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コーチングで重要な概念について

コーチングでは、理想的に物事が進めば達成できるような現状の延長線上のゴールではなく、今の自分からは想像できないようなレベルのゴール(現状の外のゴール)を、「やれる気しかしない🔥」という体感の中で次々と達成していくことを目的にしています。

とはいえ、人間には身を守るために現状に留まろうとする性質があるので、現状の外側の未来にいくには、脳と心の仕組みをよく理解しておく必要があります。

ここでは、ゴール達成に関わる脳と心の仕組みと、コーチングにおいて扱う重要ないくつかの概念について説明します。この話はコーチングに限った話ではなく、無意識のうちに私たちに常に作用しているものなので、理解することで脳と心の扱い方が上手になるはずです。

説明する概念は以下です。
・エフィカシー
・RASとスコトーマ
・コンフォートゾーン
・セルフトーク
・ゴール設定

さっそく見ていきましょう!

エフィカシー

エフィカシーというのは「自分のゴールの達成能力についての自己評価」のことで、現状の外のゴールを達成するために最も重要なものです。一言で言うと「やれる気しかしない🔥」と言う感覚です。

現状の外のゴールについては、当然やったこともなければ、どうしたら達成できるかのプロセスも全く見当がつきません。そこで必要になるのがエフィカシーです。「やり方はわからない。でも、自分にはそれを実現する能力がある」と確信することで、ゴールを達成するのに必要なものが見えてきます。手段が見えるからエフィカシーが高いのでなく、エフィカシーが高いから手段が見える。というこの順番が重要です。

エフィカシーはあくまで自己評価なので、他の人にどう思われているか、実際に実力が伴っているかは全く関係ありません。実際にできるかはさておき、自分ができると確信していることで、脳ができる方法を探し始めます。

反対にエフィカシーが低く、「自分にはどうせ達成できない」と感じていれば、ゴール達成に必要なプロセスが、仮に目の前にあったとしても目に入らなくなります。

なぜなら、人間には自分にとって重要なものだけを認識する仕組みが備わっているからです。

これがRASとスコトーマの仕組みです。

RASとスコトーマ

人間の脳は今この瞬間にも、常にものすごい量の情報処理をしています。その全ての情報を意識に上げようとすれば脳がパンクしてしまうので、自分にとって重要なものだけを意識に上げるようにできています。

この自分にとって重要なものにだけ意識を向ける仕組みがReticular Activating Systemの仕組みです。頭文字でRAS(ラス)と言います。日本語では脳幹網様体賦活系と言います。脳幹網様体はうなじの辺りの脳幹という場所にあります。脳幹は生命維持に関わる部分で、呼吸や睡眠を調整したり、無意識をコントロールする部位です。

RASも脳幹に中枢があることから分かるように、無意識のうちに認識するものをコントロールします。

例えばあなたがある晴れた日に、紅葉の綺麗な山で楽しくピクニックしていたとします。もし急に、目の前に熊が出てきたらどうなるでしょうか?ヤバい!と思った瞬間に、全力で逃げ出すでしょう。その時に脳は、あえて思考するIQを下げ、心拍を上げて、逃げるために身体の機能を集中させます。熊から逃げる途中では、綺麗な紅葉は全く目に入らないし、どれだけ足が疲れても気になりません。

これは、「熊から逃げる」というゴールが設定された結果、RASが発動して、熊から逃げるために必要な方法だけが目に入ってきたからです。

身近なところで言えば、オシャレに気を使い始めた日から人の服装が気になるし、子供が生まれた日からスーパーのおむつコーナーが目に入ってきます。初めて眉カットをした次の日から、猛烈に他の人の眉毛が気になり始めます。いつでも他人の眉毛は見えていたはずなのに、それまでは全く認識しなかったわけです。

このように、自分にとって重要なものだけを選択的に意識にあげるシステムがRASです。

反対に、自分にとって重要でないと無意識が判断したものは、見ようと思っても見えなくなります。これをスコトーマと言います。日本語で言うと盲点です。

熊から逃げる例で言えば、熊から逃げるために必要でないものを、脳は自動的にスコトーマに入れます。逃げ道に可愛いリスがいたら、あえてリスをスコトーマに入れて、リスには気づかないようにします。「あ、可愛いリスだ〜」といっているうちに、熊に食べられてしまうからです。リスを意識にあげて情報処理している暇はありません。

このように、スコトーマがあることは悪いことではなく、スコトーマがあるからこそ、自分にとって重要なことに絞って情報処理をすることができます。

現状の外にあるゴールを達成していくためには、このRASとスコトーマの仕組みを理解し、使いこなすことが必須となります。なぜなら、現状の外側のゴールへのプロセスは、今はスコトーマに入っていて見えなくて当たり前だからです。

