PPP的関心2023#21【『未来をつくる図書館』を再読して】
講義での話題提供のために『未来をつくる図書館』(2003)を再読する機会がありまして。
改めて読んでみて一つ関心を持ったこととに、2003年初版本の最後「むすび ー 日本の図書館を進化させるために ー」で示されているいくつかの情報(例えば国際比較とか)の「いま」ってどうなんだろう?という自分の気づきメモ的に書き留めておこうと思います。
・・・ということで大した話ではありません、今回は。
図書館後進国?
「日本の図書館統計」(日本図書館協会)というのを調べてみると、2021年度時点の公立図書館数は3,305館だそうで、本の中に示された数値(たぶん2001年の数値)と比べ施設数は増加しているわけですが、人口10万人あたりの施設数という点では大きな変化をもたらすほどではなさそうです。
また、自治体別では未設置の市区は8、町村は386ということで未設置の町村割合は41.7%と見た目の数値では改善しているように見えますが、きっと平成の大合併で母数となる町村数が減ったからだろうと推測できるので地域という視点で見れば実態は変わっていないかも、です。
加えて公共施設の面積を抑制的にする大きなベクトルもある中で図書館施設数を国際比較を基に増やそうと考えるのも難しそうです。
電子図書館サービス
この切り口は、図書館が「情報ネットワークへのアクセス拠点となる機会を与える、機会を広げる」場所となれるか?を問いかけているのだと思いますが、この問いに対する「いま」を知るのにズバリと当てはまる調査や統計に到達できませんでした(自分の検索リテラシーの問題かも。あったら教えて欲しいところですm<_ _>m)。
文部科学省のホームページ内で 教育 > 社会教育 >図書館の振興というページにある過去調査をみても、「これからの図書館像−地域を支える情報拠点をめざして−(報告)」(2006)の一部に問題意識として" インターネットの利用機会や活用能力には相当の格差があり、その是正を図るため、公共機関が、利用機会の提供や情報リテラシー教育を行うことが必要 ”といった記述は見られますが、書籍から20年、先述の調査からでも17年経過して、最新はどうなっているのだろうか、興味が高まるところです。
一方で、いろいろ読んでいると「電子書籍」の導入についての関心や実態に注目した記述には出会うことができました。
図書館の振興というページで見つけた「平成27年度「公立図書館の実態に関する調査研究」報告書(平成28年3月)」の概要には
あるいは「公共図書館における、電子図書館サービス導入の実態と課題、新型コロナウイルス感染問題による図書館の意識の変化について」(2021,長谷川)を参考にすると
といった記述にも出逢います。
ただ、蔵書の電子書籍化というのは素人感覚からすると、書籍の問いかけや文部科学省のHPにある問題意識にある「情報ネットワークへのアクセス拠点となる機会を与える、機会を広げる」場所となれるか」「インターネットの利用機会や活用能力には相当の格差があり、その是正を図るため、公共機関が、利用機会の提供や情報リテラシー教育を行うことが必要」という点においては手段の一部についての確認だけであり、そもそも情報リテラシー教育など指摘される問題の解消に到達できないのは、図書館サービスをどのように提供するかという行政サービスサプライヤーの視点が、いかにユーザーニーズやユーザー利益を増大させるかという視点よりも優先されていそうだという印象が残りました。
デジタル化と本来的な機能の再認識
2022年7月のPPP的関心の記事では「民設公営」型PPPによる設置・運営の例の紹介や「図書館と同種の施設」の存在と知的好奇心や専門性への期待を集める場という役割について書いています。
その時にも書きましたが、予算制約や地域政策(都市経営)課題としての優先順位など現実を取り巻く環境は一筋縄ではいかないことはもちろんです。
今回、たまたま講義の中での話題として『未来をつくる図書館』を再読したわけですが、書籍の中でも指摘されている
といった視点について初版から20年を経て改めて考え直す機会とし、私の日常的な関心をもってさらに言えば、民間が行政に「市民のためのリサーチセンター」機能を提案するような動きの高まりにも期待したいところです。
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