プラモデルに命を吹き込む「汚し」技法

プラモデルの世界は、組み立てて終わりではなく、さらに「リアルさ」を追求することで、全く新しい次元に引き上げることができます。特に「汚し」技法と呼ばれるテクニックは、その極致といえるでしょう。今回は、プラモデルに「汚し」を施し、まるで本物のように見せるプロモデラー、林哲平さんの技術について詳しく紹介します。

汚し技法とは?

「汚し」とは、プラモデルに経年劣化や使用感を与えることで、リアルさを増す技法です。新車のようにピカピカのプラモデルではなく、実際に使い込まれ、時間が経過したような風合いを与えるために行います。汚れ、傷、サビなどを表現することで、物体の歴史や背景を感じさせる作品に仕上げることができます。

基本技法「ウォッシング」

ウォッシングは、汚し技法の基本です。薄く溶いた塗料を全体に塗り、その後余分な塗料を拭き取ります。これにより、表面に自然な汚れが残り、使用感のある仕上がりとなります。特に車両や戦車などでは、汚れや油染みが効果的に再現され、リアリティが大幅に向上します。

塗装の剥がれを表現する「チッピング」

チッピングは、塗装が剥がれた状態を再現する技法です。スポンジや綿棒を使って塗装を部分的に削り取り、下地の金属やサビを露出させることで、使用に伴う摩耗を表現します。この技法を使うことで、古い車や戦車などが長い年月を経て使い古されたような印象を与えます。

「メイク道具」のような汚しアイテム

さらにリアルな泥や埃を再現するために、専用の「汚し」ペーストも販売されています。これらのペーストは、まるでメイク道具のように、複数の色がセットになっており、ブラシで塗りつけることで泥汚れや埃が自然に表現できます。特にタイヤや履帯にこびりついた土や泥を再現する際に使われることが多く、立体感のある仕上がりが可能です。

プロのジオラマ作家「アラーキー」さんの作品

また、汚し技術を駆使して街の風景をジオラマとしてリアルに再現するプロもいます。ジオラマ作家のアラーキーさんは、雨がどう降り、どのように汚れが流れるかなど細部にまでこだわって作品を制作します。ゴミ置き場やブロック塀、街角の何気ない風景が、彼の手によってミニチュアの世界に生まれ変わります。

終わりのない技術の追求

林さんがこれまでに手掛けたオリジナルのプラモデル作品は400以上にも上りますが、「汚し」の技術は一度マスターして終わりではなく、常に新しい発見や工夫が求められます。リアリティを追求することで、プラモデルはただの玩具から、芸術作品へと昇華されていくのです。

プラモデルの汚し技術は、時間と手間をかけることで、命が吹き込まれたかのようなリアルさを与えるものです。

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