見出し画像

PPP的関心【目的を果たすためのデジタル】

今日、目を引いた記事は「水道と生活データの組み合わせでフレイルの兆候を検知する」実証実験について書かれたものです。

「健康異変が生じた際にアラート通知を行う」水の使い方モニタリングから異常を検知する仕組みに、「高齢者が健康異変となる前、回復が期待できるフレイルの疑いがある段階での兆候を検知」につながるその他の周辺データ収集を組み合わせた新たな社会実験が始まったという記事です。

注目点は、「手段としてのデジタル」がもたらす達成可能性

水道とか健康は門外漢なところもありますし、記事の実験の中身に言及することは今回の主旨ではありません。
目についた理由は、デジタル(記事の例はセンシング技術を用いて収集したデータと既存データの組み合わせ)の導入は、導入自体が目的ではなく健康異変の予防的検知が「本来の目的」であるということです。つまり、目的とその実現のための手段、手段・手順の選択としてセンシングとデータ収集があったということです。

DXの鍵はX(トランスフォーム)

以前、(独占禁止法の特例措置による)規制緩和で中心部バス交通の利便性向上を実現させたりバスと自転車の組み合わせなど継続的なMasS取り組みの研究を行なってきた前橋市の話を書きました。
もともと前橋市は政策目的を実現する上で必要な現状把握などのためにやり方自体、やり方を規定するルールを変える(=X;トランスフォーム)、変えるためにデータと技術を活かすという「Xを重視したDX」が随分前から進んでいました(「ビッグデータを活用した地域課題の見える化及び政策決定の変容にかかる連携協定」の締結もその一例)。

この「ビッグデータを活用した地域課題の見える化及び政策決定の変容にかかる連携協定」が視野に入れていた「見える化」の対象領域は、人の流れの可視化、渋滞対策、空き家の場所の可視化など多岐にわたるものでした。

目的的思考が引き出したビッグデータ活用

総務省「ICT地域活性化ポータル」より

取り組みでは、目的(空き家調査の予算制約、リードタイム、判断基準揺れの問題を脱し正確な把握とそれに基づく対策を講じるため)の実現に向け、従来の手段(目視調査)を新たな手段(市が保有するクローズドなビッグデータ(住民基本台帳データ、固定資産税台帳データ、水道使用量)を活用したシステムにより空き家の状況を推定・可視化する実態調査システム)に移し替えたことです。
クローズドデータの利用には慎重さも求められる一方で、決まっているから使えませんという思考停止を突破し、どうやったら使えるのかを考えた結果がもたらしたデータという意味で、まさに「X(トランスフォーム)が引き出したビッグデータ活用」と考えられます。

行政DXは「民間の使いこなし」

冒頭の高齢者の健康異変予兆を捉える社会実験も、前橋市の空き家調査推計モデルも「(技術を持っている)民間の使いこなし」が重要だと改めて気付かされます。データの取り扱いの技術を研鑽する、あるいは技術者を内包するために時間や費用をかけるのではなく、持てるものをうまく使っている点が共通しています。

行政DXには公民連携的な思考がもたらす利点が活かせると思います。
お互いの持てる(人的、技術的な)資源の違いを理解、尊重し、それを出し合って目的に向かう。その過程での想定リスクと期待リターンを明確にした上で契約によるガバナンスの元で協働が進む、これが公民連携の一面です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?