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私の光る君へ15

〜大河ドラマ『光る君へ』第15回「おごれる者」雑感〜
 今回の白眉は、一にも二にも、「道綱母先生」とまひろの対面です✨
 二人が並んでいると考えただけで、国文学を学んだものとしては、感激で胸がいっぱいです。まひろちゃんもそうに違いありません。
「妾の哀しみを癒すために書いた」という、有り難い、胸にくる言葉もいただきました。
「あの人(兼家)は、私の日記が広まるのを少しも嫌がらなかった」という言葉も、伏線的に大事でしょう。
 兼家と道綱母との関係は、道長と紫式部の関係に相似になるように、制作立てられている、と思います。
 
    今回も出だしは、まだ990年。井浦・道隆は、高畑・定子を中宮にし、四后並立という異常事態(注:可能性として、政治的に帝に物申せる妃が4人もいる…)を作り出しつつ、最も口を出しそうな帝の母・皇太后、妹でもある、吉田・詮子を職御曹司(注:宮殿の外、廊下伝いに来れない❢宮内庁みたいな所…)に移してしまう。あぁー、道隆さん、先が見えないのね、と言えるのは、こちらは歴史を知ってるから。でも、やはり、妹、吉田・詮子の機嫌を取るに越したことはないですよね、皇太后さまですもの。

 玉置・道兼は、町田・公任の家に3日も居座り、ぐでんぐでん。仕方なく迎えに行った、柄本・道長のかける言葉の、全てが優しい。(まひろ母を殺した、ろくでなし兄なのに…)13歳も違う道隆兄より、5歳違いの道兼兄の方が、育った記憶として、近しく、身寄りになれたのかもしれない、と思うことにしました。
 そして、2年が過ぎて993年になります。
 道隆は、66人もの身内の位を上げ、公卿たちも、宮中の女房たちも、呆れて道隆からも、定子中宮からも、心が離れてしまうようです。道兼は内大臣(正三位)。道長、伊周は権大納言(従三位)。公任と道綱は参議(従四位下)になりました。秋山・実資さんは、これより前からずっと参議のままですが、適切な判断で、道長に何が良くないかを教えてくれます。これがリアルなら(リアルと見たい)、道長のこれからの成長の糧となったでしょう。

 まひろの家では、弟の、惟則(演・高杉真宙)が、擬文章生の試験に受かり、(とにかく生活の当てがそれしかないので)喜びの風景。吉岡・まひろは、全然進めていない自分をより感じています。
 宮中では、大変美しい帝が笛を吹いていらっしゃる。悲劇の帝とも呼ばれる、一条天皇。(演・塩野瑛久)寄り添う高畑・定子。幸せな風景に、哀愁の影がさす。定子の母、道隆の妻、高階貴子(板谷由夏)は、「帝を大切にし、仲睦まじくするだけではいけない」、中宮の重責を担うことを迫る。 
 高畑・中宮定子のところでは、女房に採用された、ききょうに「清少納言」の名が与えられ、次回から『枕草子』ワールドの展開になるでしょう。
 
 ここで、『大鏡』より「弓争い」が出て来ます。ドラマでは、やる気のない道長(叔父)に、伊周(甥)が挑発的に「我が家より帝が出る」なんて言って、結局叔父さんに負けちゃう。何でも一番❢よくできる❢~なんて育てられた〜伊周の、やがて人生を敗北に導いてしまう、困った性格が表現されています。
 この後に、道長はやり過ぎたと言いながら、高松殿で、明子に着替えを手伝わせて、大きなお腹の明子は幸せそうで、ほとんど倫子ベッタリだったという史実を、反転させて、「あらゆる女性に優しい」という「光源氏」に、道長を寄せてきている気がします。
 そこへ、土御門殿から、左大臣(演・益岡徹)危篤の連絡が来て、倫子(演・黒木華)と共に、枕辺で義父の手を握る、柄本・道長。益岡さんの左大臣は、『源氏物語』の葵の上の父の、左大臣は、こんな感じかな~という、気品と落ち着きが、素敵でした。お疲れ様でした✨
 
 今回の大詰め。まひろは、さわ(演・野村麻純)と石山寺への小旅行。宿坊で、道綱母(演・財前直見)との対話があり、そこへ道綱(演・上地雄輔)が現れて、道綱はまひろに目をつけ、さわは道綱に一目惚れ。夜中に、道綱はまひろのつもりで、さわに夜這いをしかけ、間違いだったとひと騒ぎ。これは、『源氏物語』の「空蝉」(と軒端の荻)へのオマージュ。さわは、かわいそうに拗ねて、河原に。河原の大量の遺体は、伝染病の予兆で、これが、道長の人生に、大きな影響に。
 
 こうなるとまひろにいつ紫式部先生の魂が下りてきて、源氏物語を書き出す気になるのか、待ち切れない人も多いはずだが、それが中々歴史は忙しい。
 暫くは、ききょう納言の『枕草子』の世界を楽しむべきなのでしょう。
 とにかく、今年の大河はやたら勉強させてくれる。


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