山形県への関係人口拡大と移住定住促進の提言


1 若い世代の移住定住促進
・地方暮らしにあこがれをもってもらい、わくわく感を創出する必要がある
→市町村それぞれに特色を出した移住特典(山形市なら蔵王スキー年間パス、天童なら温泉使い放題、最上町なら暖炉の家など)を市町村と連携して設定し、一覧で提示してわくわく感を創出するとともに市町村同士でいい意味での競争を誘引する
・若い時代は華やかな都会に憧れるのは仕方ないが、それほど毎日飲んだり遊んだりするわけではない。また買い物や文化芸能活動などはネットの普及により都市と地方の差は埋まってきている。ただディズニーランドなどの施設はさすがにない
→地方に住んでいてもたまに東京に遊びに行ければ十分だという意識を醸成し、お金のない若い世代や子育て家族などが都会に遊びに行くことに補助、支援することで、移住定住を促進する
・山形に移住する際に不安なのは雪である
→不便さや大変さも含めた雪の情報発信と、除雪機購入や雪対応の家づくりに対する補助、逆に雪を楽しむ情報発信と特典設定
・高等教育機関、とくに大学が都会に集中していることで、若い世代が都会に流れて、そのまま帰ってこないことが課題。さらに大学の知見に付属するベンチャー企業なども都会に集中(鶴岡の生命先端研を見れば明らか)する。ただ、現在都会にある大学を地方へ、と叫んでも動いてくれないのが現状である
→専門職大学をはじめ、積極的に山形県における大学の創設を促進すべき。確かに人口減少の中での学生確保が課題だが、日本に目を向けるだけではなく、海外からの留学生を受け入れることで海外からの移住も視野に入れた国際的な大学を創設すればいい(その際はなるべく補助金頼みではない、自走できる大学が理想)。また、遠隔教育が進む中、地方にいながらにして東京の大学の単位を取ることが可能になった。都会の大学の山形県サテライト校などを創設することで、地方に住みながらたまに東京に通って大学が卒業できる未来を創出すべき

2 雇用創出と地域愛醸成
・地方の方が所得は低く、希望する仕事がないと言われるが、都会は確かに所得は高いが出費も多い。60才までの平均所得から出費を差し引くとそれほど差がないとのデータもあり、また、仕事に関しても都会にしかない仕事などごくごく限られるし、既存の仕事がどんどん淘汰される近未来、既存の仕事の概念で判断するのはナンセンス
→所得のみで豊かさを判断することなく、自然・子育て環境と食べ物の豊かさ、ストレスフリーの健康な生活など、地方が有利な部分をしっかりと若い世代に発信する。また、山形には世界に通用する企業も多々あり、農業などにも夢があること、SDGsに叶った新たな仕事はむしろ地方にあり、ブルーオーシャンも地方に広がっていることを発信した上で、そうした新時代に対応した仕事創出に支援すること
・20代に東京に出た人でも、ある程度の年齢になったり子育てが始まったり親が高齢になったりすると、地方回帰を考える場合も多い。その際に不安なのは仕事
→30~40代へのUJIターンの呼びかけを強化するとともに、仕事のマッチングと都会での条件(所得など)から下がらないように支援し、さらに独身の人が結婚を機に山形に来るように誘導すべく、結婚マッチングを充実(県内同士にとどまらない婚活支援)する
・あるスポーツで大成しなくても、引退後もそのスポーツに関わっていきたいと考えるスポーツ人材は多い。しかし、そのスポーツだけで生計を立てるのは難しく、またそのスポーツだけで雇ってくれる会社も少ないため、多くのスポーツ人材が山形に回帰しない
→観光や建設や介護・保育などの人材不足の分野でスポーツ人材を受け入れ、副業として地域総合型スポーツクラブなどでスポーツ指導員として働く、その際、中学高校の部活をそこにもっていくことで、本人はそのスポーツにずっと関わった上で所得を確保、企業は人材確保、学校は教師の負担軽減と生徒の競技力向上、地域は人材回帰というWin-Winの施策となる
・地域おこし協力隊は地域活性化に大いに期待できるが、その後の地域定着に向けた雇用が大事である
→新設された地域プロジェクトマネージャー(こちらの詳細は執行部に確認したい)の活用と、地域おこし協力隊が外側の若い視点で地域おこしと仕事が両立できるような公益的な雇用を生み出せるように、創業支援や所得確保を支援する

