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謎作ってない人目線の修羅場脱出制作者サイド


 
「若い時の苦労は買ってでもしろ」
という言葉を聞いたことがある
正にそれの体現のような公演だった


きっかけは昨年末
Xのタイムラインに
流れてきた「終わらない修羅場脱出」の告知

人は何故見えている地雷を踏みに行くのか


これを見て速攻いいね&リポストした

自分は今まで謎を解く側しかやって来なかった為
0から謎を作るには
それを公演の形にするには
一体どうすれば良いのか
このイベントを通して
謎制作の現場を見られると思い
丸2日間参加しようと考えた


ちなみにネタバレすると
修羅場脱出を終えた
今でも謎制作は出来ないし
何も分からなかった
その代わり

謎解き系イベントは謎だけでは成り立たない

という現実を身に染みて知れる24時間だった


2月3日の12時
制作者サイドの人間が集まり
自己紹介を終えるとそのままミーティングに入り
その中で色んなものがどんどん決まっていった

みんなよく考える


公演の段取りもよく分からないうちに組み立てられ
(フェス形式と言うらしい)
なんか格好いいBGMが0から作られたり
24時間生配信用の謎が作られたり
山のような数のオープンチャットが作られたり
いつの間にかweb上に解答フォームが作られたりと
みんな一体その技術力はどこで培われるのか
(自己紹介を聞くと本職の方もかなりいらした)


制作者サイドは正直ヤバい人の集まりだと思う
だってお金を払って来た筈なのに
遠方から足を運んで来ている人も居るのに
(これを書いているのは東北から来た人)
(隣には愛知から来た人もいた)

その日初めて会った見ず知らずの
名前すら知らない人と挨拶もそこそこに
頭を突き合わせながら作業をする
強制された訳でもないのに
飲まず食わずで
24時間後の締め切りの為に
頭と手と足とを動かしている

そこには「お金を払ったお客様」の姿はなく
泥臭く自分の出来ることに没頭する
「制作者たち」の姿があった


同じデザイン班に入っていた
かないさん のnote
分かりやすいことこの上ないです

自分は全体ミーティング中に
うっかりいくつかの絵を描いて提出した為に
デザイン班の一員となっていた


修羅場中に描いた一部



生配信第1部から
この後デザインが大幅に変わる事を知らない




全体ミーティングの中で節分をモチーフにすることが決まっており
描いた絵を元になんとなく全員に赤鬼のイメージが頭のなかで形成されたり
それを元に共通デザイン用のカラーパレット作って貰ったり

ミーティング中のホワイトボード



床の赤いカーペットのRGBを解析したり

当時の画像が無かったので再現
場所によって色が違うので最早ニュアンス



それにしてもこの日ほどブラッシュアップという言葉が怖くなった日はない


人間工学を無視した腕章アイディア
格好いいロゴが誕生し
ロゴを大胆にあしらったデザイン
これを切り出してスタッフ用腕章にする


自分がその日初めて覚えた技術で描いたり
文字入れして作ったものは
そのほとんどが
他のデザイン班の人によって
より洗練されたものとなり
もはや原形すらも残ってない物もあるので
描きましたというのも
烏滸がましく思ってしまう
使用ソフトの違いで明らかに手をわずらわせているのに
「叩き台があるのは嬉しい」
と言って貰えた


そしてありがたいことに
自分が描きあげたものをそのまま採用していただけた所もあった

この中学2年生感

キービジュに使用していただいた謎解きブース
「イケメン親方」の解説note 


ダサいデザインが欲しいというニーズに奇跡的に画力と技術が噛み合った
ダサいデザインが縮小されても印刷でつぶれずに文字も模様もはっきり見えて良かった


もしかしたら
他のブース同様にこの絵を元に
デザイン班により洗練されたダサいデザインに
してもらった方が良かったのかも知れない
という考えも頭を過ったが
自分が描いたものがそのまま本公演に使って貰えた事実だけ残った


デザイン班といえば
聞こえは良いかも知れないが
修羅場におけるその立ち位置は
恐ろしさを感じた
コンテンツが固まるにつれ膨らむみんなの理想
時間内の実装は不可能なのではと思いながらも
タスクは増えていき
人手は減って難易度が上がっていく……


お分かりいただけただろうか……

23時くらいに新しい謎解きブースが増えたのどういうことなんだ

謎解きブースは6個の前提でもうパンフレットのレイアウトも決まってた

枠組みも紹介文の文字数も決まったところで突然の追加だった

デザイナーはこんな無茶ぶりも対応しなければいけないのか……

そしてその変更にも柔軟に対応出来るのか……

呆然としてしまった

ひたすら冷静に目の前の画面に打ち込み
仕様変更に対応するデザイン班の早さに絶句する

更にこのタイミングで即戦力になってくれる人が現れ現場のスピード感が上がった!
 