反対に、この仕組みを利用することで、自分のゴール達成に関係するものだけにRASを発火させ、ゴールに関係ないもの全てをスコトーマに入れることが可能です。

コンフォートゾーン

コンフォートゾーンとは、慣れ親しんだ心地よい状態のことです。コンフォートゾーンから外れることは、生命として危険なことであり、そこから外れる出来事が起きたとしても、どうにかしてコンフォートゾーンに留まり続けようという無意識の力が働きます。

例えば、体重80キロの人がダイエットを始めたとします。頑張って食事制限をして運動をして60kgになったとしても、その人のコンフォートゾーンが80キロのままであれば、無意識に元の体重に戻る力が働きます。これがリバウンドです。ダイエットするときはものすごく努力をするのですが、リバウンドするのに努力は要りません。そのくらい、コンフォートゾーンに引き戻す力は強力です。自分の身を守るために生命に備わっている力ですから、当然とも言えます。

夢に向かって努力する場合でも、夢が叶いそうになったところで普段なら絶対にしないような凡ミスをして失敗することがあります。これは、コンフォートゾーンから出たくないという無意識の反応です。そして重要なことは、何が快適かどうかは、あなたにとってではなく、あなたの無意識にとってで決まるということです。つまり、どれだけ努力しても無意識が快適と感じるコンフォートゾーンを移動しない限り、圧倒的な力で引き戻されてしまうと言うことです。

しかし、この仕組みを知っていれば、この仕組みをハッキングして、コンフォートゾーンに引き戻される圧倒的な引力を、自分のゴール達成のために利用することもできます。それが、現状の外のゴールを達成した状態を自分のコンフォートゾーンにする、という方法です。これができれば、ダイエットのリバウンドと同じくらい強力な力で、ゴール達成に向けて引力が働くようになります。結果として、自然とゴールに向けてスコトーマが外れ、RASが発火しゴールへの道のりが見えてきます。

ここでのポイントは、コンフォートゾーンは1つしか取れないということです。平熱が36度であり、同時に37度でもある、という状態がないのと同じですね。なので、コンフォートゾーンを現状の自分ではなく、ゴールを達成した自分にキープすることができれば、たちまち今の自分では居心地悪く感じ、無意識がゴールに向かって働き始めます。

では、現状かゴールか、どちらがコンフォートゾーンになるのでしょうか?それは、臨場感の高い方です。つまり、日頃からありありと感じられている方がコンフォートゾーンになります。

コーチングなどで現状の外のゴールに強い臨場感を感じ、セッション中には「よし、やるぞ!!🔥」と熱く燃えたとしても、次の日になって朝から会社に行き、いつものメンバーといつもの仕事をする中で、多くの人は現状の臨場感の方が強くなってしまいます。

では、どうしたらゴールの臨場感を保つことができるのでしょうか?その鍵を握るのがセルフトークです。

セルフトーク

セルフトークとは、無意識に自分に対して語りかける言葉のことです。口に出すこともあれば、出さないこともあります。私たちは1日に約2〜3万回セルフトークをしていると言われます。ちなみに1日にしている呼吸が2万回〜2万5千回なので、呼吸と同じくらい繰り返していることになります。

例えば何かに失敗した時、「やっぱり自分はダメだ」という人もいれば、「あれ、自分らしくないな」「自分ならできるはず」と言う人もいます。1日に3万回「自分はダメだ」と言われて落ち込むのと、「自分ならできる」と言われて奮い立つのとでは、圧倒的にセルフイメージが変わるのがわかると思います。

ほとんどの場合、周りにいる親や教師が言うことをセルフトークとして取り入れていますが、これは今からでも、いくらでも変えていくことができます。すでにゴールを達成した自分の状態でのセルフトークを習慣にできれば、1日に3万回、コンフォートゾーンをゴールにキープすることができ、自動的にゴールに向かう力が働くようになるというわけです。

よくスポーツの世界では、「ゴールの映像をありありと描き、鮮明に感情を感じましょう」というイメージトレーニングが行われます。確かに、臨場感を作るのは主に言葉、映像、感情の3つであり、コンフォートゾーンをゴールに移動する上ではイメージトレーニングも有効です。しかし、セルフトークが1日に3万回繰り返されること、言葉によって映像や感情は自然に想起されることを考えると、セルフトークの影響力の大きさは計り知れません。

