見出し画像

古田 亘 流鏑馬が見たいんだよね。 [第7回] 「侍の凄さ」

2019年5月1日 東京・明治神宮。

あさ9時。原宿に位置するこの広大な神社は、ここが東京ということを忘れるくらいに緑が豊かで空気が澄んでいる。この日はここで、新しい天皇の御即位をお祝いする神事として流鏑馬が行われる。

すでに射手たちは朝礼を済ませ道具をあらため、準備運動を行なっている。
少し経つと大きな箱形のトラックが何台か到着。馬が降りてくる。
スタッフたちは皆、ちょっと笑顔になる。

馬は到着すると係の人たちに拭かれたり、声をかけられたり、水をもらったり、すごく可愛がられる。馬がいい気持ちで「場」に入ることができるように気を使っているのだろう。とても柔らかな空気が流れる。

対して射手たちの表情には緊張感が表れている。
それもそうだろう。天皇の即位という行事は一生に一回あるかどうか。世間はお祝いムード一色である。日本中が注目する中、即位の関連行事の一つとして行われる流鏑馬神事。今日ばかりはお祭りの規模が巨大である。

画像1

一人リラックスして周囲に声をかけているのは小池師範だ。
彼は、必ず行軍の先頭を歩き、射手を代表して天下泰平、五穀豊穣、万民息災を祈念する儀式「天長地久の式」などを行うリーダーである。
いつもと変わらない柔らかな様子に、これが日本の侍の凄さかと思いました。

でも後日彼は言っていた。「吐くほど緊張しました。」
全くそんな風にはみえなかった。

(この連載は毎週火曜日に更新予定です)

古田 亘(ふるたわたる)
1971年、静岡市生まれ。制作会社にて様々なメディアコンテンツのプロデュース、ディレクションを手がけ、2001年に独立。浅野忠信初監督作品「トーリ」(’04年)のプロデュースや、サーフドキュメンタリー映画「アドア」(’07年)の監督として注目を集めた。テレビ番組、舞台演劇、映画などの写真、デザイン、映像演出を数多く手掛ける。2020年7月、写真集「YABUSAME」を刊行。神奈川県葉山町在住。
https://www.watarufuruta.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?