そして日付を跨ぐとともに
明らかに自分の脳のギアがローに入った

今、自分出来ることなくね?と思ってしまって
(今考えると絶対あったな出来ること)

逃げたくなってしまったし
実際逃げた
(泊まる場所を事前に予約していた事情もあり終電で帰ってしまった)


終電で帰る人に便乗して駅に向かい
ネカフェに着いてすぐ爆睡した


翌朝
始発で行こうと思っていたが
目を覚ましたら8時前だった
スマホを見ると
制作者サイドのオープンチャット通知が溜まっていた

どうやら寝ている間にパンフレットやポスター
各ブースのキービジュアルや会場内に貼られる隠れウォーリー的な要素などとにかく色んなものがほとんど完成したらしい

これは完成形
朝の時点でテキストはほとんどすべて入っていた





更に腕章の裁断まで済んでるのを見たときは
わざわざ忙しい人の手をわずらわせずに
現地で自分が手を動かせば良かったと後悔した

修羅場に足を運ぶ
せめて差し入れをとコンビニに立ち寄った
他の方からの差し入れが
チョコレートやラムネなど
甘いものがメインだったことを思い出し
味変したいよな~と
歌舞伎揚など個包装のものを数種類買っていった
(朝ごはんも買えば良いのにと書きながら思う)



そして会場についてからの記憶はあまりない
というのも
数時間後の12時にはテストプレイが始まるので
デザイン班は
ギリギリまで実装とブラッシュアップの為に画面に打ち込むPC班と
それが印刷された物をひたすら折り畳んだり裁断したりラミネートしたりと手を動かす
コピー機班に分かれた

膨大な量の小謎が印刷されていくのを見ながら
素朴な疑問を抱く
謎解き公演って客が時間内に解けきれないくらい謎を作るのが常識なんですか?
世話好きのおじさんおばさんが経営してる採算度外視の定食屋みたいなこと毎回してるんですか?
なんで??
基本イベントの日以降見られないのに???

作った小謎枠
これを
こうしてもらった
難易度や制作者の名前も入れられる


しかもこれ謎を作っただけじゃ成立しないんだ
今回はそれぞれのブースに異なった世界観があり
その世界観に合わせた謎やアイテム
その枠組みやデザインやが必要になる

書きながら気が付いたんですが
これってひとつの会場に
短時間で出来る謎解き公演が
複数同時開催されているようなものでは……
フェス公演ってそういうものなんですか……?


とにかく
印刷してラミネートする
印刷してラミネートする
印刷してラミネートする…………


そういう無限地獄が何回かあった気がする
今日も来てしまったことを後悔しながら
疲労困憊のなか
印刷された物をラミネートする


するとたったそれだけのことで
同じテーブルで謎を作っていた人が驚き
「すげぇ……」
と言っていたのが印象的だった
おもちゃ屋バイトで5分くらいで覚えたことなのに

出来ること出来ないこと
バラバラの人たちが集まって
そうして出来た
「修羅場脱出」は
阿修羅学園による文化祭「修羅祭」となり

「修羅祭へようこそ」


その「修羅祭」は修羅場を迎えたために
各ブースの責任者が逃げ出し

主催が空っぽの会場で参加者に土下座をする
責任者たちが残した謎を解き
街に逃げた責任者を集めると

主催と司会が嫌だ嫌だ言いながらマイクを握り
「修羅祭」の開幕を宣言する
暗転の中で軽快な音楽が鳴り響き
凝った映像がプロジェクター上に流れ
空っぽだった会場にブースが出来上がる

すると会場のあちこちから人が湧いて
担当のブースに付く
出来上がった「修羅祭」で
参加者たちは遊べるようになる
それぞれのブースも様々なこだわりと謎が隠れており……?


「修羅場脱出」は
何重もの入れ子構造になっており
その実態は恐らく制作者側でも
完全に理解しているのは
せいぜい十数人が良いところだと思われる


会場に参加者が入場して
「修羅祭」が始まるまでの間
自分は物陰に隠れながら
次の公演のパンフレットを折ったり
ハサミを動かしたり
段取りを確認したりしていた
暗幕裏の一畳くらい? の空間に大の大人が3~4人
コピー機の横とか
テーブルの隙間に
ぎゅっと詰め込まれていた


暗幕の向こうでは
責任者が捕まって連行されて来たり
参加者みんなで謎を解いたり
暗号を解読していたらしいが
その解説は他の人にお任せする
物理的に見えなかったので

 

そしてようやく始まった「修羅祭」のなかで
私は野球部のブースを運営していた


…………なんで?

ここまで読んでいただいた通り私は謎制作にはノータッチだったのだが

答えは簡単で
これを実現させたくて頑張った人
が次の予定の為に
この修羅場から離れなければいけなかったからだ
 

自分の店を持つのが理想だったんです!
手伝ってください!
と言われて手伝っていたら
いつの間にか店長になっていたという形だ

しかもこれ23時に追加したブースのひとつじゃん!
そんなにこだわったなら最後まで楽しんでいって欲しいよ!?



