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2023年印パ旅行記④(ラホール編その2)

 ラホール2日目の午前は自由行動。というわけで、早速町へ繰り出してみた。最初に目指したのは、2020年に開業したばかりのパキスタン初のメトロ・オレンジラインだ。

ラクシュミー駅入口。
近代的なプラットホーム。
切符はトークン式。

 中国の出資で建設されたオレンジラインは、駅構内や乗り方など、全てが中国式。個人的には初めて乗る気がせず、非常に使いやすかった。ラオスの高速鉄道しかり、パキスタンのメトロしかり、中国の影響力の広がりを感じさせる。

あまりにも中国すぎる。

 メトロを降りた後はぶらぶら町歩き。午前9時台では路上に出ている屋台は少ない。まだまだ早朝ということだろうか。

車通りはまだまだ少ない。
砂利を運ぶロバ。
ラホール門前の風景。
路地を行き交う人々。
猫。
この路地は奥に野良犬が陣取っていたので泣く泣く引き返した。

 地図を頼りに路地を行ったり来たりしながら、何とかワズィール・ハーンのモスクに辿り着くことができた。この日は一般開放していたため、中に入ってみた。

内部も壮麗。
壁面の絵画も美しい。
モスクの猫。
モスク近くのスパイス屋の風景。

 旧市街を後にしてCareemでタクシーを呼び、郊外の陸軍博物館へ向かう。Googleマップで異様な数の口コミがついており(しかも軒並み高評価)、気になっていた場所だ。

インドから鹵獲された戦車。

 この博物館は広大な敷地に戦車や戦闘ヘリなどの兵器が展示されている屋外エリアと、博物館本体に別れている。屋外エリアで撮影をしていると、ちょうど遠足か何かで博物館を訪れていたとおぼしき少年に声をかけられた。
少年「どこから来たの?」
筆者「日本から」
少年「一緒に写真を撮ってくれない?」
こうなるとパキスタン人は止まらない。少年は日本人がいるぞと周りの友人たちに声をかけ、しまいにはスターのごとく現地の少年たちに囲まれて写真を撮られる羽目になった。ラホールといえどまだまだ外国人観光客は珍しいようで、特に単独行動時はこういうことが頻繁にあった。

館内の様子。オーディオガイドもある。
パキスタンの立場が垣間見える。
サムライ。

 この日は暑さが厳しく、午後も屋外での観光が見込まれたため一旦ホテルに戻ることにした。迎えに来てくれたCareemのドライバー氏は筆者と歳が近く、英語が堪能だったので色々と話し込んでしまった。「一人でパキスタンに来るなんてクレイジーだ」、「日本は今は冬なのか」、「ウルドゥー語は話せるか」、「パキスタンで何を食べたんだ」など、質問攻めに遭っていたが、彼の漏らした次の言葉は考えさせられるものだった。
「パキスタンでは自由に職業を選択するのは難しい。自分は生活のために10代の頃からこの仕事をやっていて、転職することは容易ではない。君たちには選択の機会があるだろう?パキスタンではそうではないんだ」
 日本で職業や学歴選択の自由が完全に保障されているかどうかについては議論の余地があるものの、少なくとも彼の目には豊かで自由な国に映るのだろう。彼の言葉に、筆者は何も返すことができなかった。

 午後からはガイドさんと合流し、ラホール市内観光に向かう。最初に訪れたのはラホール博物館だ。

博物館外観。
内部はかなり広い。
巨大な水差し
かの有名な釈迦苦行像。
石造ストゥーパ。釈迦苦行像と同じくシクリにて出土。
かつてはラホール市街地にあったヴィクトリア女王像。
中国現代芸術の特別展も。両国の関係性が垣間見える。

 ラホール博物館は1865年に開館、1894年に現在の位置に移転してきた。パキスタン随一の展示内容だそうで、実際仏像をはじめとする仏教関連の展示やシク教、ジャイナ教などその他の宗教に関する展示、英統治下のパキスタンの様子がうかがえる展示、現代イスラーム美術などそのカバー範囲は非常に広い。ラホール観光では外せない場所のひとつだろう。

