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大人への階段~生まれ変わり~

あたしのお腹の中にきてくれた小さな命とお別れをした後、あたしは中村くんに「別れたい」と伝えた。
中村くんは黙っていた。

その夜、あたしはお姉ちゃんの家の布団にくるまりながら、赤ちゃんがいなくなったお腹に手を当てていた。

高校生のあたしに芽生えていた赤ちゃんへの思いや自分にわいた母性。
もし、この世に生まれ変わりというものが本当にあるのだとしたら、きっとまた赤ちゃんはあたしの元へ来てくれるに違いない。
こんなママだったけど、許してくれるのならいつかまた会える……。

幼稚な考えなのかもしれないけれど、その時のあたしにはそう考えるしか生きていく意味が見いだせなかった。
そして、あかちゃんが同じように戻ってくるためには、あたしは中村くんと別れてはいけないと思うようになっていた。

翌朝、中村くんに電話をかけた。
「ごめん。やっぱり別れたくない。」
昨夜かんがえたあたしの気持ちを素直につたえた。
「うん。ごめんな。辛いおもいさせて。一緒にいたい。」
中村くんは静かな声でそう言った。

その日からもたくさんのケンカをした。
別れたくなるくらいのことも何度かあった。

けれどあたしは数年後、元気な男の子と女の子の双子のママになった。
もちろんパパは中村くん。

本当にもどってきてくれたのだと信じたかった。
いや、いまでもそれが真実だとあたしは思っている。

大人への階段~完~


夜蝶観音

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