野球部のお隣にある写真部ブースにいた
かいさん

と一緒に
12時のテストプレイ開始前に
ゲームの説明を聞き
台本を共有してもらい
そしてテストプレイでは一緒に運営して
終演後
次の予定に向かう姿を見送った


本公演では
おもちゃ屋バイトでの実演販売経験を活かして
ゲームを盛り上げさせてもらった

「記念すべき第一投!投げました!」
紙をめくる
「決まりました~~~!!!」

紙芝居形式の謎がシンプルで動かしやすく
参加者サイドの反応も良かったと思う
フォローもあって
なんとか初演と最終公演を終えるまで
続けることが出来た


Xで見かけた「修羅場脱出」の感想の中で
「船頭が多いと船は山に登る
から船自体を増やしたってこと?」
という文章をお見かけしたが

その船のなかには船頭すら失ったものがあったのだ
 
船頭が帰らないといけないときは
残された誰か、託された誰かが
船が沈まないように火事場の馬鹿力を発揮しないといけないらしい

広い海洋のど真ん中

船頭を失くした船を破れかぶれで漕ぐ 

作ってくれてありがとう
立派な船だったおかげで
沈まず最後まで漕ぐことが出来ました
制作者のみんな自分が作ったんだって胸張って言って欲しい


時間いっぱい船を漕いだ先で
待っていたのは
会場内で通貨として流通したマメー(本物の豆)
を盛大に投げる鬼退治だった


会場隅でこれなので中心部はもっとすごい


最後の最後は
参加者も制作者も混ざって
マメーを投げる
服とか靴のなかに入ったし
歩きづらいことこの上なかったけど
マメーを投げたあとは
参加者も制作者も
やけにすっきりとした顔をしていた



参加者を帰らせたあとは
残った制作者サイドによる
掃除の時間
とにかく豆を拾いまくったあとは
会場を元の姿に戻すため
修羅場中に作ったものを全てゴミ袋に in
制作中に出たゴミも合わせて5~6袋くらい?

もしかしたらこの時間
結構楽しかったかも


渾身の一作も

野球部で使ったボード
ラミネートすれば良かった……端折れちゃったし……
というのも

ぜ~~~んぶ完全撤収でみんな捨てていくの
清々しかったな
物理的に何も残らないというのは
色々気にし過ぎる所がある
自分にとっては嬉しい知らせだった
最後まで走り抜ければあとは片付けって良すぎる


 



ここまで制作者サイドの一人として
色々書いて来たけど
正直参加者サイドから見たら
良い公演とは言えないと思う

何せ会場は
うるさくて狭くて
人が多くて暑かった

参加者サイドのそういう感想を見かけるたびに
分かる~!と思ってしまう

周囲の声が大きいため
ゲーム中でも声量を大きくして
ゆっくり、
身振り手振り使って
何度か丁寧に説明したり

ゲーム中に良いひらめきをしたひとには
他の参加者の為に
もう一度説明することを促すなどしたので
悪い方で手間がかかっている気がする

寝食を疎かにした人達特有の
ハイテンションにより大きくなる声量に加え
会場のキャパを完全に無視した収容人数
(制作者サイドMAX78人+一公演の参加者サイド48人)
制作者、参加者両方の
額に輝く玉のような汗は
けして良い意味だけのものではなかったはずだ
(人が密集していて物理的に暑い)

これはもうイベント全体の今後の課題になるんだろうか
はたして




主催の沙竹唯さんがどこかで
「この公演に来るひとに何者かになって欲しい」
と言っていた記憶がある
(Xだったと記憶しているが見つけられなかったので捏造の可能性もある)
(見つけた方ご一報ください)


自分が現地に行って見えたのは
何者かになるには
到底技術も知識も足りない自分の姿と
それでも良い、
ありがとうと言って
支えてくれる人たちの顔だった


普段から筆の遅い私だが
「24時間で謎解き公演を作ろう!」がテーマのこの公演の感想に
何日もかけるのはナンセンスでは?と思い
自分なりに早めにアップさせていただいた
他の人の感想と比べて読み辛い文章になっていることだろうけど
これが私の、時間内に出せる全力である

と再認識が出来るのは
未来の為になると思う
今の実力を知って
将来の為にまた勉強する

今、出来ないことすら楽しめ

というのが修羅場に向かう為のマインドなのでは
と勝手ながら感じている

開き直りと言われればそれまでだけど


記事内にnoteのリンクや画像を使う許可をいただいた皆様ありがとうございます
最後にこの修羅場脱出で関わった全ての人たちへの
感謝をこのスタッフロールに託して終わりたいと思います





オチのようなもの

修羅場脱出を終えた翌日2月5日
緊張感から解放され
友人との食事に向かう自分の元に
一通のメールが届く

「運休のお知らせ」

みなさんご存知の通り
2月5日の東京は
大雪と雷が猛威を振るい
交通機関は遅れが生じ
高速道路はほとんど通行止
夜行バスは軒並み運休の憂き目にあった
「修羅場からの脱出」を終えた自分は
今度こそゴールの見えない
「関東からの脱出」に挑むこととなったのだった

帰るまでが修羅場でした!

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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