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夏至に舵を切る

 朝起きてすぐ見たLINEで、元旦那が勤務先の大学の契約更新をしないことを知った。

 もともと私は五年前、元旦那について中国に行き、ついでに仕事くれよという感じで、初等教育学部の絵の先生→観光学部の日本語の先生→日本語科の先生→日本語科の専任とポジションが変わってきた。

 離婚した時点で、もう元旦那のいる大学は辞めようと思ったらコロナになり、外に出ないでできるオンライン授業は好都合だったので日本でずっと授業を続けてきた。同時に転職についてもずっと考えてきた。

 しかし元旦那が辞めたことでもう彼を理由に辞めるという選択もなくなった。

 今初めて離婚が成立したような、不思議な0感覚。
 いつか中国の大学に戻ったら絶対また顔を合わせることになると思っていたし、職場が同じなので、完全に切れた感覚がなかった。

 寂しいとかはなく、なんていうか、ああ、これで本当に終わったんだなぁ……。

 自分も新しいスタートを切る時だ。
 一週間前の契約更新の手続きもなんか止まってるし、めんどくさいからとりあえず辞めるか!みたいないつもの極端発想に。

 しかしここで私のメンターともいえる友人のご助言が。

 それは契約更新することで得られるメリットをまず考えようということだった。

 「とりあえずの収入の継続」

 今のところ私の収入源は大学の給料だけなので、仕事辞める=無収入になるということだ。

 普通は次の仕事が決まってから辞めるものだけど、私の場合、「何かを手放さないと何かが入ってこない」という考えがあるし、惰性と安定をいつも恐れている。

 しかし、いろいろ仕事してきた中で、教育が自分に向いているというのがわかってきたところでもあるし、友人が言うように社会的身分と信用度という点で考えても大学の先生とフリーターは違うんだろう。

 これ、高校教師だった友人も以前言っていた。
 結婚して専業主婦になった子育て期間、社会での扱われ方が変わったと。   
 ずっとフリーターみたいな感じで職を転々としてきた私には、これよくわからなかったけど、今の仕事に就いてから、確かにある一定数の人の態度が変わった。
 もしかしたら世の中ってそういうものかもしれない。
 私があまりにも学歴や仕事を気にしなさすぎなのかもしれない。
 
 そうか、そういうメリットもあったか……。

 何より友人の言う通り、まずは継続してほかにいいところが見つかったら転職というのがいいのかもしれない。

 そして目先の面倒さに契約更新を投げ出そうとしているように見えるとの的確過ぎる指摘も受けた。確かにその通り。私は前回の記事にも書いたように手続きとか書類を整えるとか事務作業的なことが超苦手で嫌い。目先の楽をとりがち。

 そもそも私はこの大学の仕事、収入が低い以外にそれほど不満はない。

 よし!めんどくさくても契約更新しよう! 必要な手続きは一つずつやろう!

 そう思って、大学の担当者に連絡したら、チャットの中国語を読み間違っていたことがわかり、契約更新はあっさり進んだ。当面はまたオンライン授業の継続だ。でもこれで収入が絶たれることはなくなったし、夏休みも給料は入るし、スキルアップの勉強に励み、内面を深める作業を進めていくことができる。

 自分でこっちの方向だと決めたら、物事はちゃんとそっちの方に向かっていく。時に全然関係ないと思う方向に進むようでもとにかく何かは動く。

 そして、もう元旦那は関係ない。
 そもそも離婚した後も三年働き続けられたし、パスポートの名前が変わっても契約更新、果ては元旦那は去っても私は継続。
 つまり私は元旦那のついでではなく、それは完全に私の思い込みだったってことがはっきりした。

 成り行きで中国に行って、成り行きで先生になって、惰性で契約更新続けていたけれど、今回初めて自分の意志で決めたという感覚がある。
 
 やってることは前回の契約更新と変わらないし、仕事が変わったわけでもないのに自分で舵を切って船出したというような感覚がある。

 なんかこれで一つのシーズンが終わったというか、例えていうなら海外ドラマシリーズで、職場は変わらないけど登場キャラが変わって話の展開も少し変わる新シーズンみたいな感じ。

 そんなわけで、元旦那がいた頃、一緒に時間を共有した今でも仲良い卒業生二人に、チャットのついでに元旦那が辞めたことを伝えたけれど、二人ともあっさり「そうですか」みたいな感じで、興味なさげ。二人とも「今は連絡もとってないし」みたいな反応だった。

 でも一見薄情な彼らは、私の今回の契約更新のことに関しては超熱心に関わってくれた。片や仕事で忙殺されていて片や妊婦という状況ながらも、私が大学の担当とのやりとりで困っているところを助けてくれた。

 元旦那に関しては興味なさそうなのに私のことは助けてくれるから不思議に思ったら「友だちだから」という答え。

 確かに私は彼らが卒業してからも、彼らの仕事を助けたりもしてきたし、彼らが在籍中の時も個人的に仲良かったし、卒業しても会いに行ったり会いに来てもらったりもした。お互いのしんどい時も楽しい時も知っている。

 そう考えると、最初はどうでも、とっくに自分は元旦那関係なく、学生たちにとっては一人の別の人間だったんだなぁ。

 それもこれも自分に無価値観があるからで、授業評価が全学部総合二位で外人教師一位になっても、学生たちからの支持が高くても、「でも自分は元旦那みたいに大学に招待されてきたわけでもなければ、ついでの先生だし、資格もないし」といじけてるようなところがあった。

 だけど、こだわってたのは自分だけで、誰も私のことをおまけとは思ってなかったんだなぁと改めて思った。

 やはりまず自分というものを確立することが大事なんだと思う。

 そのための時間を作るためにも今収入を絶つわけにはいかないし、生活費を稼ぐことがメインになってしまうと内面強化どころじゃない。

 中国に実際に行くには卒業証明書のほかに無犯罪証明書、さらにはその証明書への外務省の公認証、さらには大使館の認証が必要になると言う面倒さがあるけれど、今のところまだいつ戻れるかもわからないし、今後世界情勢もどうなるかわからない。

 ひとまず私は先生を続けたいという方向に舵を切ったわけだし、今は目の前の学生に対して誠意をもって尽くそうと思う。そのために日本語を教えるためのスキルアップと来学期の授業をさらに楽しくするにはオンラインでどこまで盛り上げられるかを考えてみたいと思う。

 そしてさらに進みたい方向を明確にし、自分軸をしっかりすることに努めようと思う。

 

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