 博物館の次は、いよいよラホール城とバードシャーヒー・モスクだ。

城とモスクは隣接しており、周辺は大きな公園になっている。

 公園の駐車場で車を降り、電動カートで敷地内に入っていく。今回はモスクから先に見学した。

モスクの入口。既にデカい。
向かいにはラホール城の門が見える。
あまりにも大きくて写真だと伝わりづらい。

 バードシャーヒー・モスクはムガル帝国第6代皇帝アウラングゼーブによって建てられた、ムガル最大のモスクだ。10万人が一度に礼拝できるほどの広さを誇り、ムガル帝国の栄華を想像させる。
 上の写真右端に写っている水で濡らしたござの上を歩いて見学するのだが、それほど幅がないため人とすれ違う際は石の上を歩かなければならない。モスクでは靴を脱がなければならないため、夏場に訪れる際はやけどに注意されたい。

モスクからの風景。奥の塔はミナーレ・パキスタン。
緻密な装飾。
ドーム内から入口を臨む。

 続いてラホール城を見学。この時点で筆者は半ば熱中症になりかけていたが、気合で乗り切った。

門に近づくと一層の巨大さを感じる。
城門前からモスクを臨む。
象が通れる道。
モスクとシク教寺院が近接していることがわかる。
柱の上に象の装飾があり、ヒンドゥー文化を感じさせる。
布告の際に使われた場所。

 ラホール城が最初に築かれた時期は定かではないが、現在に残っている城内の建造物はほとんどムガル帝国時代に建てられたものだ。アクバル以降増築が繰り返されて今に至っている。昨日訪れたシャーリマール庭園とともに世界文化遺産に登録されている。

 ラホール城観光を終えた後は、休憩がてらアナカリ・バザールへ。実は午前中にも訪れていたが、前述のとおりあまり店が出ていなかった。この時はほとんどの店が開いており、大盛況という感じ。

相変わらずバイクがビュンビュン通る横での食事。
プーリー。中は空洞になっており、野菜などを詰めて食べる。

 本旅程の最後は意外にもショッピングモールだった。日本のものとも遜色のない巨大なショッピングモール、その名もパッケージ・モールだ。

大き目のイオンぐらいのサイズはある。
様々な店舗があるが、知っているブランドは少なかった。
シネコンもある。

 パキスタン在住でもない限り、郊外のショッピングモールにわざわざ行く機会はほとんどないと思われるので、良い経験になった。広さやテナントの数などは先進国のそれと遜色ないように見えたが、グローバルブランドの出店は少なく、ある意味珍しい光景かもしれない。一方ミニソウが出店している他、おもちゃなどは中国製品も数多く並んでおり、中国との経済的なつながりの強さをここでも体感することができた。

 フードコートで軽食休憩をとった後(パキスタン人はやはり食べることが好きだ)、空港へ。長いようで短かった西南アジア周遊も終わりが近づく。

まさかのパタパタ式時刻表。

 空港前でガイドさん・ドライバーさんと別れ、帰路に就く。後から知ったことだが、ガイドさんはパキスタンの某国立大学日本語学科の教員だそうだ。日英両言語に堪能で、滞在中は非常にお世話になった。ドライバーさんはあまり英語が話せないのか無口に見えたが、ちょこちょこ「この料理はおいしいか?」、「セレモニーはどうだった?」などとこちらを気にかけてくれた。両人にはこの場を借りてお礼申し上げたい。

 俗に「世界三大うざい国」のひとつに数えられるインド、そして「未知」の国パキスタンを短い期間ながら旅行してみたが、どちらも得るところの非常に多い旅だった。両国ともまだまだ行ってみたい場所がたくさんあるし、その気も高まってしまった。今度はあまり暑くない時季に、またあの独特な空気を持つ両国を訪れてみたい。


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