なぜ、ベネズエラ?(情報の読み方)

2022年04月19日の読売新聞(14版・西部版)外電(国際)面に、「ベネズエラ人道危機/政情不安600万人国外へ」という見出し、記事がある。いま、世界中がウクライナの人道危機に注目している。読売新聞も1面で「露、300か所にミサイル/標的拡大 リビウ死者7人」とトップ記事で報道している。ウクライナの状況よりも伝えなければならないベネズエラの問題とは何だろうか。
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 南米ベネズエラから国外に逃れる避難民がここ数年急増し、人口の2割となる600万人に達した。世界有数の産油国にもかかわらず、政治的、経済的な混乱で暮らしが困窮。国際社会は支援に及び腰で、「忘れられた人道危機」になりつつある。(チリ北部コルチャネ 淵上隆悠)
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 「忘れられた人道危機」、つまり「忘れてはならない」という警告なのだが。
 それはそれでいいが、私はこのルポを読みながら、まったく違うことを考えた。このルポからは、ベネズエラの「今の危機」というよりも、「これからの危機」、もっとあからさまにいえば「ウクライナ以後の危機」が起きることを予告している。書いた淵上隆悠は意識していないだろうが、今後起きることが、予告されている。(もちろん淵上隆悠の狙いは「予告」ではなく、ベネズエラ政権への批判なのだが……。)
 このルポのいちばんの問題点は「世界有数の産油国にもかかわらず、政治的、経済的な混乱で暮らしが困窮」と書きながら、ベネズエラの「現実」が書かれていない。ベネズエラから脱出した難民をチリで取材して書いていることである。チリはベネズエラから遠い。なぜ、チリまで? ということも書いていない。
 逆に、
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 昨年、チリ警察が摘発した不法入国は前年の2倍強となる1万6879件で、大部分をベネズエラ人が占める。殺人に加担し逮捕された例もあり、国内では治安悪化への懸念が高まる。
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 という奇妙なことが書かれている。難民支援というよりも、これでは、難民によって遠く離れたチリでさえも「治安悪化」が起きている。大問題だ、というわけだ。これは、どうみても「難民」の立場に立ったルポではないね。
 では、何が狙いなのか。
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 ベネズエラは、14年間続いたチャベス政権を13年にニコラス・マドゥロ大統領が継ぎ、反米左派路線が維持されている。19年、独裁的な政権運営に反発した野党指導者が暫定大統領への就任を宣言するなど、避難民急増の背景には政治の混乱と経済の破綻がある。
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 マドゥロの「反米左派路線」が原因であると読売新聞はいいたのだ。マドゥロと野党との対立が「政治の混乱と経済の破綻」を引き起し、それが難民を急増させている。
 政治的対立のことは具体的に書かずに、読売新聞は、こう書いている。
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 原油は世界最大の埋蔵量を持ちながらも、米国などの制裁で輸出が厳しく制限されている。ハイパーインフレで物価上昇率は18年に10万%超に達した。1日2ドル(約250円)以下で暮らす「極度の貧困層」が、国民の76・6%を占める。
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 この部分を落ち着いて読めば、「経済破綻」が与野党の対立ではなく、アメリカの経済制裁が原因だとわかる。「世界最大の埋蔵量」の石油を抱えながら、輸出が制限されている。そのためにベネズエラには金が入ってこない。これが「貧困」の最大の理由である。版アメリカ政策がいけないのだ、と読売新聞はいいたいのだ。しかし、マドゥロが石油を売った金を独占しているわけではないのだ。石油があるのに売れないから貧困が拡大しているのだ。原因は、むしろアメリカのベネズエラ敵視政策にある。そう書かずに、あくまでもマドゥロに責任を負わせる。

