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Iceland Airwavesは一風変わった音楽フェス

今回は、毎年11月に行われる音楽フェス「Iceland Airwaves」について紹介したい。


音楽フェスと言えば、日本ではフジロックフェスティバルやサマーソニック、あるいはつま恋など、夏に行われることが風物詩であるし、他の国でも普通は暖かい時期に、屋外のステージで音楽に興じる、というのが定番スタイルになっている。


しかし、そういう意味ではIceland Airwavesは、いわゆる「夏フェス」とは一線を画する、まったく趣の異なった音楽フェスであることをいわざるを得ない。


まず、開催時期が11月上旬と、日本でいうと秋、アイスランドでは冬本番、といった時期。今回参加したときは、日中の最高気温が5℃あればいいほうで、最低気温は氷点下にいくかどうか。そもそも1日の気温差がほとんどなく、当然ながらしっかりと防寒対策をして参加しなければならない。


もちろん、フェスの会場は屋内で、首都のレイキャビークに数カ所、フェス会場が設けられて、参加者はプログラムに従って、見たいアーティストの会場に移動することになる(街がとてもコンパクトなので、徒歩で数分~20分ほどで移動できるのがいい点)。


そして、開催時間は19時頃から深夜、日付が変わる頃まで。


夏フェスに参加する方であれば「日中にTシャツ1枚ではしゃぐ」というスタイルが普通だと思うので、そういう意味ではIceland Airwavesは、対極をなす音楽フェスと言えるだろう。


フェスのイベント自体は、日中の16時頃から「Off-Venue」という、いわば前座のようなイベントが各会場、あるいは他のレストランやカフェ、パブ(クラブハウス)でも行われ、アーティストによっては、本番の前に20分程度、軽いセッションを楽しむことができる。


フェス本番が夜になってから(この時期、レイキャビークの日没は17時前。ちなみに日の出は9時半頃だ)なので、それまでの時間は参加者が往々にして自分の好きなことをして楽しめる。


フェスの前座を楽しむもよし、カフェやホテルでリラックスして友だちや他の参加者と談笑を楽しむもよし。また、レイキャビークからは日帰りのツアーも多く行われているので、それに参加することだってできる(壮大な大自然を目に焼き付けるものが多いので、ツアーからフェスまで楽しむと体力が持つのか、という問題はあるが)。



フェス本番は、街中の会場でそれぞれの時間帯に始まっていく。会場は市庁舎のホールや教会、カフェ、クラブハウス、そしてスポーツ施設をインスタントに改装した大会場など、本当にさまざま。会場のキャパはピンキリで、小さいところであれば100人程度、大きなところであれば3000人ほど収容できることになっている(公式サイトの情報による)。



色んな会場に共通しているのは、これまたインスタントなバー設備が作られ、ふだんお酒の販売をしていないところでも、アルコールとおつまみを買っておもいおもいの時間を楽しむことができる。物価の高さゆえ、この会場で買うビールが1杯900円(330mLで)という、目が飛び出そうな設定になっているのが痛いけれど、それもフェスの参加費と思って割り切れれば、そんなにたいしたものでもない。


ちなみにもちろろん、フェスの参加チケットは事前に購入しておく必要がある。早割チケットだと、アーティストの顔ぶれが分からないというデメリットがある一方で、10000円を切るくらいの料金で購入することができる。



このIceland Airwaves、言ってみれば街中の施設がクラブハウスになって、静かな、けれども熱い時間が流れていくという、いわゆる「大はしゃぎの夏フェス」とは趣の異なる音楽フェス。


お目当てのアーティストを間近に見るには、開場の前から列の最前列に陣取って待つ、そして数組前のアーティストのセッションから見続ける、ということをしないといけないが、体感気温が氷点下に行くかどうかの空気の中、かじかみながら待ちに待ったアーティストを見たときの感慨は、夏フェスのそれとはまた違ったテイストを醸し出してくれる。


日中は街やレイキャビークの郊外で優雅な時間を過ごし、日が沈んでからはアルコールを片手に非日常の世界に入っていく。


消費をしているんだけど、なぜか精神を耕しているような、そんな不思議な空間が、11月のレイキャビークには存在している。

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