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丘珠空港の滑走路延長(その2)制限表面

(その1)からの続き。今回は「制限表面」のはなしです。


制限表面って、何だ?

国土交通省 東京航空局のウェブサイトには、次のように説明されています。

航空機が安全に離着陸するためには、空港周辺の一定の空間を障害物が無い状態にしておく必要があります。このため、航空法において、次のような制限表面を設定しております。

(国土交通省 東京航空局)

札幌飛行場(丘珠空港)の制限表面がどのように設定されているのか、国土交通省 航空局のウェブサイトで確認してみましょう。下の方までスクロールし、「札幌飛行場」の「PNG形式」または「地理院地図」を選択します。

▲ 札幌飛行場(丘珠空港)の制限表面(国土交通省航空局が地理院地図に描画)

こんな図が現れます。でも、空の上の空間のことなので、この平面図だけでは到底理解できません。高さの情報が含まれていないからです。

ネット上では制限表面の図がたくさん見つかります。でも、概略図とはいえ大部分はいいかげんで、細部の誤りが気になってしまいます。そこで、札幌飛行場(丘珠空港)の制限表面の概略図を自分で描いてみました。

▲ 札幌飛行場(丘珠空港)の制限表面概略図

現状の1500メートル滑走路で寸法を入れました。手前の4分の1ほどは見やすさを考えて省いています。

札幌飛行場の制限表面は、

  • 進入表面

  • 水平表面

  • 転移表面

の3つが設定されています。これらの面より上に出る(高さが高い)建物や鉄塔、樹木など、物件があってはいけないという原則があります。ここで示した図は、現状1500メートル滑走路での制限表面ですが、滑走路を延長すれば自ずと制限表面が変化します。進入表面の位置が移動し、転移表面がやや広くなり、そして水平表面の面積が大幅に広がります、詳しくは次回以降に。

気を付けなければいけないのが、進入表面や転移表面が地表と接する部分。実は、滑走路ではなく着陸帯です。着陸帯は告示で定められており、札幌飛行場の場合は、

着陸帯

  • 長さ 1620メートル

  • 幅 300メートル

です。滑走路長1500メートルに、滑走路の両端に設けられた長さ60メートルの過走帯(オーバーラン・エリア)を加えて1620メートルという数字が出てきます。

また、水平表面の高さの基準は、標点位置です。一般に、着陸帯や滑走路には勾配があって場所により標高が変わるので、飛行場に1か所 必ず設けられる標点を基準にします。札幌飛行場の場合は、

標点位置

  • 北緯43度7分3秒

  • 東経141度22分53秒

  • 標高8メートル

と告示で定められています。

▲ 札幌飛行場の着陸帯(国土地理院空中写真に加筆)

国土地理院の空中写真(令和2年9月29日撮影)に、着陸帯の範囲と必要な情報を書き加えました。図示した矩形と標点を基準にして制限表面が定まります。

札幌飛行場は「自衛隊が設置する飛行場」に該当するので、自衛隊法に基づき定められた基準(防衛庁訓令第105号)により、滑走路の長さに応じて水平表面、進入表面、転移表面が細かく決められています。

陸上飛行場の設置基準

(札幌飛行場の場合、滑走路の長さ:1,300m以上)

着陸帯

  • 滑走路の長辺を両短辺の側にそれぞれ延長する長さ:60m以上

  • 幅:300m以上

(以下、略)

水平表面

  • 標点からの半径の長さ:2,000m

  • 高さ:45m

進入表面

  • 進入区域の長さ:3,000m

  • 外端末の幅:1,200m

  • 着陸帯の端から上方への勾配:1/50

転移表面

  • 着陸帯及び進入表面の縁から外上方に水平表面に至るまで1/7の勾配をなす面

「飛行場及び航空保安施設の設置及び管理の基準に関する訓令」(昭和33年12月3日付、防衛省訓令第105号)の別表第1より

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次回は、制限表面を超える物件について探ってみます。えっ、そんなもの、あるわけがないよね?


※ 冒頭の写真は、2022年7月、やぶ悟空撮影


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