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「スマートシティにおける当社のビジネスチャンスは!? 」トークセッション③開催報告

近年、スマートシティへの官民双方の動きが活発化しています。
(参考:内閣府地⽅創⽣推進事務局「スーパーシティ」構想について
2020年度の「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」の公布により、「まるごと未来都市」としてスーパーシティ構想もスタートし、国のKPIの1つとして、2025年度までに100地域で都市OS※の導入・技術実装が置かれています。また、9月に開庁したデジタル庁と共同で都市OSの導入促進も検討されるなど、ホットな話題でもあります。
※都市OS:その都市にあるエネルギーや交通機関をはじめ、医療、金融、通信、教育などの膨大なデータを集積・分析し、それらを活用するために自治体や企業、研究機関などが連携するためのプラットフォームのこと

八千代エンジニヤリングでもスマートシティに関連するいくつかの業務に携わっており、サービスの開発・検討を各部所で行っています。
今回はスマートシティ事業に携わっている社員を集め「スマートシティにおける当社のビジネスチャンスは!?」というテーマで議論を行いました。

トークセッション③

モデレーター:平(事業開発本部 開発推進部)
 パネリスト:工藤(事業開発本部 海外事業部
       別府(事業統括本部 国内事業部 社会計画部
       藤井(技術創発研究所
       吉田(事業統括本部 国内事業部 環境計画部

◆パネリスト紹介!

:今日はどうぞよろしくお願いいたします。まずはパネリストの皆様の自己紹介からお願い致します。

吉田:環境計画部の吉田です。「RIAD(River Image Analysis for Debris transport)」という陸域から河川経由で海域に流出するプラスチックなどの浮遊ごみ実態把握を行うシステムの開発・製品化を担当しました。スマートシティ事業にも携わっており、今はRIADを活用したごみのないまちづくりの実現にむけた実証実験に取り組んでいます。また現在、社会人博士課程にも通っており、海洋プラスチックごみに関する研究を行っています。本日は皆様と楽しくお話しができればと思っております。

工藤:海外事業部の工藤と申します。主にODA事業に携わっており、都市や地域の開発事業を担当しています。10年前に東南アジアのスマートコミュニティ導入調査に携わりましたが、10年経ってようやく当社でもスマートシティ事業について本格的に議論する時期が来たのだなと感じています。本日はよろしくお願いいたします。

藤井:技術創発研究所の藤井です。入社以来、情報技術部に所属し、官公庁向けのシステム開発を行っていました。3年前に技術創発研究所ができてからはAI解析研究室でAIに関する研究を行っています。スマートシティ事業では世界的なIT企業が参入しソリューションを導入している事例が多く見られますが、私たちが研究しているAI技術や将来予測技術を使って当社ならばどういったスマートシティを実現できるのかといった議論もできればと思っております。よろしくお願いいたします。

:社会計画部/別府さんにもご出席頂く予定でしたが、業務の都合で急遽欠席となりました。私のほうで事前にお考えなどを伺っておりますので、適宜ご紹介しながら議論を進めさせて頂ければと思います。

◆私たちが考える「スマートシティ」とは?

:早速ですが、スマートシティについて国としては「ICTなどを活用して都市の諸問題全体を最適化して解決する」「市民の暮らしをよくするもの」など、デジタルの活用でウェルビーイングを実現することを最終目的において推進しようとしています。そもそもスマートシティの捉え方について、みなさんはどうお考えですか?

工藤:日本の政府が言っていることは大義名分的にその通りというように感じていますが、計画系の視点からお話しすると、社会というのは資本主義経済の構造の中でいかに便利になるかということを100年以上検討・推進されてきたと思いますが、「スマートシティ」というのはそんな単純なものではないと感じています。「都市」というのは「人が生きるシステム」だと思います。本来は人々がお互いに助けあったり補いあったりすることで人間の便利さがつながり、社会活動が生まれるということが、本質的な都市のあるべき姿だと思います。このような人同士の活動を支える社会の受け皿となるようなものが本当に「スマート」な都市の形ではないかと捉えています。

:工藤さんのおっしゃる「都市の形」というのは従来のまちづくりとは違うものなのでしょうか?

