お見合い日和【戯曲:上演時間5分程度】
お久しぶりです。やぶっちゃんです。
いかがお過ごしでしょうか?
最近の私はNANAを読んだり労働をしたりNANAを読んだりゴロゴロしたりして過ごしています。noteもしばらく書いていませんでした。ゴミ記事ばかり書いていたので殆ど一気に消しちゃいましたが力作(??)は残してます。思いきって有料記事でも書いてみましょうかしらん?しかし私の有料記事なんて誰が読むんだー?!という私の葛藤はさておき、
今月の頭に、日本劇作家協会さんの主宰する『せりふを読んでみよう』のワークショップに四日間参加してきました。
ばりばりの社会派劇団、劇団チョコレートケーキの役者兼劇作家の古川健さんレクチャーのワークショップで、歴史物の戯曲を歴史的背景を理解して読むと芝居はどう変わるか?という趣旨のものでした。
私は劇作家(と名乗るとすごい偉そうウケる)として参加してたんですけど、役者それぞれの読み方に変化があったり別に全然変化無かったり、役者さんの課題発表を聞いてなるほどーと思ったりして有意義な四日間でした。
そのワークショップで渡された劇作家の課題が
・Wikipediaを調べて歴史上の人物が登場する戯曲を書く
・上演時間は3~5分程
というものでした。その時私の書いたものをまんま添付、しかも無料なので、あとすぐ読めるので是非読んでみて下さい。
『お見合い日和』
作・藪内明
登場人物
A男
B男
卑弥呼
まお子
ジョン・レノン
リンゴ・スター
シド・ヴィシャス
伊達政宗
* * * *
舞台は今から50年後の、科学技術が進歩している日本。A男の家。
A男:僕の名前はA男。毎日のらりくらり過ごしている。昔、2020年世界で新型コロナウイルス感染症が流行ってからというもの、定期的に世界全体で新しいウイルス感染症が流行るようになった。ボトックスウイルス、パピヨンウイルス、マヨラーウイルス…まあお陰で今じゃ東京の人口もかつての3分の1だ。
B男登場。
A男:こいつは親友のB男。高校から大の仲良し。卒業して10年経った今も、こうして超インドアな僕のもとにたまに遊びに来てくれる、なんだかんだいい奴。
B男:A男もそろそろ結婚しないの?
A男:だって出会いないんだもん。今年は先月まで三か月も緊急事態宣言出てたし。コブラウイルスのせいで。
B男:国もそろそろ対策してくれよな。でもだからってA男、今のうちに人生楽しんでおかないと、いつウイルスに感染して死ぬか分からないぞ?お見合いとか興味ないの?
A男:お見合いかぁ。お見合いねぇ。
B男:最近のお見合いは色々あって楽しいんだぞ。歴史上の人物とお見合いできる歴史お見合いとかもあるんだからな。
A男:そんなのがあるの?!
B男:ほんと疎いな。
A男:世間あんま興味なくて。
B男:お札の顔も今年で変わるって。
A男:そうなの?!
B男:千円札大島B子だって。
A男:大島B子?
B男:60年前アイドルグループのセンターだった人。
A男:アイドルか…。
B男:常識だろ大島B子。歴史の教科書に出てきたよ。平成を代表する偉人だって。相変わらず馬鹿だな。
A男:…そんな流れで僕はB男に連れられて、歴史上の人物とお見合いできるというお見合い所に二人で行くことになった。ちなみにB男は高校時代、学年1の歴史好きで有名だった。誰よりも歴史に熱い。..ここがお見合い所?めちゃシンプル。
お見合い所に到着。椅子がいくつか並べて置いてあり、それぞれの椅子の前にはいくつかボタンがある。
B男:いいからいいから、座って。
A男、その一つの椅子に座る。
B男:まずこのボタン押してみ。
A男、言われた通りボタンを押す。急に女性が登場する。
卑弥呼:卑弥呼です。
A男:あ、僕A男です。
卑弥呼:弥生時代末期から来ました。よろしくお願いします。
A男:すげーよB男!今どき卑弥呼ともお見合いできるのかよ!すげえよ!!
卑弥呼:あ、私バーチャルです。
A男:バーチャルかよ!B男、どういうことだよ?
B男:ごめん。言い忘れてたけど、実はこれバーチャルの歴史上の人物とお見合いができるっていう、バーチャルお見合いだったんだ。
A男:今時バーチャルでお見合いまでできるんだ。
B男:知らなかった?
A男:知らなかった..。
B男:どうした?
