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PPP的関心【PFI法6条(民間提案)に着目した記事を読んで】

「PPP的関心」記事にいつも目を通していただきありがとうございます。
2021年秋( 9 月)に本格的な再開をして以降、なんとか続けることができています( note さんによれば 18 週連続だそうです )。さて、連続して公開中の「PPP的関心」ですが、2021年の記事公開は本日(12月27日)を年内最後とさせていただきます。
少し気が早いですが、お読みいただいた皆様におかれましては、どうぞ良い新年をお迎えください。来年(と言っても来週。。。)からも引き続き記事を書いていこうと思います。宜しければ2022年も引き続きお読みいただければと存じます。よろしくお願いします。

年内最後の記事は、日経クロステック誌の連載記事(「福島隆則のインフラビジネストレンド」)を読んで、考えたことを記事にしました。

PFI法第6条とは?

通称PFI法と呼ばれる法律は、正式には「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」というもので、法の目的は第一条に示される

(目的)
第一条 この法律は、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の促進を図るための措置を講ずること等により、効率的かつ効果的に社会資本を整備するとともに、国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保し、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
E-COV法令検索

となっています。つまり、公共施設整備を従来のような税金を使った(純粋な)公共投資で行うのではなく、公共施設整備に必要な資金調達や整備事業の計画・推進において、民間の力を活用して行うためのルールが整理されているものです。

さて。福島氏が連載記事で取り上げている「PFI法 第6条」というのは以下の内容です。

(実施方針の策定の提案)
第六条 特定事業を実施しようとする民間事業者は、公共施設等の管理者等に対し、当該特定事業に係る実施方針を定めることを提案することができる。この場合においては、当該特定事業の案、当該特定事業の効果及び効率性に関する評価の結果を示す書類その他内閣府令で定める書類を添えなければならない。
2 前項の規定による提案を受けた公共施設等の管理者等は、当該提案について検討を加え、遅滞なく、その結果を当該民間事業者に通知しなければならない。
E-COV法令検索

つまり、公共施設整備の計画について、自治体から具体的に募集される前に、民間事業者が「自ら」計画を投げかける機会が確保されている、というものです。

新・建設業を目指す企業にとっても重要なルール

このルールは、私が以前から使っている「新・建設業」(以下記事を参照)で示してきた” (地域の建設会社、事業者が)自社の所在地域ごとの都市的課題に向き合い、地域に根ざしながらその課題に応える「事業」を主体的に企画立案、創り出す "「創注」という考え方を、企業の具体的な発意と行動を示す上で適した機会提供になるものだと思います。

「官の体制未整備」と「民間へのインセンティブ不足」という指摘

連載記事の中で指摘されているのは、

PFI普及の画期的な手法として期待されたものの、実施件数は伸び悩んでいる。提案を受ける管理者側の体制が整っていないことや、民間事業者側へのインセンティブが十分ではないことなどが課題だ。
日経クロステック「福島隆則のインフラビジネストレンド」より

つまり、ざっくり言えば「ルールは必要で良いものだが、使い手と使い方の適応性が追いついていない」ということです。
もっとも「管理者側の体制」については、現実問題として自治体の人的資源にも限りがあるわけで、官の不作為や能力(努力?)不足では、という観点だけの指摘をするのは適切ではないと思います(経験的に不作為や努力不足という一面も無くはないと感じる所もありますが…)。
まずは今後、経験(他者経験の模倣を含め)による習熟・進化が期待されることもあると考えたほうが良いかもしれません。

PPPにおける民間へのインセンティブとは

一方で、「民間事業者側へのインセンティブ」についてはどう考えれば良いでしょうか。個人的には、インセンティブを与えるという考え方を官サイドがより重要性を高めて理解・実行することがまずは優先かなと考えます。

①PPPは事業機会を自ら確保する手法(選択肢)

以前の記事(以下)の中で「PPPのもう一つの利益 民間の新たなビジネスチャンスにできるか」という見出しをつけて書いたことがありました。

規模の小さい自治体の公共施設維持管理においても負担を軽減できる機会になると思います。つまり、今までにない「機会」が双方に生じると言えます。
このように、PPP的な取り組みは「行政の効率化」と「公的サービスの品質向上」という二つの利益だけではなく「新たな民間ビジネスのチャンス」を創造するという社会的な利益をもたらすとも言えます。
PPP的関心【アベイラビリティ・ペイメント方式って?】より

民間事業者が「特定事業に係る実施方針を定めることを提案」する際に、何の根拠もなく提案をするわけもなく、自社の資源(技術や人材、地域の理解といった情報など)を活かして地域貢献ができると考えるからこそ提案するわけです。さらに、提案にビジネスチャンスを見出したからこそエントリーしているはずです。

②PPPによる新しい事業を地域社会の利益として捉える

提案機会に地域貢献と自社のビジネスチャンスを見出したからこそ提案した民間企業を官側がどう見るのか。
例えば、地域市民の共有財産でもある公的資源を使って、一民間企業だけが儲かるのは良くないのでは…、あるいはPPP の手法を取り入れると言っても地域のことは役所の責任だから民間企業の都合で左右されるのは… そんな目線で見ている可能性があります。

もしこの目線を脱却できないとしたら、その地域でのPPP はこの先もきっとうまくいかないと思います。そこには、地域の利益を「つながり、循環」で考える目線がないと思うからです。

行政は公的サービスの「プロバイダー」からサービスプロバイダーの「マネジャー」になる時代

モノやサービスが不足していた時代では、集権的な行政サービス提供体制によって暮らしの豊かさを向上させることが効率的で効果的だったかもしれません。しかし、モノやサービス、さらに民間企業に多様で能力の高い技術や人材、地域の理解といった情報などの経営資産が積み上がってきたことで、むしろ多様なリソースを使って結果として高い品質(市民の期待に応える水準が高い)公的サービスの実現を意図すべきだと思います。

PPP 的な取り組みを通じ、民間企業の付加価値創造による地域住民への公的サービスの品質向上が実現すれば、地域住民の豊かさの実現に加え、企業の付加価値創造に対する対価がもたらす税収がさらに次の施策の実施可能性を高めるという「循環」を創造できるか、ということです。
6条提案を受けて判断することは、目前の施設整備の経済性をはじめとする短期的な合理性ではなく、将来にどのような効果を生み出すかという循環的で長期的な合理性だと思いいます。

以上の二つの観点から考えても、公的サービスの提供において、「過去」に中心的な役割を担ったことを尊敬しつつ、一方でこれからの時代においては民間も含めた多様な能力を統合して公的サービスを提供するために、何でも自分でやる、自分が先導するという「サービスプロバイダー」的なスタンスを変え、産・官・学や市民の連携による多様で新しいサービスプロバイダーの「マネージャー」というスタンスで臨むことで、PFI 法6条のような機会をより有効に活かすことができるようになるのではないでしょうか。


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