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古田 亘 流鏑馬が見たいんだよね。 [第12回] 「極意の全速力」

流鏑馬の馬場は200メートル強。的は3つ。

スタート地点からゴール地点まで馬を全速力で走らせ、馬上から3つの的を射抜く。馬の走る方向に向かって左手が的、右手には観客がたくさん。馬の息遣いまで聞こえるほど、案外近くで疾走を体験することができます。

馬が走り抜けたときに、砂が少し飛んでくるくらいの迫力。観る、というより体験する感じです。馬場は思ったよりもこんもりと砂が盛られていて、歩くと靴が沈み込むくらい。歩けるけど、走るのは大変だと思います、人間は。そんな柔らかな足場を馬が全速力。。。

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全速力っていうのがキモです。スタート地点から何メートルかで一気にトップスピードに。そのまま3つの的を狙ってゴールでピタッと止まる。

最後の的は結構ゴールの間近にあるのに、そこまでは速度を緩めることがない。3つ目の的を射抜いてすぐ、本当にピタッと止まる感じ。

競馬とかでは、しばらくランニングみたいにならして引き返すようにやっていますが、流鏑馬は全然違います。ピタッと。射手の皆さんは涼しげに力を抜いてやっていますが、あれ、普通の感覚だったらヤバいレベルの急ブレーキです。

どうやって馬を止めているのか、射手の方に聞いてみました。

「馬が勝手に止まるんだよ」だそうです。ちなみに、「馬は全速力で走りたい」ものだそうで、ただ気持ちよく全速力で走らせてやり、「勝手に止まる」のだそうです。そして「海外の行事で現地の馬に乗ったけどみんなそう」なのです。

しかし、それは日本の馬術の極意だともサラッと言っていました。かっこいい。

(写真 : 2019年4月19日鶴岡八幡宮)

(この連載は今回が最終回となります。次の企画にご期待ください)

古田 亘(ふるたわたる)
1971年、静岡市生まれ。制作会社にて様々なメディアコンテンツのプロデュース、ディレクションを手がけ、2001年に独立。浅野忠信初監督作品「トーリ」(’04年)のプロデュースや、サーフドキュメンタリー映画「アドア」(’07年)の監督として注目を集めた。テレビ番組、舞台演劇、映画などの写真、デザイン、映像演出を数多く手掛ける。2020年7月、写真集「YABUSAME」を刊行。神奈川県葉山町在住。
https://www.watarufuruta.com

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