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古田 亘 流鏑馬が見たいんだよね。 [第6回] 「立原正秋」

あなたが帰ってこないことは分かっています。
という妻が主人公のお話「流鏑馬」。立原正秋の作品です。
その大きな鎌倉の屋敷には夫の両親がいて夫の弟がいる。屋敷を切り盛りし、皆の食事も作るのは妻である。それは夫がいるとかいないとか関係ない、変わらない彼女の仕事であった。
弟は流鏑馬をやる。伝統的な装束で馬を馳せ矢を射る姿は、彼女が育ってきた世界では見られなかった男の姿だった。
彼女の裡(うち)にはいつしか弟の姿があった。。。

「儀式と制約のうちに己をおくことで自らの青春に厳しさを与える。。」

彼女の目に映る流鏑馬が、僕にとって赤と黒の二色刷りだったような気がしてならないのです。

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(写真 : 鎌倉 鶴岡八幡宮)

(この連載は毎週火曜日に更新予定です)

古田 亘(ふるたわたる)
1971年、静岡市生まれ。制作会社にて様々なメディアコンテンツのプロデュース、ディレクションを手がけ、2001年に独立。浅野忠信初監督作品「トーリ」(’04年)のプロデュースや、サーフドキュメンタリー映画「アドア」(’07年)の監督として注目を集めた。テレビ番組、舞台演劇、映画などの写真、デザイン、映像演出を数多く手掛ける。2020年7月、写真集「YABUSAME」を刊行。神奈川県葉山町在住。
https://www.watarufuruta.com

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