3 継続的な交流人口(リピーター)を生む観光による関係人口創出
・ただの観光ではなく、体験型や地元の人間しかわからない観光ツールを楽しむような着地型旅行商品を多く作ることがリピーターの確保につながる。その主体としてDMOが期待され県内でもだいぶ組織されているが、なかなか自走できるDMOは少なく、補助金頼みの組織は長続きしない
→自ら着地型旅行商品をつくり、自ら稼いで自走できるDMC立ち上げを促進すること。また、着地型旅行商品で儲けができるようになるには時間がかかるため、その初期段階における補助をすること。
・山形県は山大の重粒子線がん治療センターができることもあり医療の面、自然も豊かなためにクアオルトなど普段の健康維持の面、両面からヘルスツーリズムに可能性を持つ県である。ヘルスツーリズムは長期・リピートが多いことが関係人口創出につながる
→山形市の重粒子をフル活用するとともに、例えば天童温泉などは近隣に人工透析ができる病院があるため、天童温泉に泊まりながら人工透析と観光休養ができる場所であり、県内各地においてこうした利点を活かしたヘルスツーリズムの掘り起こしと受け入れ体制・発信の体制を整えること。さらにバリアフリー化など観光施設の設備投資を促進する補助、さらにはクアオルトなど自然を活かした健康維持の面でのヘルスツーリズムの促進
・コロナ禍において観光施策(とくにインバウンド)はなかなか打ちづらい
→チャーター機などに予算をかけられない分、今のうちに普段はあまり力を傾注できないPR動画の作成や着地型旅行商品の開発など、ソフト面の充実を図り、来るべきインバウンドの復活に備えるべき(コロナ対策)
・コロナ禍においてワーケーションが注目され、都会から地方への誘導、関係人口創出においてはワーケーションの重要性は高まっている。Wi-Fi環境整備やコワーキングスペース設立などももちろん重要だが、ワーケーションの形は様々あり、完璧に環境が整わなくてもすでにあるホテル旅館の設備で十分な部分もある
→ハード的に多く予算をかけるのではなく、ワーケーションに向けて動き出すことが重要で、今ある設備でどのようなワーケーションを受け入れられるかの掘り起こし、ワーケーション受け入れの組織体制とネットワーク化、PRなどのソフト面の充実を促進すること。また、県外の人から来てもらう前にまず地元の人間が山形県のワーケーションを楽しむべきで、特にコロナ禍においては県内企業と連携しながら県内旅館に泊まってのワーケーションを促進する、それに先んじて県職員や教職員などが積極的に県内ワーケーションを行い、苦境に立たされている観光業への支援に乗り出すべき(コロナ対策)

居住・移住しやすい住宅環境の整備
・空き家の問題は山形県でも深刻である。また、若い子育て世代が小さな家に住み、独居老人が広い敷地と屋敷を持て余すといった矛盾も見られる。住宅を新設したりして移住者を呼び込む例もあるが、すでにある住宅を活用し、県民にとって住み続けたい、県外の人が移住したい住環境を提供することが重要
→リバースモーゲージの活用や空き家のリフォーム販売など、住宅の循環に主眼を置いた住宅施策を展開すること。また、改築した空き家を移住者に安く提供する、あるいは別荘や長期滞在シェアハウス(別荘のシェアの感覚)として空き家を活用することで、関係人口を創出すること
・都会と地方では所得の格差があるため、人材不足の介護士や保育士が都会に流れ、女性主体の職業の方が都会にとられることで、さらなる人口減少、消滅可能性都市へとつながる
→改築した空き家、あるいは県営住宅などの公営住宅を、人材不足の分野の若者に安く提供する。それにより、例えば家賃6万円が1万円で住めれば、実質5万円の所得向上になる。人材不足の分野のターゲットに住宅を安価に提供することにより、移住定住を促進すること

国への要望
・いかに地方創生とはいえ、地方の社会減は止まらない。コロナ禍によって東京一極集中の危険性が露呈した今、大規模な人口地方分散策が求められる
→地方が有利な税制の確立など、地方に住むことが有利になるような思い切った制度改革と、省庁や大学の地方移転(デジタル技術により分散は可能)による分散型日本の構築
・国はコンパクトシティの名の下、そして人口減少の未来をたてに、地方における開発行為を厳しく制限する方向にある。しかし、人口が増えて都会に流入している時代には都会の都市開発を強力に進めておきながら、今になって地方はどうせ人口減少するのだから開発するな(現在でも都会の開発は進んでいる)では間尺に合わない
→人口の地方分散の施策を強力に進める一方で、市街化区域の拡張を含めた計画的な開発(乱開発とはいわない)を地方こそできる、地方優遇制度の確立

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