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古田 亘 流鏑馬が見たいんだよね。 [第9回] 「美しく儚いもの」

2019年10月20日、京都上賀茂神社。

京都で流鏑馬を観る、ということはやっぱり格別だと感じました。自然に巻き起こるタイムスリップ感。場所は上賀茂神社。

明治神宮よりも緑が少し薄く、境内を流れる川はゆったりとしています。ゆるく流れる午前中の風の中、馬と射手が慣らしの走行をしている。きっと千年前もこんな風景があって、それを観ている私のような存在があったのだろう。

午後、本番が始まる。諸役や射手たちを率いて先頭で歩く神職たちの真っ白な直衣がまぶしい。行列が馬場に入ると、神職は的をひとつひとつ清めていく。清々しい風が吹く。昨日までの雨が空気を清めてくれたみたい。

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私の同行した流鏑馬神事ではよくこういうことが起きます。前日や直前まで雨が激しく降るが、本番ではすっきりと晴れる。このときもまたそれ。出会えるのか、出会えないのか。表か裏なのかが紙一重。流鏑馬に出会うことができるのが偶然だという見方もできます。

不思議な存在感に儚い魅力をも合わせ持つ流鏑馬が、今日また始まる。

(この連載は毎週火曜日に更新予定です)

古田 亘(ふるたわたる)
1971年、静岡市生まれ。制作会社にて様々なメディアコンテンツのプロデュース、ディレクションを手がけ、2001年に独立。浅野忠信初監督作品「トーリ」(’04年)のプロデュースや、サーフドキュメンタリー映画「アドア」(’07年)の監督として注目を集めた。テレビ番組、舞台演劇、映画などの写真、デザイン、映像演出を数多く手掛ける。2020年7月、写真集「YABUSAME」を刊行。神奈川県葉山町在住。
https://www.watarufuruta.com

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