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祖母が教えてくれた。

子供の頃、好きなものがあった。

母が編んでくれた肩から二の腕が膨らんだセーター。くるりと回ると素敵に広がるスカート。リボンの付いた靴。お花の髪飾り。

それを見てほしくって、祖母に

「見て見て見て!!」

と言ったとする。

子供ながら、この服、可愛いでしょう?といったつもりだが祖母は、

「自分を可愛いでしょう?なんて言ってはいけません。自分を褒めて言うことぐらいみっともなくて、厭らしいことはないのだよ」

と、小学校にも入っていない孫に言ったのだ。

母もね、「めぐさい」と一言。めんこい(かわいい)の対義語、みっともない、っていう感じの言葉だ。

うちの家族はとにかく、謙虚が大好きだ。嫌いなのは俺が俺がという人たち。若干うちの夫もその傾向があるが、彼の場合家族に、こんなにも虐げられたってのが多いから、相殺かもしれない。

「気を使うということは、相手に気が付かれないようにやらないと嘘だ。やってやったというのはみっともない。」

ともいわれた。

母や父の葬式のときに、ワカラナイを連発する義兄嫁に気付かれないように、必要であろうものを叔母から聞いて用意しておいた。別に無駄になっても、足りないよりはいいと思った。

義兄嫁には最初に相談したのだけれど、おばたちとは地域が違うので、また、世話人の奥様に聞くのもなんだかと乗り気ではないという。以前こういうやり取りで私が切れてしまったことがあった。繰り返すまい。喧嘩をするぐらいならばこっちで聞いてしまえと思った次第。
けして頭のいいやつではない、私は。

地域が違ってもお葬式に出たことはあると思うから、このあたりはこうだよっていうご意見が聞けるかもしれないし。

案の定、叔母から聞いたことは功を奏してスムーズに葬儀に関する一連の行事を終わらせることができたのだ。

が、しかし。

そこにはちゃんと落とし穴はあった。

義兄たちは多分未だに私が気を使ったことは知らないので、自分たちが滞りなくできたと思っている。
義兄は子供の頃から優秀で、大手の会社の本社で良いところまでいっているので、人々はまさかボンクラだと思っていないのだ。

やっぱり彼はすごいわ、という声が聞こえる。

実働部隊は夫と私なのだけれど、さすがだねと言われるのは前に立ってる彼である。
それが義兄にとっては普通のことでなぜ必要なものがそこにあるか、考えてもいないだろう。

ばあちゃん、言いつけは守ったよ、モヤモヤするけど。

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