では、なぜ、いまこの記事が書かれたのか。
 これからは、私の「推測/妄想」である。ロシアの石油、天然ガスの「輸入」をアメリカ主導で、世界中が拒んだ。どうしても石油が足りなくなる。この石油不足を解消するにはベネズエラの石油に頼るしかない。でも、ベネズエラに対しては、やはり「経済制裁対策」がとられている。どの国も「輸入」できない。
 どうすればいいか。
 マドゥロの「反米左派路線」をやめさせる必要がある。マドゥロを追放する必要がある。アメリカの資本主義にそった形でベネズエラの石油を流通させる必要がある。
 でも、どうやって? 「難民」問題を取り上げ、マドゥロを批判する。マドゥロは、ベネズエラのプーチンだ、という「見方」を世界に広める。ウクライナの難民と重ねて報道すれば、マドゥロへの批判が高まる、ということを狙っている。
 でも、どうして、アメリカはマドゥロの「反米左派路線」に経済制裁を加えることになったのか。
 私はそういうことをきちんと調べたわけではないからテキトウに書くのだが、ベネズエラが「世界最大の埋蔵量の石油」を周辺国に安く売ってしまうと、諸外国のアメリカへの依存度が低くなってしまう。アメリカの言うことを聞くより、ベネズエラの言うことを聞いた方が石油が安く手に入る。脱アメリカ追随。この方が経済発展にも役立つ。中南米諸国がそう考えるとき、ベネズエラの「地位」が相対的に高くなる。アメリカの価値が相対的に下がる。これをアメリカは許せないのだ。ベネズエラに金もうけをさせるわけにはいかない。これが、アメリカの「狙い」である。
 これは、アメリカのロシア対策も同じでである。ロシアがパイプラインを建設し、ヨーロッパへ天然ガスを安く売る。日本へも安く売る。ロシアとヨーロッパの経済交流が活発になる。つまり、アメリカがヨーロッパで金を稼ぐ機会が減る。それを封じるための「経済制裁」。アメリカの利益を優先させる。最終的には、ロシアの石油、天然ガス、小麦などの「資源」の「流通経路」をアメリカ資本主義の下に組み込み、支配する、ということろまで進めたいのだと思う。

ここからである。
 アメリカ主導の「経済制裁」がロシア(ウクライナ)で成功すれば、次は、南米で同じことが起きる。ベネズエラへの「経済制裁」をさらに強化し、ベネズエラの「石油」をアメリカの支配下に押さえる。アメリカが、その「流通経路/価格」を決定する。そういう世界をアメリカは狙っている。
 私は、そこまで「妄想」してしまう。
 アメリカが狙っているのは「アメリカ資本主義」の「世界制覇」である。すべての「経済」をアメリカ資本主義のもとに統一する。
 だから、いまアメリカの最大の競争相手である中国には、台湾問題をちらつかせて、脅しをかけている。「台湾有事」の「前哨戦(予行演習)」が「ウクライナ有事」である。そして、「台湾有事」をすぐに起こしてしまうのはかなり危険なので、ウクライナの後は、ベネズエラで「予行演習」をしてみよう、というのがアメリカの狙いである。そのために、自民党べったりの読売新聞を通じて、ベネズエラを「難民」を生み出す問題国としてアピールし、それを解決するという「名目」作り上げようというのである。
 ロシア制裁(ロシアを国際経済から追放)のあとはベネズエラ追放である。次に問題が起きるのは、「南米」である。そのことを読売新聞の記事は「予告」している。中国も問題だが、「地理的」にもっとアメリカに近いベネズエラ。そこをまず支配し、体制を固めた上で、最終的に中国をも支配する、というのがアメリカの狙いである、ということを読売新聞は教えてくる。
 読売新聞は、記事を、こうしめくくっている。
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UNHCRによると、ベネズエラ避難民を保護するため、22年は7億8000万ドル(約980億円)が必要だが、これまでに集まったのはわずか8%。国際社会では、ロシアの侵攻に伴い、ウクライナ避難民を受け入れる動きが広がる。
 「私たちを忘れないでほしい」。自由と豊かさに向けて逃避するパルガスさんの叫びが耳に響いた。
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 チリまで脱出した「難民」によりそうふりをしている。ベネズエラの「自由と豊かさ」は、アメリカが経済制裁さえ取らなければ、可能だったかもしれないということを指摘せず、アメリカの主張をそのまま垂れ流している。ベネズエラが、自由に石油を輸出さえできれば、経済は急激に改善するだろう。そういうことに目をつむっている。
 世界中で石油が高騰するいま、アメリカがいちばんほしいのはベネズエラの石油であるということを間接的に「証明」しているともいえる。金儲けのためなら、なんでもする。それがアメリカ資本主義だということを、忘れてはならないと思う。
 資源をもたない日本の物価はこれからどんどんあがる。円安も加速する。「資源大国」のアメリカだけが、もうかる。これが、これから永遠に続くのだ。

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