見出し画像

古田 亘 流鏑馬が見たいんだよね。 [第8回] 「笠懸(かさがけ)」

2019年10月20日、京都上賀茂神社。

毎年10月の第三日曜日に行われる恒例の笠懸(かさがけ)神事です。

笠懸とは往復で的を狙う行事。通常の流鏑馬は一方通行で三つの的を狙いますが、笠懸では復りも狙います。さらに復りは難度が上がって(いるように見えます。こちらからは。)、地上近くに設置された的を馬上から斜め左下を狙って射ます。さらにこの復路の的は二回りくらい小さめ。

画像1

元々、千年くらい前には盛んに行われてきたという笠懸。より実戦に近い雰囲気です。というのも「笠懸」という言葉のそもそもの意味は、顔面を狙うということ。敵が振り返った瞬間、その顔面を馬上から射るというのです。なんと痛そうな、というか死ぬでしょう。実際に平将門もそれで亡くなったそうです。顔面が急所だということは、分かってはいるけど考えたくない。それを改めて思い出させるのに十分な迫力の笠懸。

強い雨が打ち付ける戦場で複数の敵と剣を交える。切り込んできた相手とツバぜりになる。ぬかるみに足をとられながら、死にもの狂いで押し合う。雄叫びをあげる。背後から迫る馬の音に気付くのが遅れた。振り返る。顔面を射抜かれる。

目の前でそれをやられると慄然とします。

(この連載は毎週火曜日に更新予定です)

古田 亘(ふるたわたる)
1971年、静岡市生まれ。制作会社にて様々なメディアコンテンツのプロデュース、ディレクションを手がけ、2001年に独立。浅野忠信初監督作品「トーリ」(’04年)のプロデュースや、サーフドキュメンタリー映画「アドア」(’07年)の監督として注目を集めた。テレビ番組、舞台演劇、映画などの写真、デザイン、映像演出を数多く手掛ける。2020年7月、写真集「YABUSAME」を刊行。神奈川県葉山町在住。
https://www.watarufuruta.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?