A男:いやただ、僕はさ、こう、生身の人間が良かったのよ...。
B男:泣くなよ。
A男:泣いてないけど....。
B男:卑弥呼が可哀想だろ..。おい、お前のせいで卑弥呼、泣いてるよ…。
見ると確かにバーチャルの卑弥呼、すすり泣いてる。
A男:ごめん….。
卑弥呼:いいんです。私、どうせバーチャルだし。
B男:おいA男!卑弥呼泣かせんなよ!ごめんじゃなくて申し訳ございませんでしただろ!!卑弥呼はな!A男の思ってる百倍は凄いんだぞ!!卑弥呼はな、一人で邪馬台国まとめたんだぞ…魏志倭人伝載ったんだぞ!邪馬台国って言ったらな、当時の国だぞ国!家に年中引きこもってるお前より格上なんだよ。
A男:そりゃあ卑弥呼に勝てるわけないじゃん。
B男:それにバーチャルの女泣かせてるようじゃ、リアルの女に愛されるわけないだろ。
A男:いやしんど。
卑弥呼:A男さんをそんなに責めないであげて下さい。ただ私、普通の女の子の生活に憧れてたんです。結婚して子供を産んで子供を育てて…そんな平凡な暮らし。幼い頃から当然のように巫女として育てられて、女王になってから自由に外にも出られなくて、だからすごくそういうのに、憧れてた..。
B男:かわいい..。
卑弥呼:え…?
B男:俺、卑弥呼ってもっとこう、ジャンヌダルクみたいな強い女想像してたけど、なんだ、か弱い乙女じゃねえか…。
卑弥呼とB男、なんだか異様な空気になる。A男、気まずくなる。ちょうどその時、お見合い所にまお子、入ってくる。
まお子:私もそろそろ結婚したい!
まお子、お見合い所の椅子に座り適当にボタンを押す。男性が登場。
ジョン・レノン:ジョン・レノンです。
まお子:まお子です。
A男:え?ジョン・レノンって、あのジョン・レノン?!僕めっちゃ洋楽好きで、ジョン・レノンの大ファンなんです!
引き続き、もう一人登場。
リンゴ・スター:リンゴ・スターです。
A男:オノ・ヨーコじゃないんだ..。勿論ビートルズもいいんだけど、ここは大のイマジンファンとして、オノ・ヨーコであって欲しかった…。
ジョン・レノン:(まお子を一目見て惚れ)オオ!まお子!まお子!
A男:そこはヨーコだろ!
まお子:なんてフレンドリーなの…決めた、私この人にする。バーチャルだろうが本物だろうが、そんなのどうだっていいじゃない。アーティスティックで情熱的で、少年のような心を持った男性に、ずっと出会ってみたかったの。それに見て、彼の瞳。真っすぐで純粋で綺麗。(そばにいるA男に)そう思いません?
A男:そんな急に客観的な意見を求められても…。
ジョン・レノン:オオまお子ぉ!(情熱的なハグ)
まお子:ジョーン!(情熱的なハグ)
ジョン・レノン:まお子ぉ!
まお子:ジョーン!!
A男:このお見合いシステムほんとに大丈夫なの…。人物認識壊れちゃってるんじゃない?
リンゴスター:僕は用がないようなので帰ります。
A男:え?!待ってよリンゴ・スター!
リンゴ・スター:さよなら、ニッポン。
A男:リンゴ・スター!!
リンゴ・スター、A男を無視して消える。
A男:あ、もしかしてこれって、バーチャル背景みたいに一瞬で人物変えられたりするのかな?(椅子の脇のボタンを押す。)ポチっとな。
また違う男、登場。
シド・ヴィシャス:シド・ヴィシャスです。
A男:セックス・ピストルズの!
シド・ヴィシャスの背後に付き添うように、もう一人登場。
A男:あなたは…?!
伊達政宗:伊達政宗です。
A男:そこはナンシーだろ!
終わり
* * * * *
後日談
古川健さんに、これWikipedia読まなくても書けるんじゃ?と言われましたが、私卑弥呼が何時代の人かとか、魏志倭人伝という単語とか全て忘れていたし、セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスも名前だけ知っててナンシーという恋人がいたとか全然知らなかったからWikipedia読まないと書けなかったよう。
ワークショップ参加者の役者さん方に読んで頂いたんですけどジョン・レノン役の人が歌いながら登場していて良かったです。
なんで最後伊達政宗かというと単純に伊達政宗という名前の音の響きが面白いなと思ったからです。
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