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【エッセイ】見る専(Ⅲ)

 対局が終わると双方の対局者は盤上で駒を並べ直して、お互いに悩んだ局面を再現して客観的に分析、検討する感想戦が設けられる。敗者は、相手からの意見を受け入れながら次回に生かせるように負けた原因を省みて、更なる上達を目指すのだ。アマチュア同士で指す場合でも行われ、実はあのとき、こうされたら勝てませんでしたよ、と、正確な読みと本心が明かされ学びの機会が与えられるのにはプロと大差ない。高い目標意識を持っている程、自分が納得いくまで質問を続けるし、きっと、気付きを得る為の聞く姿勢が身についているんだろう。冷静に振り返えることによって気持ちの整理もつく。
 が、訳あってやらないパターンもある。橋本崇載八段は連戦で疲れた藤井七段(現八冠)を気遣い「藤井君もハードスケジュールでしょうから」とパスした。このあたりも含めて将棋界は支え合いの精神で成り立っているんだよな、と思わず感心させられたりする。