工藤:これまで世界では、どこの国でも基礎インフラを整備し、全員に対して平等な社会サービスの提供を目指してきました。今はその一歩先で、市場がプラスアルファの「何か」を生み出している状態であると言えます。今の「スマートシティ」事業というのはそもそも製品ありきであり、「人々のニーズ」が起源になっているのではないと感じています。つまり資本主義経済をいかに活性化させるかということが事業の主眼に置かれているのではないかと思います。いつでもどこでも美味しい水が飲めるようになりたいということでペットボトルが作られ、それが今では「プラスチック問題」となっているというように「便利」を求める時代には「環境問題」が課題となります。「便利さ」と将来降りかかってくる「課題」を天秤にかけて、何が本当に必要なのかを企業側ではなくコミュニティ側の視点で適正に判断することが重要だと考えています。

:今「スマートシティ」が世の中で盛り上がっていますが、色々な地域で行っていることが「技術を導入する」ことにフォーカスされており、本来注視するべき「人」が置き去りになっている部分もみられ、問題と感じているということですよね。先程、「人々が助けあう」といったお話しもありましたが、当社がおこなっている「RIAD」の取組みは河川ごみの把握というところから始まり、最終的に市民目線の暮らしやすさを目指していると思います。吉田さん、このあたりのお考えはいかがですか?

吉田:今、ペットボトルが世界規模の環境問題となっていますが、ペットボトルというのは耐久性も優れ、低コスト・大量生産可能とすごい技術だと思います。ただ、浮遊プラスチックごみ密度がSDGsのグローバル指標にも示されたり、メディアでも海洋プラスチック問題が取り上げられたりと、市民ベースでも課題として幅広く知られています。この「課題として幅広く知られている」状態というのは、工藤さんが仰っていた人々が助け合って補う社会の達成に近づきやすく、同意形成も取りやすい状態であるとも感じています。こういったものだと具体的なアクションを起こしやすいのではないかと思います。

:藤井さんは「GoganGo」はじめ様々なプロダクトを研究されていますが、そこからスマートシティへのつながりとして意識していることはありますか?

藤井:研究所での取り組みとしては、私がメインで携わっているAI解析研究室ではどちらかと言えば個別の「便利さ」を追求しているものになるかと思うのですが、シナリオ解析研究室では中長期的な目線で人々の幸せを実現するスマートシティの研究を行っています。AI解析研究室で取り組んでいる「GoganGo」などは個別のタスクにはなりますが、研究所が研究している様々なプロダクトを組み合わせれば、スマートシティにつながるといったイメージを持っています。

◆そこに当社のビジネスチャンスはあるのか?

:現状のまちの在り方として分野ごとに縦割りがあり、それが故、新型コロナウイルス感染症を契機に様々な問題が浮き彫りとなりましたよね。スマートシティでは分野を横断して様々な技術を組み合わせ総合的にどうやって課題を解決していくのかといったことが重要になると思います。パネリストのみなさまのスマートシティに対する捉え方を聞くことができましたが、本題である「当社のビジネスチャンスはどこにあるのか」議論していきたいと思います。スマートシティには同業他社に加え、戦略コンサルや各業界のサービス提供者などのプレーヤーも参画してきている中で、我々としてはどこにチャンスを見出すことができるのでしょうか?

工藤:より良い社会を考える上で、人間が健康的に笑顔で生きていけるように発想することが大切です。その場の問題だけを見て対策を実行するから次の問題がすぐに起こってしまうのだと思います。ウェルビーイングや生活の豊かさを中心としたまちづくりを前提に考えた際は、当然ながら各インフラに求められることも異なってきて、国、地域によっても違うし、プレーヤーのアプローチによっても変わってくると思います。スマートシティには大前提としてインフラ整備の専門性を有する当社のような存在が必要になることは変わらないと思います。その部分において当社にもチャンスがあるように感じています。

