悪かったことだけは書き記しておかねばなるまい。

ケース3 雷門

 浅草が新郎新婦のゆかりの地ということで、その披露宴は浅草ビューホテルで行われた。会場入りするとカーテンが閉まっており、披露宴開始とともに開幕。スカイタワーのライトアップに息を呑んだことを覚えている。
 ホテルだけでなく、ウェディングケーキも浅草にちなんでいた。ケーキが雷門の提灯だったのである。新郎新婦のマスコットを乗せた、人の胴体ほどのサイズの提灯が鎮座しているさまは見た目にも愉快で、自由さを強く感じた光景であった。

ケース4 おかわり

 その浅草の披露宴ではもう一つトピックがある。友人代表の余興のことだ。
 「友人代表による余興の時間です。それではお呼びしましょう!新郎の友人、Dさんです!」と司会に呼び出され、ショッキングピンクのタンクトップで出てきたDさん。
 ノリノリで趣味のダンスとジャグリングを披露。ボールやらボックスやらのジャグリングに会場は大盛り上がり。司会の「名残惜しいですが、新婦のご友人もいらっしゃいますので、このへんで。新郎のご友人のDさんでした、ありがとうございました!」の声には「えーー!!」とレスポンスがあるほどだった。
 その後、司会が「それでは準備ができましたのでお呼びしましょう。新婦のご友人、Dさんです!!」と呼び出したのは、再びのDさん。真っ青なタンクトップにお色直しをしたDさんの、まさかの再登場に会場は大ハッスル。スタンディングオベーションで迎え入れる。
 Dさんはその空気に押しつぶされることなく、中島みゆき『糸』を熱唱。二番からは桑田佳祐などのものまねをしつつ、見事歌い切ったのだった。
 ところで、同じ席にいたDさんの彼女さんは会場の雰囲気とは逆に浮かない顔である。「どうしたんですか?最高じゃないですか」と問うと、「あんたねえ、他人だから純粋に楽しめるのよ」と頭を抱えて言い放ちましたとさ。

ケース5 Dさんの結婚

 そんな無茶苦茶なDさんも結婚することになった。Dさんの披露宴なのだ。なにもないわけがない。当然ですよね。
 二次会のことだ。見知らぬ男女でグループを組まされ、何が始まるかと思えば、フリップが渡される。何かの順位を予想するらしい。
 チームの代表の男女各一名を送り出すと、男性は手錠をかけられ、女性は男性にバームクーヘンやらカステラやらを食べさせる余興が始まった。グループ対抗でこれらの順位を当てるというゲームなわけだ。繰り返しますよ、見知らぬ男女のグループなのです。そりゃ盛り上がるよねー。
 大変な盛り上がりの二次会。これで終わるわけがない。Dさんだ。Dさんにもやってもらわなくてどうする。最後はDさんに新婦のMさんがアツアツおでんだの哺乳瓶コーラだのをお見舞いし、その食べる速さを当てるゲームで盛り上がりは最高潮に達したのだった。

ケース6 絵本

 八重さんの親友はたいそう絵本好きで、新婦とも絵本を通じて知り合ったという。そんな彼の披露宴は絵本が、ある大切な役目を果たしていた。
 そう、座席の名札変わりである。新郎新婦で相談して、ゲスト個人個人に合うような絵本をチョイスしたのだという。ああなんて大変そうで楽しそうな作業なのだろう。
 ……まあ、大変だっただろうし八重さんの趣味に合わせてくれただろうから、披露宴なのに、八重さんの絵本は京極夏彦が文を書いた『怪談絵本 いるのいないの』だったことには目をつぶろうじゃないか。

ケース7 銃弾

 八重さんも結婚をしたことが一度ある。披露宴をするような金もなかったのだが、友人たちが20人以上集まってくれて、手作りの披露宴を行ってくれたというハートフル劇場。
 (それゆえ、その後、八重さんにバツがついたことは結構申し訳なく思っています)
 会場の飾りもケーキもウェルカムボードも内容も一切合切が手作りで、ビデオメッセージもあったりサプライズゲストがいたり、うれしかったなあ。
 で、だ。披露宴と言えばケーキ。ケーキですね?ケーキとはカットするものですね?八重さんたちに渡されたのはナイフではなく、サングラスとショットガン(のモデルガン?)でした。
 「新郎新婦初めての共同作業、ケーキ入弾です。どうぞ引き金を引いてください!!」…………なぁぜなぁぜ?

ケース8 勧進帳

 そのお返し、というわけじゃないけれど、自分の披露パーティーでは八重さんも仕掛けた。勧進帳だ。

文化的影響[編集]

弁慶が「読み上げ」で持ち合わせの巻物を朗々と読み上げる場面の連想から、テレビ番組などでアナウンサーやリポーターなどがあたかも原稿を読んでいるようで実は即興でものを言っていたり、リポートするさまを「勧進帳」という。

タモリ赤塚不二夫葬儀で8分にわたる弔辞を行ったが、この際手にしていた奉書紙は白紙であり、「現代の勧進帳」とも言われた[15]。なお、後年タモリはこの演出が意図的なものであることを認めており、その理由を「(タモリの当時の)マネージャーの姓がトガシだったから」と説明している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%A7%E9%80%B2%E5%B8%B3

 八重さんはわざわざ封筒に白紙の便せんを三枚ほど入れて持っていき、その場で即興で大勢の人にお礼のあいさつを述べた。ラジオパーソナリティをかじっている身としてはどうしても一度やってみたかったのだ。
 ただ、すぐに後悔する羽目になった。なぜなら、あの素敵な日の高揚感の中、振り絞った挨拶の内容を忘れてしまったからだ。かなり良くできた内容だったのになあ。映像で記録でもしておけばよかった。


 さて、結婚披露宴とは、めでたいだけのものではない。かくも自由で愉快で幸せヂカラを得られるものなのである。今度の結婚式はどんなものになるのだろうか。
 いずれにせよ、祝言ほど素敵な瞬間はない。

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