【私・2】家族は狂っている
江國香織さんの『流しのしたの骨』という小説が大好きだ。中学生くらいのときに初めて読んで以来、ずっと手元にある。今でも半年に一度くらい読み返すから、登場人物が知り合いのように思える。
一言でいうと、家族の物語だ。メインストーリーがあるわけではなく、主人公に恋人ができたり、ハムスターを飼い始めたり、年末に餃子をつくったり、両親と4人きょうだいの日常がおだやかに語られていく。でも、どこかしらへんなのだ。
この本のことを、「狂っている家族だよね」と評したひとの言葉がとても印象に残った。「狂っている」という言葉のインパクトが強くて一瞬ぎょっとしてしまったけれど、たしかにそうだ。きっと、どの家族だって狂っている。麦茶に砂糖を入れているとか、卵焼きがしょっぱいとか、隣のおうちにはおかしなところが必ずある。うちの「普通」とはちがう。
私があの本を好きなのは、知らないおうちの日常を覗き込めるからなんだと思う。当たり前の「暮らし」だからこそ、自分とちがうやり方だとびっくりするし、とても面白い。結婚して同居でもしないかぎり、ほかのおうちの日常をこと細かく知るなんてことはなかなかできない。だから、貴重な体験をさせてくれるあの本がすごく好きだ。
私がふつうだと思っている家族のことも、きっとだれかにとっては狂っているんだろう。大人になって、「あれ、うちっておかしかったんだ」と気づいたこともたくさんあった。それを面白がって書きとめておきたくて、今、これを書いている。
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