:そうですよね。一方で別府さんとも事前に話をしたなかで、従来の建設コンサルタントとしての仕事のやり方ではなく、コンサルとデジタルを組み合わせることやコンサルの中でも各領域で行っていた業務を連携して価値を高めていくことが必要ではないかと仰っていました。

藤井:当社は道路グループ、環境グループなど分野によってグループが分かれていますが、それは官公庁の体制を踏襲しているからですよね。そもそも人間は一人でそんなにたくさんの分野の深い知識を持つことは難しいから人間のできる範囲で分野や領域が決まっていたのだと思います。別府さんの仰る通りデジタルデータが増えてきて機械的に処理ができるようになってくれば、分野を跨いでより良い生活を実現できる可能性が出てくるのではないでしょうか。ここ数年で例えば維持管理と防災を合わせて1つのデータソースから実現できる解決策を考えることや、道路のセンサーから得たデータを基に管制だけでなく、維持管理や防災に使うなど複合的なデータの利用が実現できるような土台が揃ってきているように思います。
個人的には、市民の目線でニーズを見つけることができたら、ビジネスチャンスになるのではないかと思います。具体的にいうと、人がやっている作業をIT活用して早くできるようになるというだけでは、同じ作業を行っていることにすぎず、縦割りという考え方を排除し分野を横断して人にとって幸せとは何かと考える力があれば、そこが当社のビジネスチャンスにつながると思います。

:目先にとらわれず本質的にあるべきビジョンを描きながら技術を適用していくことが重要ですよね。

藤井:個人的な考えですが、当社は土木の技術者が多く在籍しており、その土木の技術者がITの基礎技術も持ち合わせているということがアドバンテージになると考えています。ITに関係する部分を外部に委託するのでは、その先に発展しないと思います。逆にITベンダーが土木やまちづくりの知識を身につけて乗り込むにしても、そう簡単ではないと思います。本当の意味で市民や行政のニーズに即したスマートシティを実現するためには当社のような建設コンサルタントが適しているのではないかと思っています。

吉田:スマートシティを考える上では市民の課題・ニーズを正確にとらえていくことが重要で、そこにチャンスがあるというのは私も同感です。

:当社ではまさに今の議論の推進を目的としており、様々な専門性をもった私たち社員が分野を跨いだ連携や先端技術の活用検討、社外との連携、外部環境との情報共有などをしていく必要がありますよね。また吉田さんの仰っていた世界的に問題となっている課題といかに結び付けていくのかということも重要なのだと感じました。今後はどうやってそのチャンスをものにしていくかという議論を社内でしていければと思います。

◆スマートシティにかける意気込み

吉田:スマートシティという幅広い分野で、今私がやっているRIADから少し踏み込んで防災やドローンの活用なども挑戦したいと思っています。また都市OSの方とも議論できる状況にも恵まれているので、スマートシティというキーワードをより肌で感じながら勉強していきたいと思います。

藤井:研究所で今取り組んでいいることは個別のタスクに特化したソリューションになっているので、今後はそれらをスマートシティに関連させ寄与できればと思っています。先程お話しした土木技術✕デジタルという両方の知識を兼ね備えるということですが、今後も研究所から技術部所へ水平展開して当社の課題解決力(コンサル力)の向上に努めたいと思います。

工藤:スマートシティの分野において、当社は既に出遅れているかもしれません。その中で中長期的に起こりうる社会の変化や未来の課題を見据えて自分たちのスタートラインを理解し、ビジョンを作っていく必要があると思います。そういった面では、出遅れているからこそやりやすいというメリットもあると思います。SDGs・スマートシティなどをトレンドとして捉えるのではなく、本質で理解することが重要であり、私たちとは違う視点をもった若い世代にもどんどん入ってもらって、スマートシティの理想像を一緒に作っていければと思います。

:スマートシティ像というのはまだ固まっておらず、チャンスにあふれている分野でもあります。その中で新規に開拓していくような取り組みに対しても、積極的にチャレンジする気持ちでやっていきましょう!本日は、ありがとうございました。






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