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丘珠空港の滑走路延長(その5)短距離着陸

前回(その4)は こちら。↓

今回(その5)では少し趣向を変え、滑走路のほんの一部だけで離着陸できてしまう飛行機のはなしです。

やって来た XCUB

8月のある日、丘珠空港の滑走路32に小型の飛行機が進入してきました。目立つ大きなタイヤを履いた XCUBJA42XC です。

米国の CUB CRAFTERS INC が製造する CC19-180 というモデル。この機体は2017年製造で2018年に国内登録された、株式会社NISEKO AVIATION(北海道・倶知安町)の所有機です。美唄市が定置場所とされているので、美唄スカイパーク(美唄市農道離着陸場)からやって来たのでしょうか。

▲ 滑走路に進入するXCUB

札幌ACC(航空交通管制部)の対空送信アンテナを後目に、ゆっくりと滑走路32に進入してきました。空港緑地の芝が映えます。

▲ 進入端を通過

この写真は、ウイングバー状に設置されている滑走路末端灯が両側に見えるので、XCUBが滑走路32進入端の直上にいるタイミングです。

3年前に機体に近寄って見たとき、この大きなタイヤには、GOODYEAR 26×10.50-6 と書いてありました。つまり、直径が26インチ(約66センチ)です。そのサイズから、滑走路進入端の通過高度は1メートルちょっと。旅客機が進入するときは滑走路進入端を約15メートルの高さで通過しますから、このXCUBはとても低い進入です。

▲ 接地

滑走路32に入ってすぐ、デカい車輪がかなり手前の方に接地しました。

▲ 誘導路へ

そして、あっという間に滑走路から出て行きます。32進入端から100メートルしか離れていないナンバー2誘導路からの離脱。ほとんど着陸滑走していない。

▲ 滑走路32末端(Googleマップおよび国土地理院空中写真に加筆)

Googleマップで見るとこんな感じ。1500メートル滑走路のうち100メートルしか使っていません。この100メートルは、18年前に滑走路が延長された部分です。古いペイントがうっすらと残っていますね。

XCUBのスペック

Cub Crafters社のweb資料によれば、

  • Landing Distance : 170 ft

  • Takeoff Distance : 170 ft (180 HP)

となっており、たった52メートル(170フィート)ほどで離着陸ができるようです。(離陸はライカミングO-360エンジン180馬力の場合、当該機はコレ)。この仕様ならあの着陸も不思議じゃないですね。100メートルもあれば十分。

そして、速度も十分落として飛行することができます。失速速度は次のとおり。

  • Stall Speed : 43 mph(約37kt、約69km/h)

同社の別のweb資料には、

  • Vs0 : 46 mph* stall speed - power off, flaps full

  • Vs : 46 mph* stall speed - flaps up

*2,300 lbs gross weight using FAA mandated worst-case conditions

という記述がありました。最大離陸重量である2,300ポンド(1,043kg)の状態で、フラップがフルダウン、パワーがアイドルという着陸形態における失速速度(Vs0)が時速46マイルですから、40ノット(時速74km)という低速です。

そういや、離着陸の距離に影響する風はどうだったかな。

▲ 直後に離陸する航空撮影のセスナ機

XCUBが着陸した8分後の写真。このウインドソックを見ると、ほぼ正面からの風が10ノット以上あったようです。撮影していて風の息は感じませんでした。短距離着陸に手ごろな風といえそう。

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1500メートル滑走路の現状では冬季の運航ができないエンブラエルの旅客機や 医療搬送用のメディカルジェット機が、雪と氷の滑走路でも安全に離着陸できるようにと数百メートル滑走路を延長する考え方は、基本的に良い方向性なのだろうと思っています。

しかし、滑走路延長に拘る必要のない使用事業機やプライベート機などの利便性を向上させることも、丘珠空港の活性化に重要な役割を果たしてくれるに違いありません。駐機スポットの大幅な増設なども重視してほしいものです。

着陸したXCUBは、スポット28に入っていました。

▲ XCUB JA42XC のタイヤ(2019年7月撮影)



※ 特記のない写真はすべて、2022年8月、やぶ悟空撮影

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