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日記#03│呑んではいけない日の酒

9月1日から東京に行く。だからそれまでに仕事を片付けておかなければならない。それに加えて、今日は忙しい月末なのだ。締切もあれば打合せもあるし、取材もある。忙しい。ああ忙しい。

なのになぜ、私は夕方からワインを呑んだんだろう。しかも酔いどれながらこのnoteを書いている。まじで意味がわからない。いや待て、全否定するな。意味はあった。振り返ろう。

最近、自炊が続いている。自炊が日常に溶け込んでいる健全なご家庭の方々はこの言葉に「?」と首をかしげるだろう。私の食生活と言えば、ちょいと忙しくなればコンビニ飯が続き、さらに忙しくなればモンエナとコーヒーしか摂取しなくなるのだ。ほぼ1カ月自炊が続いていることは奇跡に近い。

そうすると、冷蔵庫に食材が居座ることになる。私はもともと計画的ではないし、レシピも考えずに気分で食材を選んでくるものだから、組み合わせが悪い食材が冷蔵庫に残ってしまうこともしばしばある。この日常に中長期の東京滞在という予定がかぶると、「数日後までに冷蔵庫の中を空にする or 食材に少なくとも火を通す」という私にとっては難度の高い緊急ミッションが発生する。

今回は野菜が多めだった。お気に入りのワイン居酒屋・チャンネルで食べた白茄子のフリットを再現したくて購入した白茄子、近所の道の駅で安く売られていた大根、ピーマン、あとはスーパーに行けば毎回手癖で買うしめじとえのき。魚を冷凍したやつはまだもちそうだが、せっかくだから食べちゃおうか。そういえば、庭のトマト赤くなってたな。大葉とバジルもふさふさだ。採ってこよう。

庭の野菜や葉っぱ類を採ってきて、ごろごろと冷蔵庫から食材を取り出す。次にGoogleの検索窓に目の前の食材の名前を打ち込んで適当なレシピを選ぶ。最近はレシピを検索するとすぐクラシルのアプリに飛ばされる。クラシル、強いな。

料理をしている間、なんとなくさみしいからNetflixを起動する。最近観ていたのは、「スキップとローファー」というアニメだ。めちゃくちゃいいからみんな見てほしい。これはまた別途、推し記事を書きたい。

おだやかな高校生活を描く物語を横目に、雑に食材を包丁で切って、フライパンに放り込んで炒めたり、その下で魚をグリルしたりする。おいしそうな匂いがたちのぼってくると、胃がきゅうきゅう鳴き始める。私の脳はおかしくて、空腹を伝えているはずの感覚を認識した瞬間、なぜか酒が飲みたくなる。

そう、冷蔵庫の中に残っているのは食材だけではない。日本酒2本とワイン1本(※開封済)がスタンバイしていることを、私は先ほど自分の目で確認していた。

いやあ、東京行ってる間に美味しくなくなっちゃうよ。呑んでおこう。

食材を熱している間のわずかなスキマ時間を与えたが最後、私の手はワインを手繰り寄せて、どくどくとデカいグラスに注いでしまう。

キッチンで料理しながら呑む酒って、なんでこんなに美味いんだろうな!!

いや、もちろん大切な人と味わう酒は美味い。外食しながら呑む酒も美味い。でも、でも。すこし空腹な状態で、まさにたった今おいしくなりゆく食材と香辛料の匂いを吸い込みながら、「はやく食べたいっ」とあふれ出てくるよだれと共に楽しむひとり酒が、はちゃめちゃに美味い。

今日、めちゃくちゃ頑張って朝から仕事してたんだよ。記事の編集をして、書いてるライターさん本当に文章の構成が素晴らしいなって拍手して、自分も記事を書いて、2時間の取材をして……。頑張ってたよ。

そうやって「いま酒を呑んでも許される理由」を頭に浮かべて、それを即座にアルコールで溶かしていく……この快楽よ。だめなときに呑む酒って禁断の味がするよね。美味しい。

自分が好きな味付けにしているから、まあ最高においしい野菜のつまみを食べながら、「スキップとローファー」を最終回まで見終えた。ほんっと、なんていい作品なんだよ。これほど何気ない日常を描いていて味わい深い作品、めったにないんじゃないか。

私もまた、何気ない日常を送っている一人の人間だ。「ああ、だめなのにお酒呑んじゃう~」とか頬そめながら、明日猛省している自分も想像できる。何度もおなじ過ちを繰り返すから、きっと死ぬまで人生に飽きることはないんだろう。

明日の私が頑張るさ。そう言い聞かせて酔ったまま沈み込むベッドの香りが好きだし、ほんとうに頑張れる自分も好きなんだ。今日はこのしあわせをかみしめて、眠ってしまえ。

読んでいただき、ありがとうございました!もしコンテンツに「いい!」と感じていただいたら、ほんの少しでもサポートしていただけたらとってもとっても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。