【エッセイ】イチョウブラック
電話の側のメモ帳にイチョウブラックと記し、握っていたボールペンのキャップをしめて元の位置へと戻す。なんだか戦隊モノっぽいな、とほくそ笑む。再び画面に視線を送ると、印刷機は諦めずにインクカートリッジの交換を求めている。
本体よりよっぽどインク代の出費がすごい。厄介なのは、全色、残量がなければ印刷が難しいところで、用事があって、早く済ませたいときに限界値を超えたとメッセージが表示されれば、誤って手摺に付いたガムに触れてしまったような気分になる。おい嘘だろ、と。中でも、黒はあからさまに消耗が激しいため足繁く家電量販店に通う羽目に陥る。機種によって必要とするカートリッジは異なるのだが、正式な型番とは別にパッケージに目印となる愛称とそれに伴うイラストが描かれており、簡単に見分けがつく。陳列棚に並ぶ絵柄は亀やけん玉、えんぴつ削りと様々で、バリエーションの豊かさを思い知りつつ、探す。