ゴール設定

最後に、コーチングにおいて最も重要なゴール設定についてお話しします。ゴール設定こそが、人のクリエイティビティやパフォーマンスを最大に発揮させてくれるものです。

一点注意としては、ゴール設定とゴール達成は目的が異なります。ゴール設定はあくまで設定であり、必ずしも達成を想定しません。ゴール”設定”の目的は、スコトーマを外し、クリエイティビティを発揮し、パフォーマンスを出す、ということにあります。

ゴール設定を有効に機能させるには、3つの条件が必要です。

①本音でやりたいと思えるゴールであること(have toでなくwant to)
②ゴールは現状の外側に設定すること
③複数のジャンルでゴールを設定すること

①本音でやりたいと思えるゴールであること(have toでなくwant to)

まず大前提として、ゴールはやりたいことであることが重要です。

一見当たり前に聞こえるかもしれませんが、やりたい(want to)と思っていることでも、実はやらなきゃ(have to)という思いでやっていることがあります。

つまり、「周りの期待に答えようと思って」「こうすれば人に評価されるから」といった他人目線でのhave toのゴールを、あたかも自分のゴールのように勘違いしてしまうということです。

私たち人間は、他人の期待に応え、社会性を獲得することで生き延びてきました。また、小中高大という学校教育の中で、あらかじめ明確に決められた基準(have to)に従う訓練を積んできています。

しかし、仮にhave toのゴールを達成したとしても、周りからの評価は一時的に生まれるかもしれませんが、いつまでも自分自身の充足感は得られず、長く続けることが難しくなっていきます。

だからこそ、心からの本音で「やりたい!」と言える、真のwant toを見つけることが重要です。

とは言うものの、自分がやりたいことがwant toなのか?have toなのか?は自分では見分けることが困難な場合が多くあります。そこで、コーチとのセッションの中で、心からの本音でやりたいことを発見し、ゴールとして設定していきます。

②ゴールは現状の外側に設定すること

これまでにも、「現状の外側のゴール」という言葉が出てきました。ここで詳しく見ていきましょう。

うまくことが運べば今のままでも達成しうるゴールは、現状の内側のゴールと考えます。例えば、「今勤めている会社で課長から部長に昇進する」というのは、今の働き方で成果を出し続ければ達成しうる、という点で現状の内側です。

仮に現状の延長線にゴールを設定した場合、達成までの道のりが何となく見えているため、努力して達成しようとします。つまり、やり方がわからないからこそクリエイティビティが最大限に発揮されるというゴール設定の真価は発揮されません。

今回のコーチングで対象とするゴールは、あくまで現状の外のゴールです。どうやったら達成できるのか見当もつかないし、なんなら怖い。でもできるんだったら本当にやりたいし、自分がやらなきゃいけないと思っている。そんなゴールだからこそ、設定した瞬間からクリエイティビティが発揮され、これまでとは違う現実が見えてきます。

そして、現状の外側のゴールは現状の外側であるがゆえに、自分1人で思いつくのは非常に難しい場合がほとんどです。だからこそ、クライアントの現状の外側にいるコーチがお手伝いすることで、初めて現状の外側にゴールを設定することが可能になります。

「言われてみればめちゃくちゃやりたい!でも無理だと思って自分では想像すらしなかった。」
そんなゴールを、コーチと一緒に作っていきましょう。

③複数のジャンルでゴールを設定すること

バランスホイホイール

私たちの人生を豊かにする要素として、仕事以外にも多くの要素があります。これらを8つのカテゴリー(仕事、健康、家族、人間関係、趣味、知性、社会貢献、お金)として分類したものがバランスホイールです。この8つの領域において、それぞれゴールを設定していきます。もちろん、現状の外かつ本音でwant toと言えるゴールです。

なぜ複数のカテゴリーでゴールを設定するのでしょうか。
仮に仕事だけでゴールを設定した場合、仕事で現状の外のゴールをバシバシ達成していったとしても、働きすぎて自分の健康を損ねたり、家族と喧嘩して不仲になったりすることがあります。

よく「仕事一筋でやってきたから、家庭内はボロボロ」といったことを聞くことがありますが、これは仕事のゴール設定がされている一方、家庭のゴール設定がされていない場合に起こります。そして結果的に、家庭の問題によってブレーキがかかり、仕事のゴールも達成しづらくなってしまいます。

そこで、それぞれの領域でゴールを設定し、ゴールを達成している世界の整合性をとることが重要になります。これによって、未来にゴールを達成している自分の生活をイメージしやすくなり、コンフォートゾーンへの臨場感が高まりやすくなります。

人生の全ての領域で、完全に義務感から解放され、純粋に自分がやりたいことで、自分すら想像できないレベルのゴールを掲げて、24時間を夢中で過ごす。

そんな人生のお手伝いをさせていただけたらと思います。

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